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第7話 ピザをつくる。

 次の日、再び俺たちは彩夏の家に集まった。部屋の真ん中にはギター、ベース、カホンが並び、澪は自分のノートにメモを取りながら座っている。


「で……曲と歌詞ってどうするんだ?」と俺が口火を切ると、


「もちろんわかってるわよ!」と彩夏がパッと笑顔を見せ、胸を張った。「今日はその話をするために集まったんだから!」


「ドラム入れないなら、激しい曲は難しいかも。」と澪が冷静に言う。


「じゃあ、なんか落ち着いたやつ?ギターで弾き語りできそうな感じとか。」と俺が提案する。


「そうそう!そっちの方がカホンって合うんじゃない?」と彩夏が目を輝かせる。


「えっと、落ち着いた曲ってどんなのがあるんだろ……」と美咲が首をかしげると、澪が即座に「バラード系。テンポは抑えめ、音は控えめ。でも情感を込めるやつ。」と簡潔に返す。


「えっ、情感!?急にハードル高くない!?」と彩夏が笑い、美咲も「わ、私にできるかな……」と不安そうに笑う。


「まあまあ、まずは方向性だろ。」と俺がフォローする。「せっかく自分たちで作るなら、簡単なやつでいいじゃん。コードとかシンプルで、歌いやすいの。」


「それはそうかも……」と澪が少し考え込む。


「でもさ、歌詞はどうする?ラブソング?友情?それとも……冒険とか?」と彩夏がわくわくした様子で尋ねる。


「冒険!?いきなり壮大すぎない?」と俺が笑うと、美咲が「えへへ、でも面白そう!」と小さく笑った。


 すると彩夏が手を打って「そうだ!つくるぶなんだから、何かを作る歌にしようよ!」と提案する。「あれ!あのコロッケ作るやつみたいな!」


「コロッケ作るやつ……って、なんだよそれ」と俺が苦笑するが、


「……でも、それ、いいかも。」と澪が静かに頷き、美咲も「わぁ、楽しそう!」と賛同した。


「例えば、DIYの歌は?」と俺が言うと、

「でも、それだと漠然としてない?」と澪が首をかしげる。

「お菓子作りとかは?」と美咲が提案する。

「甘い系か~!それも楽しそう!」と彩夏が乗り気になるが、

「でも具体的に何を作るかがはっきりしてないと、歌詞にするのは難しい」と澪が冷静に返す。

「うーん……家具作り?机とか?」と俺が言うと、

「ちょっと渋すぎる気がする!」と彩夏が笑う。

「……あ、ピザ!この間、テレビでピザづくりの特集やってたんだけど、手作りピザってどう?」と美咲が突然思いついたように言う。


「それだ!」と全員が声を揃えて笑った。



 話し合いの末、最終的に『手作りピザをつくる歌』を作ろうという流れになった俺たちは、週末にピザ作りを決行することになった。場所は俺たちの家。キッチンが広いから使いやすいらしい。


 買い物は全員参加。「マルゲリータにする?」「でもチーズは多めがいいな」「シーフードピザも捨てがたい!」とスーパーで盛り上がる中、澪が「シーフードはやめたほうがいい。歌詞のイメージがぶれる気がする」と冷静に一言。「た、たしかに……!」とみんな納得し、最終的にシンプルなマルゲリータに決まった。


 買い物カゴにはトマト、バジル、モッツァレラ、ドライイースト、オリーブオイルなど必要な材料がそろい、「彩夏、チーズはそんなにいらないって!」「えー、山盛りが正義でしょ!」と笑い合いながら帰宅。


 いよいよ調理スタート。澪が「まずは生地作り。美咲、薄力粉とイースト混ぜて」「彩夏、ぬるま湯はここまで」と指示を出し、「はーい!」「了解!」と元気に従うふたり。

 しかし彩夏が「おりゃー!」と力任せに生地をこね、「ちょ、力入れすぎ!」と俺が慌てて止め、美咲は「生地が手にくっつくよぉ……」と泣きそうになり、「粉ふって、粉!」と澪が助け船を出す。


 一通りこね終わった生地を寝かせ、発酵が進むのを待つ間、「膨らむかな……」「失敗しないかな……」とわちゃわちゃ心配し合う。そして、ふっくら膨らんだ生地を取り出すと、いよいよ次の工程。

「見て見て、ピザっぽい!」と彩夏が生地を手に乗せ、くるくる回そうとして、「わっ、破けた!」「回さなくていいって!」と俺がツッコむ。「私もやってみたい……」と美咲が挑戦するも、べちゃっと折れ曲がり、「麺棒で伸ばしたほうがいい」と澪が冷静にまとめる。


 ようやく生地を丸く伸ばし終わり、「よし、ソース塗るぞ!」と彩夏がはりきる。「彩夏、塗りすぎ」「細かいこと気にしない!」と笑う彩夏。

「トマトは……つまみ食い禁止だよ!」と美咲が阻止し、「一口だけ!」と手を伸ばす彩夏。澪は具材を整え、「バジルはあとで乗せたほうがいい、先に乗せると焦げるらしい」と冷静に指示を飛ばす。「はいはいー!」と軽妙なやり取り。


 トマトソースを塗った生地に、フレッシュトマトとモッツァレラが美しく並び、いよいよオーブンへ。焼き上がりを待つ間、「うまく焼けるかな……」「焦げたりしないよね?」と心配しつつ、笑顔を見合わせる俺たち。


 ピロリローンとタイマーが鳴り、オーブンを開けると、こんがりと焼けたマルゲリータが姿を現した。「おおーっ!」「めっちゃ美味しそう!」「やったー!」と歓声が上がり、みんなの顔が一気に笑顔に。


「ちょっと、みんな! ピザと一緒に記念撮影しよ!」と美咲が言い、スマホをテーブルに立ててセルフタイマーをセットした。

「OK、タイマー走ったよ! はい、笑って!」と笑顔で駆け戻る美咲。

「うわ、間に合うのかそれ!」と俺が笑う横で、彩夏も澪も楽しそうにポーズを決め、パシャリ。

 画面に映った全員の笑顔に、場がさらに明るくなった。


 テーブルに運び、四人で囲んで食べる。

「あっつ……!でも、うまっ!」「これ、自分たちで作ったと思うと、なおさら美味しいね!」と美咲が笑い、彩夏は「こんなに美味しいなら、なんか……うまい歌詞が書けそうな気がする!」と満面の笑顔。

 俺は「おいおい、ピザでテンション上げすぎだろ」と笑ったが、澪も「……うん、わかる」と珍しく小さく笑って頷き、場が和んだ。


 高校生が四人もいれば、薄生地ピザなんて一瞬で消える。一枚目はあっという間に平らげられ、「生地、まだあるし……もう一枚焼こう!」と彩夏が張り切り、みんなが「賛成!」と笑顔で声を合わせた。二枚目もぺろりとたいらげ、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。


 「じゃあ……次、いよいよ歌詞だな」と俺が言うと、みんなが自然と顔を見合わせ、笑顔を浮かべる。――こうして、いよいよ歌詞づくりが始まる。




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