5人目 アリのモンスターとコロニー
僕たちは、人間と違う。しかし、彼らと僕たちは生活スタイルが似ている。お互いに大きなコロニーを持ち、そこで社会性を持って生活している。大きさだって彼らと相違はない。
互いにさぼる者もいれば優劣もある。同種で別個体のコロニーを見つければ、攻撃することもある。個体同士でお互いに折り合いがつかなければ殺し合うこともある。
そして人間とも日々殺し合っている。それは、僕たちから殺意を向けることもあれば、殺意を向けられた上でそういう選択を取ることもある。
だけど、話し合うことはない。会話を出来るとも思っていない。それは種族として全く違うからであり、言語感覚も伝達方法もまるきり違うから。
僕たちは彼らが音で会話をすることを知っている。そして、彼らは僕たちが匂いで会話することを知っている。
だけど、僕たちは会話することができない。その障害があまりにも大きいから。会話出来たらお互いに分かり合える日が来るのかなと思ったりする。
「あのー。1つお尋ねいたしたいのですが、聞こえますか?魔法で会話をしていますし、初めてのことですからあなた方に伝わっているかはわかりませんが、、、。」
そうこう考えているある日、後ろから白い服を纏った男が話しかけてくる。
「ええ、聞こえますとも!ですが、あなた方の使う魔法?というのを使って僕たちと話せるとは!敵ではないという匂いもしっかりと出してもらってありがとうございます。」
人間と話すのは初めてだ。そんなことより人間というのは僕たちと話すことができたんだ。そんなことに感激していた。そうすると男は奇妙なことを聞いてくる。
「いやはや!話せるようで何よりです。ところであなたたちは魔法というものをお使いになりますかな?先ほどの話だとあり使うこともなさそうですが。」
魔法?意味はなんとなく分かるが初めて知る匂いだ。
「魔法?というものはわかりませんが、何やら体の奥底からみなぎって来る力みたいなのは使うことがあります。これだけ体が大きいのですから、私たちのコロニーを造るのにも力が必要ですからね。」
「そうそう!おそらくそれのことです。いやー、はや。こんな大きな建造物が魔法の力を使って建てられていたとは。勉強になりましたよ。」
「そういう意味でしたら、あなたも僕も使っているこの会話も魔法によって話せてます。見るところ僕もあなたも魔法の使い方に相違ありません。」
「ではあなた方は他のアリさんと話すときも僕と同じように話しているのでしょうか?」
「ええ、そうですが?」
「失礼で、とてもではない話をいたしますが。もしこの魔法というものがこの世界から無くなったらあなたはどうしますか?」
どうしますかもたまったもんじゃない。それがいみするのは僕たちの生活自体ができなくなる。他の個体とは会話するスピードそして単語の数々が失われ、統率なんかできなくなる。この種が終わる。そんなことを意味していた。
「それは!とんでもないことです!種の滅亡といっても過言ありません!そんな恐ろしいこと、、、起こるんですか?」
「いえ、それは何も。僕の口からは何も言えないのです。」
そんな彼の意味ありげな発言に、胸を刺すような感情に見舞われる。まるで、自分の死が明日だと言われているような不安に駆られる。
「僕から伝えられるのは、そんな多くありません。ごめんなさい。もっと沢山のことを聞きたかったら女王様にでも聞くといいかなって思います。」
「ご丁寧にありがとうございます。では、そちらに案内していただけたら嬉しいのですが。」
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