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サクラダ家 ~いつまでも制作が完了しないので永遠に終わらない作品群~  作者: K_Take
いつまでも制作着手できそうになく、終わりを迎える以前に始まりそうになかったので、まずは制作することにした
2/5

初対面の話

「今日から、ここで働く事となった竹下です。桜田さんとは、どなたでしょうか?」


 竹下は、今日が初出勤日である。今まで、何度か転職し、しかも、業務現場の変更は、もっと多いので、かなりの回数「初出勤」が有ったはずだが、さすがに、担当者を現場で探すと言うレベルの初出勤は、初めてである。

 とりあえず、面談の際に担当した男性社員に、質問した。


 「桜田は、ワイシャツ、ネクタイの・・・」

 (それだと、特定できないのでは?)

 「女性の方だよ」

 「あっ。あの方ですね」

 その方は、長身で、ショートカットヘアだったので、一見男性に見えたが、何となく、オーラで、女性にも思えた。

  

 「あの、桜田さんですか?」

 「そうだよ」

 「女性の方と聞いたのですが」

 「私、女性ですが!!!!」

 (ギャフン!!!!いきなり地雷踏み抜いた!!!!)

  

 「まだ、パソコンが申請中だから、とりあえず、今日はこの仮のヤツで」

 「はい、かしこまりました」

 「仮のアカウントと、メールアドレスはこれで、ドキュメント類は、このディレクトリー・・・」

 「はい、ありがとうございます」

 「今日は、このあと、セキュリティー講習と試験受けて。合格しないと、パソコンの申請が通らないから」

 「はい、かしこまりました」

 桜田さんは、次々と説明して、仮アカウントなどが印刷された紙を渡した。


 「あと、私の連絡先は、これ。竹下さんの連絡先を、教えて」

 いきなり、ナンパされたような感覚を覚えるかもしれないが、電車遅延や体調不良時の連絡用である。

 セキュリティーの事情で、基本的に、許可されたアドレスか、社内のパソコンでしか、現場へメールを送れない。

 しかし、電車遅延や体調不良時は、何らかの方法で、連絡を取る必要がある。

 だからこそ、この私用メールアドレスのやり取りが必要となるのである。

  

 竹下は、自分のガラホを取り出し、桜田さんは、

 「今時珍しいね」

 と言いつつ、自分のガラホを取り出した。そして、赤外線通信で一発である。

  

 「私のメールアドレスは、それ」

 メールアドレスは、基本的に自分よりも、相手のほうが打ち込む機会が多い。だから、竹下は、イニシャルに苗字を短縮したメールアドレスとしていた。そして、メールアドレス交換のときの一つの楽しみとして、相手のメールアドレスの由来の想像である。


 そもそも、本名そのままと言うのは意外に少なく、本名のイニシャルだと被る事が多いのか、誕生日と思しき数字の羅列がついていたり、本名とはまるで関係が無い文字の羅列だったりする。むしろ、その場合のほうが、その人となりの内面とか本性を知る事ができて、時にギャップを感じて面白いのである。しかも、「~LOVE」とかついていたりすると、それこそ、その方の好みを知る事ができて、楽しいのである。さて、桜田さんの私用メールアドレスは、と言うと、

 「n-sakura@~」という、これまた、イニシャルに苗字を短縮したメールアドレスとしていた。

 何の面白みも何もないが、感覚として、何か通じるものを感じた。

  

 「それから、連絡網はこれ。何か事故とかあったら、基本的に私に連絡して。私が出なかったら、この順に連絡して」

 「はい、かしこまりました」

 桜田さんは、連絡網が印刷された紙を渡した。出来れば使う機会が無いことを祈りたい。

  

 「ここまで、説明したけれど、何か解らない事とかある?」

 竹下は、どうしても気になったことを質問せざる得なかった。

  

 「あの、なんで、男物のワイシャツに、ネクタイなのですか?」

  

 口をついたように質問して、しまったと思った。いくらなんでも業務と関係なく、質問を求めた趣旨から逸脱している。

  

 「私のような体格だと着る物が限られるし、出来るだけ安く済ませたいから」

  

 実に合理的な回答だった。


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