脳内システムエラー
期末テスト1日前。
午後11時。
俺は最後の追い込みをかけていた。
今日も『打倒西澤!』のハチマキを巻いて。
西澤は今ごろ必死に勉強しているはずだ。
俺は負けるわけにはいかない。西澤のことだ、負けたら何を言ってくるかわからない。
西澤の甘ったるい匂い、女らしい猫なで声、まん丸お目目、ぷるんとした唇、ぽよんとしたあの感触、その他全ての西澤の情報を脳内からシャットダウンし、勉強を始めることにした。
教科書を開きノートにペンを走らせる。
さて、今から歴史の人物の復習をするぞ。
問、武家に生まれ鳥羽上皇に北面武士として仕えるが、のち出家。新古今和歌集に94首おさめられ、歌集『山家集』などで有名な平安末・鎌倉初期の歌人は?
もちろん答えは簡単だ。
西澤だ。
そう、西澤、西……西澤!?
な、なんで俺はノートに西澤って答えを書いているんだ?
西澤の呪いか?
俺は確かに西行と書いたはずなのに……!
ああ、もうっ!
なんなんだよこれは!
ついイライラしてしまいペンを放り投げベッドに飛び込む。
この前、具体的に言うと2日前のあのハグ事件くらいからこんな感じだ。
集中がすぐに途切れてしまう。どうやらあの攻撃は俺の予想を遥かに超えていたようだ。
ふと目を閉じると西澤の明るく可愛らしい笑顔が浮かんでくる。
西澤の甘ったるい匂い、女らしい猫なで声、まん丸お目目、ぷるんとした唇、ぽよんとしたあの感触、その他全ての情報が俺の脳内に深く刻み込まれてシャットダウンできないままでいた。
俺はどうしてしまったんだ?
脳内システムエラーなのか?
ダメだダメだ!
もっと気合いを入れろ!
気合いだ!気合いだ!気合いだ!気合いだ!
集中!集中!集中!集中!
俺はできる!俺はできる!
俺は勝つ俺は勝つ俺は勝つ!
◆
「へっくしゅん!」
肌寒く感じたため窓を閉めた。
ふと時計を見ると深夜三時になっていた。
つい気合いを入れて集中し過ぎたせいか、いつもより長い勉強時間になっていた。
まあ睡眠時間が短くなってしまったが問題はないだろう。
俺は勉強をやめ、明日の準備をした。
そしてベッドに潜り込み眠りについた。