趣味は焼き鳥作りな不死鳥、後に勇者となる少年と出会う
俺は不死鳥だ。
クッソ辺鄙な山奥で一人暮らしをしてる。いや鳥だし一羽暮らし? どっちだ? まあいいや、一人暮らしで。
赤々と燃える炎のような翼がトレードマーク。といっても触っても熱くねえし、ホントに燃えてるわけじゃないんだけどな。いわば“ファッション炎”ってやつだ。
不死なのはマジ。ざっと数万年は生きてる。
ちなみに不死以外の取り柄は何もない。いや、ガチで。別に戦っても強くないし、速く飛べるわけでもないし、俺の生き血を飲もうが、肉を食おうが、そいつに不死が宿るなんてことはない。マジでただ死なないだけの鳥。面接とかで「あなたの特技は何ですか?」って聞かれたら、「死にません!」って答えるしかない。
大昔には“不死鳥伝説”なんて持て囃されたもんだけど、そんな伝説も今は下火だ。俺を求めてやってくる人間なんていやしねえ。
幸い不死鳥ならではの精神性っつーのか、一人でいることに寂しさは感じないから、よく言われる永遠に生きる苦痛みたいなのを味わうことはないんだけどな。我ながらよくできてると思うわ。
こんな俺にもいつからかできた趣味がある。
それは焼き鳥作りだ。
材料はもちろん、自分自身の肉。俺に狩りなんてできるわけねーでしょ。
まず石で作ったナイフで、自分の肉を削ぎ落として、それを木の串に刺す。もちろん痛いよ。まあ、傷はすぐ再生するんだがね。
そんで集めた木の枝や葉っぱに火打石で火をつけて、肉を焼く。
香ばしい匂いがしてきたら食べ頃。
前もって調達してた岩塩をぱっぱとかければ出来上がり。火をきちんと始末したら、さっそく食いますか。
「いただきまぁ~す!」
焼き鳥をぱくり。
「うめぇ~!!!」
美味い。自分の肉ながらジューシィで、弾力もあって、塩も利いてる。
あっという間に平らげてしまった。
「ふぅ~、美味かった……」
枝で作った爪楊枝で嘴を掃除する。これでなかなか綺麗好きなんだ、俺は。
種族の仲間同士で食い合うことを“共食い”っていうけど、自分で自分の肉を食うのはなんて言うんだろうね。自食い? 自己再生能力のある俺でないとなかなかできない趣味だと思う。でもま、誰に迷惑かけてるわけでもないから文句言われる筋合いもない。
てなわけで俺は山で静かに暮らしつつ、たまに焼き鳥を食べるって生活を満喫していた。
***
俺がいつものように焼き鳥を焼いてる時のことだった。
「そろそろいいかな……」
焼き加減を調整してると、声が飛んできた。
「わっ、鳥さんだー!」
いや、俺は『鳥サンダー』というより『鳥ファイヤー』……なんて一瞬思ってしまったが、すぐに聞き間違いだと気づく。
声がした方を向くと、そこには男の子がいた。黒髪でぱっちりとした目をしている。
まだ物心つくかつかないかの年頃だろうに、よくこんな山奥まで来れたな。
「誰だ?」
「ぼく? ぼくはね、ヒースっていうの。鳥さんは?」
「俺は……不死鳥だ」
「ふしちょー! すごーい!」
「絶対何が凄いのか分かってないだろ、お前」
とりあえず俺はこのヒースって小僧から色々と話を聞いた。
なんでも冒険ごっことやらをやっていて、この山に迷い込んで、ここまで来たらしい。
大人の冒険者でもここまで来るのは相当キツイぞ。とんでもねえガキだ。
親が心配するぞと言ってやったら、父親も母親も武器を持って戦う職業らしく、一人で色んなところに行くのを推奨してるという。なんつう家庭環境だ。
こういうのなんていったっけ……ネグ、ネグ、ネグリジェ? いやネグレクトっつうんじゃないのか。
まあ、せっかくだし――
「焼き鳥食うか?」
「くうー!」
元気よく返事されると、俺の料理人魂みたいなもんに火がついてしまう。
こいつの分もきっちり焼き鳥を作ってやった。
「ほれ、食え」
「いただきまーす!」
おおちゃんと“いただきます”ができるのは好感度高いぞ。俺からの好感度が高くても得することなんか何一つないけど。
「どうだ?」
感想を聞いてみる。ちょっとドキドキする。
「おいしい!」
おおっ、この味が分かるとは、なかなかやるじゃないか。
「……でも、ちょっとしょっぱい」
なにい? この俺の絶妙な塩加減が分からんとは所詮は子供よ……。
「でもま、おいしかったよ! どうもありがとう!」
「どういたしまして」
「じゃあぼく、そろそろ帰るね!」
「一人で大丈夫か?」
「うん、平気平気!」
まだ小さいのに、ピョンピョン飛び跳ねて山を下りてしまった。
どういう身体能力だ。
「やれやれ、近頃の子供ってのは恐ろしいねえ……」
俺は焼き鳥を頬張りつつつぶやく。
さて、このヒースはこの後ちょくちょく俺んとこに遊びに来るようになった。
そのたびに俺は焼き鳥を食わせてやるが、「美味しいけどちょっとしょっぱい」という評価はいつも変わらなかった。
ったく、味の分からねえガキだぜ!
***
ヒースはだいぶ大きくなった。人間でいうと十歳前後ってとこかな。
背中に剣を差すようになり、身なりは小さいが剣士の風格が漂ってやがる。
「おーい、不死鳥!」
「おう来たか、焼き鳥食ってけ!」
「うん!」
ヒースは焼き鳥をハグハグと食べる。
「美味しい! やっぱりちょっとしょっぱいけど!」
「ったく相変わらずだな、お前はよ」
俺はヒースの背中の剣に目をやる。
「ところで、お前は剣術やってるのか?」
「まあね。ちょっとした魔物くらいならもう倒せるよ」
「大したもんだ」
ここで俺は少し意地悪を言いたくなった。
「だがよ、いくらお前の腕が凄くても、俺は絶対倒せないぜ」
「なんでさ?」
「だって俺は不死鳥だからな。どんなに斬られても再生しちまう」
「ふーん……」
ヒースは背中の剣を抜いた。
「だったら試してみようかな」
切っ先をこっちに向けて構える。
おいおい、なかなか隙のない構えじゃねえか。いや、隙とかよく分からんけど。
俺も長生きしてるから、強い人間に出会ったことは何度もあるが、そいつらと比べても遜色ない――いや、そいつら以上じゃないか、といえる迫力だった。
ま、まずいぞ。斬られて死ぬことはないが、バッサリいかれたらかなり痛い。バカなこと言わなきゃよかった。
ところが、ヒースは剣を背中に納めてしまった。
「なーんてね」
「え?」
「不死鳥は友達だもん。斬るわけないじゃん」
友達……。
こんなこと言われたのは初めてだ。思わず顔が緩んでしまう。
「フッ、友達か……」
「な、なんだよ。おかしい?」
「いや……嬉しいんだよ。俺は長生きしてるが、友達ってのは初めてだから」
「そうなんだ……」
「つうわけで、大サービス! 焼き鳥もう一本やるよ!」
「やった!」
美味そうに、そしてちょっとしょっぱそうに焼き鳥を食うヒースを見ながら、俺は友達ってのも悪くない響きだな、と思った。
***
それから数年経ち、ヒースもすっかり精悍な顔つきになった。年は十代後半ってところか。
だがある日、やけに険しい顔つきで俺のところにやってきた。
「ん? どうした? 今日は妙に顔つきが凛々しいっつうか、ワイルドっつうか……」
ヒースは重々しい口調で答える。
「“勇者”に任命されたんだ」
「勇者!?」
「そして魔王を討伐することになった」
「マジかよ……」
“勇者”っつうのは、特に優れた戦士に冠せられる称号だってのは知ってる。
様々な特権や優遇を得ることができる代わり、国の危機には文字通り命懸けで立ち向かわなきゃならないとかなんとか……。
超ハイリスクで超ハイリターンな職業といえる。絶対俺には務まらねえ。
“魔王”っつうのは、魔族の長だな。俺も会ったことはねえが、人間界に侵略を繰り返しては、撃退されてるらしい。
こう書くと懲りない悪党って感じだが、その力は絶大で、ガチれば都市一つぐらい簡単に滅ぼせるレベルだとか。
ヒースはそんな化け物に立ち向かう切り込み隊長になっちまった。
「……勝てる見込みあるのか?」
「さあ……分からない。もしかしたら、ここに来れるのも今日が最後かもしれない」
ヒースが人間離れしてるのは知ってるが、その強さが本物の化け物に通用するというと、どうなんだろう。かなり微妙な気がする。
「だけど、やるよ。僕が世界を救ってみせる」
「力になってやりたいが……」
俺は口ごもる。
仮に俺がヒースについていったところで、何の役にも立てないだろう。
死なない体質を生かして盾になろうにもそこまで頑丈じゃねえし、根性もねえし、ヒースのペースを乱して足手まといになる未来しか見えない。
「分かってる。その気持ちだけで嬉しい」
ヒースもそれをよく分かってるから、こう言ってくれた。
「すまねえ……」
俺がこぼすと、ヒースは首を横に振った。
そして、俺はいつものように焼き鳥を作る。
「これ食ってけ」
「ありがとう」
ヒースは焼き鳥を受け取ると、歯で串から取り、ゆっくりと咀嚼する。
心なしかいつもより長めに味わってるようにも見える。
「うん、美味い。ちょっとしょっぱいけど」
「いつもいつも一言余計なんだよ。次こそ文句なしに美味いの食わせてやるから、死ぬんじゃねーぞ」
「分かってる」
ヒースは串を持ったまま、山を下りようとする。
「あれ、串は?」
「貰っていくよ。お守り代わりにね」
「言っとくが、何の加護もねーからな」
「分かってるよ。気持ちの問題だよ、気持ちの」
遠ざかるヒースの背中を見て、俺は心の中でつぶやいた。
死ぬんじゃねーぞ……。
***
それから一年、いや二年ぐらい経ったかな。
ヒースはやってこなかった。
世間がどうなったのか、この山奥じゃ分からない。
いっそどこかに飛んで情報を仕入れてみようとも思ったが、『勇者ヒース死亡』というニュースを聞くのが怖くてそれもできなかった。
結局俺は山奥でひっそり暮らし、自分の肉で焼き鳥焼いて食うしか能がない鳥なのだ。
あいつ死んじまったのかなぁ……半ば諦めかけた頃だった。
「久しぶり」
ヒースが来た。
「ヒースか!?」
「うん、そうだよ」
体つきや顔つきが見るからに逞しくなってる。
よほどの経験を積んだんだろうな。
「ここに来たってことは……魔王は倒せたのか?」
「まあね。メチャクチャ強かったけど……」
「よくやったな! よっしゃ、焼き鳥食ってけ!」
「そうさせてもらうよ」
俺は調理をしながら、ヒースに冒険のことを色々聞いた。
あちこちを旅して、色んな人と出会って、迷宮をさまよい、強敵を倒し、ついには魔王に挑み――
そんなヒースに俺はこんな感想しか出せない。
「大したもんだぜ、お前はよ」
すると、ヒースは思い出したように言った。
「あ、そうそう。不死鳥の串も役に立ったよ」
「え、あれが?」
そういやお守り代わりに持って行ってたな。あんなもんが何の役に立ったんだ?
「魔王との戦いで倒れそうになった時、あの串を見つめたんだ。そしたら、また焼き鳥食べに行かなきゃって気持ちが湧いてきて……」
「おおっ、マジかよ」
「ついでにあの串を魔王の目玉に突き刺してやったよ。予想外だったのか、かなり痛がってた」
「ハハ、なかなかえげつねえことしやがる」
俺の串が役に立ったことは確からしい。とりあえず嬉しいことには間違いない。
「そんな勇者様に俺からのお祝いだ。食えや」
俺はヒースに焼き鳥を差し出した。
「うん、美味い。ちょっとしょっぱいけど」
「かーっ! 勇者になっても味覚は進歩ねえな!」
「だけどやっぱりこの味でないと、とも思うよ」
「へっ、なかなか言うようになったじゃねえか」
焼き鳥を食べ終わると、ヒースは静かにこう言った。
「これから僕は忙しくなりそうだ。もしかしたら、あまりここには来れなくなるかもしれない」
「だろうな。なにしろ世界を救った勇者になったんだから」
「だけど、僕たちの友情は永遠だよ。絶対に!」
「オーバーな奴だな。だけど、俺もお前との友情は大切にとっておくぜ」
「ありがとう。じゃあ、またね」
「おう!」
ヒースは山を下りる。
その後、ヒースが俺のところにやってくる頻度は大幅に減った。
ただでさえ忙しくなり、しかもあいつの一挙手一投足はいちいち注目を浴びるだろうし、うかつに出歩くことはできないんだろう。俺もその辺は理解してる。
来た時は丁寧に近況報告してくれるから、あいつがどうなったかはちゃんと分かるしな。
だけど、まあ、寂しくないと言ったら嘘になっちまうか……。
***
ヒースがやってきた。
あいつもすっかり中年に、おっさんになった。
とはいえ体はたるんでねえし、そもそも俺のとこまで来れる体力があるのはさすがだ。
「久しぶりだな、ヒース!」
「うん、何年も来れてなくてごめん」
「気にすんな。俺は寂しくなんかねえからよ」
俺は小さく嘘をついた。
勇者として名声を得たヒースはある貴族の女性と結婚し、領主として立派にやっている。
「そういえば、子供も生まれたんだよ」
「え、マジかぁ? お前の子供だから、やっぱり強いのか?」
「いや、剣も触れさせてみたけど、そういうのより勉学が向いてる子っぽいね」
「まあ、そういうこともあるさ」
勇者の子が勇者のようになるとは限らない。
だが、その子供なりの道を進んでくれればヒースにとってはそれでいいのだろう。ふん、いい親父じゃねえか。
「ホントは家族を連れてここに来たい気持ちもあるんだけどね」
「その気持ちだけで嬉しいって。それに俺、案外人見知りだし」
「意外とそういうところあるよな、不死鳥って」
軽く雑談しつつ、俺は焼き鳥を振る舞う。
「どうだ?」
「うん、美味いね。少ししょっぱいけど」
「おっさんになってもそれかよ!? そろそろ大人の舌になってくれることを期待してたんだがな」
「まだまだ僕も若いってことかな」
「へっ、んなこと言ってるうちにあっという間に爺さんになっちまうぜ」
俺は軽口のつもりだったが、人間が爺さんになってしまうのはあっという間だ。
本当に、あっという間だった。
***
ヒースが顔を見せてくれた。
ついこの間まで中年だったはずのヒースは、もう老人といえる風体になっていた。
髪は白くなり、顔には皺があり、しかし背筋はしゃんとしており、なによりここまで来る体力を残している。多分今もそこらの若者と殴り合っても勝てるんじゃねえか。
「お前もすっかりジジイだなぁ」
「まあな」
ヒースも笑う。
だが、その表情に暗いものが差し込む。
「ここに来れるのも今日が最後かもしれん」
俺も静かに答える。
「そうか……」
無理もない。
おそらくヒースは七十を越えている。
無茶した若い頃のツケも体のあちこちに出てきてるだろうし、むしろこの年で俺に会いに来れるだけでもすげえってもんだ。
「ああ、そうそう。孫も生まれたよ」
「へぇ~、めでたいな。やっぱ可愛いか?」
「ああ、可愛い。目に入れても痛くないってやつだな」
「ったく、羨ましいねえ」
俺は焼き鳥を焼く準備に取り掛かる。
「焼き鳥、食うか?」
「ああ、いただくよ」
いつも通りの工程で焼き鳥を焼き、塩をかけて、ヒースに差し出す。
「ほれ、食え」
「いただきます」
年は食ったが、焼き鳥もまだまだ食えるようだ。
ヒースは自分の歯できっちり肉を味わう。
「お味は?」
「うん……美味い。少々しょっぱいが」
「ったくよぉ、やっぱそれかよぉ!」
結局こいつの「美味いけど少ししょっぱい」って評価を覆すことはできなかったな。
まあいいや、それもヒースらしさってやつさ。
「もしまた……来られたら来るよ」
「ああ、その時こそ、“しょっぱい”とは言わせねえぞ!」
「楽しみにしてる」
山を下りるヒースの足取りはしっかりしており、あと二回か三回は来てくれるだろうな。
俺はそう思っていた。そう信じていた。
***
だが、ヒースはなかなか姿を現さなかった。
俺の中でも「もしかして……」という不安がよぎる。
いやいや、分かんねえだろ。人間にゃ、ものすごく長生きする奴だっているし、あいつは人間離れしてるからきっと……。
そんなある日のことだった。
なんとヒースが現れたのだ。
「おおっ……!」
俺は思わず叫んだ。
しかも、なぜかかなり若返っている。
あいつがそう、ちょうど勇者に任命された年頃ぐらいにまで。なんか若返りの薬でも飲んだのか?
俺はちょうど焼き鳥を焼いてるとこだったので、さっそく食べさせる。
「ま、とりあえず食ってけ! な!」
ヒースは黙って焼き鳥を食べる。
「味は? どうだ?」
「とても美味しいです! ちょうどいい塩加減で……」
「へ……」
俺は気づいちまった。
いや、最初から心のどこかでは分かってたのかも。若返ってるのはどう考えてもおかしかったし。
もう少し夢に浸っていたかったが、一度夢から覚めたら、もう夢には戻れない。
こいつはヒースじゃない、と。
「お前はもしかして……ヒースの……」
「はい、孫です」
「そうだったのか……あいつは?」
ヒースの孫は首を横に振る。
「祖父は昨年、老衰で……」
「そっか……」
大往生だったのだろう。
きっと家族に見守られ、苦しまずに逝ったと信じたい。
「祖父は最後に僕にあなたのことを教えてくれたんです。できればもう一度行きたかったが、もう無理だと。自分が亡くなったら、そのことを伝えて欲しいと頼まれました。僕は祖父に似たのか、剣術や運動は得意だったので、引き受けました。それで今日ようやく……」
「人使いの荒い爺さんを持つと、孫も大変だなぁ」
「尊敬するに値する祖父でしたから。それにあなたにはぜひお会いしたかった」
「ほう?」
「祖父はあなたのことを一番の親友と言ってましたから」
「フッ、ありがとうよ」
ヒースの孫は近くにあった石に座る。
「ぜひ、祖父のことを教えて下さい」
「ああ、いいとも。嫌になるほど聞かせてやるぜ」
俺は宣言通り、あいつのことを沢山教えてやった。
やがて、孫は満足そうにして帰っていった。
「また来ていいですか?」という問いに、俺は「もちろんだぜ」と返しておいた。
そう簡単に来れる場所じゃないが、社交辞令だとしても俺は嬉しい。
残された俺は焼き鳥を焼く。
ヒースを思い出すと、目にじんわりと熱いものがこみ上げる。
お疲れ、ヒース。俺の親友。俺は死ぬことはねえけど、またどこかで会おうぜ。
さて、焼き鳥ができた。いつものように食うとしよう。
ただし――
「今日は……塩はいらねえかな」
おわり
お読み下さいましてありがとうございました。