僕が持っているMPは0だった
連載始めました。
本日中(2021年2月11日)に9話まで更新します。
よろしくお願いします。
この世における森羅万象は、マジックポイントを所有している。
例えば生家の貴族家で飼っている猫のナツメのマジックポイントは2025で。
猫としては異常なMPを有している。
他にも、そこら辺に落ちている路傍の石も大体1から3MPは有しているのが当たり前だった。
この世界ではどんなちっぽけな存在でさえも、神の恩寵を受けていて。
意思を持てば、どんなものにでも、魔法が使える。
地球からこの世――異世界グロウエッグに転生した僕は、その世界の法則に類い稀な知的好奇心を持って生まれた。あいにく僕をグロウエッグに遣わした神などとの面識はなくて――ッ!
「ルウ、薄汚いから視界に入らないでくれないか」
生来から兄姉達による迫害を受けて来たやり場のない憎しみを、誰にもぶつけることが出来なかった。
「兄様、ここは僕の部屋で、そんな理不尽な理由で蹴られる覚えはありません」
「煩いんだよ家の面汚し。お前が生きている、それだけで俺は理不尽な理由で笑いものにされるんだぞ!」
兄姉の中でも特に酷いのが三男のネッツ。
ネッツは何かといちゃもんを付けては、毎日のように僕を暴行していた。
「何だその目は、この家に居たくないのなら今すぐにでも去れよ!」
僕はこの時まだ6歳で、手加減しているとは言えネッツの虐待には内心戦慄している。
追い打ちをかけるように蹴り続ける兄から逃げようと。
「――ッ!!」
部屋を飛び出したんだけど、扉を開けたら家に仕える従者たちがここぞとばかりに僕を冷笑していた。
「あら、ルウ様がまた虐められてるわよ」
「仕方ないわよ、ルウ様はこの家に相応しくないもの」
「見て見ない振りした方が我が身のため」
なぜ僕はこんな酷な思いをしなければいけないのか。
その理由はただ一つ。
この世界の森羅万象は、MPを所有しているもので。
MPがこの世の理であり、未来を決定する絶対的な指標だ。
ここまで説明すれば大体わかるだろ?
僕は地球を21歳という若さで去り、MPや魔法が存在する異世界グロウエッグの伯爵家エヴィンの系譜に名を連ねて早6年。
僕が持っているMPは0だった。