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第8話 歌詞をつくる。

 ピザを食べ終え、昼過ぎの光がゆったりと差し込むリビング。俺たちはテーブルを片付け終わったところだった。


「よし!」と彩夏が勢いよく立ち上がり、鞄からノートを取り出した。「ピザのおいしさを忘れないうちに、作ろう!歌詞!」


「え、もう始めるの?」と俺が苦笑すると、美咲も「ちょっと休憩したいなぁ……」と笑う。澪は「……勢いが大事」と小さく呟き、ノートパソコンを準備し始めた。


 澪がノートパソコンを広げて、「歌詞の構成、ちょっと調べてみる」と言い、画面を見ながら説明を始めた。「一般的には、Aメロ・Bメロ・サビを繰り返す形が多い。あと、間奏やブリッジを入れて変化をつけると単調にならない」「つまり、最初の部分でストーリーを始めて、サビで盛り上げるってことか?」と俺が聞くと、澪は頷き、「うん、あと最後のサビでまとめるときに、感謝とか、気持ちの締めを入れると印象が残りやすい」


 それを聞いて全員が「なるほどー!」と納得し、そこから具体的にどう歌詞を作るか話し合いが始まった。


 まずは案出し。彩夏が「やっぱり最初は生地だよね!こねるとこ!」「手のひらの温もり、とか?」「あー、それいい!」と美咲が目を輝かせる。


「午後の光、とか入れたら雰囲気出るんじゃない?」と澪が提案し、俺は「ちょっと詩人すぎないか?」と笑うが、「いや、意外といけるかも」とみんな頷く。


 サビ部分は盛り上がりが欲しい、という話になり、「バジルの香りとか!トマトの赤!」と彩夏が身振り手振りで熱弁。「黄金のピザ!」と美咲が笑いながら叫ぶと、「ちょっとチーズの気持ちにもなってみたら?」と澪が真面目に言い出し、俺は思わず「チーズの気持ちって何!?」とツッコんだ。


 ブリッジ部分は「一口食べたときの感動を入れよう」という流れになり、みんなで「魔法みたい」「温もりが広がる」と言葉を並べた。最後のサビは「ありがとう、って入れたい!」と彩夏が強く主張し、「ピザの歌でありがとうって……?」と俺は首をかしげたが、澪が「いや、いいと思う。仲間と作ったものだから」と淡々と言い、なんだか全員がほっこりする空気になった。


 こうして、最終的にできあがったのが以下の歌詞だった。


――――――――――――


手作りピザの歌


(1番)

静かな午後の光が キッチンに差し込む

粉と水を混ぜる指先 丸い命が生まれる

手のひらから伝わった希望が ふくらみを抱く

仕上げの優しいお昼寝も ちゃんと見届けて


(サビ)

溶けるチーズ 赤いトマト

白いモッツァレラが戯れる

広げた生地に愛を乗せ

これから始まる物語


(2番)

高まる炎の息吹が 生地を誘い込む

時と熱を重ねる空間 焼ける鼓動が響き渡る

暗闇から解き放たれた香りが 部屋を包む

仕上げの緑の約束も しっかり忘れないで


(サビ)

弾むオリーブ 緑のバジル 

黄金に輝くピザが微笑む

広がる香りに夢を乗せ

焼きたて囲む大団円


(ブリッジ)

ひとくち 口に運べば

その温もりが胸を満たす

手作りの魔法は

心に残る味になる


(最後のサビ)

ありがとう この時間に

ありがとう 君と笑えることに

もう一度 作ろう この香りを

手作りピザの午後に包まれて


――――――――――――


 歌詞を書き終えたあと、全員がノートを囲んで読み返す。


「……これ、完璧かもしれない!」と彩夏が嬉しそうに声を上げ、美咲も「すごい、ちゃんとピザの歌になってる!」と感動気味に笑った。


 俺は「いや、思ったよりちゃんとしてるな……」と驚き、澪はノートを覗き込みながら「うん、完成度高い。歌詞として成立してる」と真面目な顔で頷いた。


「これなら、うまく歌にのせられそうだね!」と彩夏がわくわくした声を出し、全員で顔を見合わせて思わず笑い合った。


 ふと、彩夏が思い出したように笑いながら言った。「……あ、でもさ、さっき食べたピザ、オリーブ入ってなかったね!」


「歌詞の完成度とは別問題。仕方ない。」と澪が静かに返し、全員がくすっと笑う。


「じゃあ、今度はオリーブ入りのピザを作ろう!」と美咲が元気よく提案し、みんなが「賛成!」と声を合わせた。楽しみがまた一つ増えた気がした。






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