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打倒西澤!

 俺の猛烈な勉強生活が始まった。

 全ては打倒西澤のため。そのための猛烈な勉強生活だ。


 学校での授業は今まで以上に集中して先生の話をよく聞き、理解しながらノートに自分なりにわかりやすく書き残していった。

 授業後はすぐにノートと教科書を見て復習、さらに理解度を深めて自分の頭の中に落とし込んでいった。


 家に帰っても復習は怠らず、学んだ内容が完全に脳内で再生できるまでに、何度も何度も口に出したりノートに書いたりして覚えていった。


 また、家での勉強にかける時間もこれまでの深夜一時から深夜二時までと長くすることにした。


 まあ俺の今の実力と西澤の今の実力からいえば負けることはほぼないだろうが、万が一ということもある。油断大敵。勝って兜の緒を締めよだ。


 俺は家で勉強するときは、頭に『打倒西澤!』と書いたハチマキを巻いた。気分は戦国武将。イメージは本多忠勝といったところか。絶対に負ける気がしないな。





 ◆




 期末テスト3週間前。

 午後10時。



 いったん休憩をするために、リビングでソファに座り牛乳を飲んでいたところ、母さんが寝巻き姿でリビングにやってきた。



「マサくん、今日も勉強頑張ってるのね」

「次の期末テストでも学年総合順位1位を取るためにね。そのためには毎日頑張らないと」

「そう……。でも頑張りすぎて身体を壊しちゃダメよ」

「わかってる」

「マサくん、ところでだけど……。最近学校で友達できたの?」


 え?

 まさか母さんからこんなことを聞かれるとは思わなかった。


 なにせ俺は家族にも孤高のボッチ道を歩んでいることを公言している、いわば家族公認の孤高のボッチだ。


 家族はそんな俺のことを初めこそは心配してくれていたが、今はあまり気にすることもなく、特にその話題には触れてもこなかったのだが……。


「なぜ急に俺に友達ができたと?」

「だってマサくん、頭に『打倒西澤!』って書いたハチマキしてるんだもの。だからその西澤さんって人と学校で何かあったのかなって思って」


 なるほど、そういうことだったか。

 ハチマキが原因だったか。


「西澤は俺と同じクラスの奴なんだが、勉強のことで俺に対抗意識を持ってるんだ。それでこの前、『キミに負けないように次の期末テストはあたし全力でガンバるから。それでもしあたしがキミに順位で勝ったら、キミはあたしにキョーミを持つこと。約束だよ、いいね?』という宣戦布告をされたから、今日も西澤に負けないように頑張ってるってだけ。だから友達なんかじゃない。あと西澤に興味を持つわけにもいかないからな。俺にとっての友達で、かつ興味を持つ対象なのは教科書とノートとペン、それだけで充分だ」

「ふーん。へぇー。そうなんだそうなんだ。へぇー」


 俺の話を聞いた母さんは、なぜかニヤニヤしだした。


 俺の話に何か変な部分あったか?

 さっき母さんに言った発言を思い返すも、特に変な部分があったとは思われない。ちゃんと西澤が言った言葉も一言一句間違えずに伝えたつもりだ。


「じゃあ俺、また勉強してくるから」

「うん、頑張ってね。それと西澤さん、超超超頑張ってね」

「なんで母さんはこの場にいない西澤の応援をしてんだよ」

「ふふふっ、何ででしょうねぇ」


 それから母さんは終始ニヤニヤしながら寝室に行った。


 久しぶりにあんなにニヤニヤした母さんを見た。俺としては気になるところではある。

 だが気にしている分だけ勉強時間のほうが減ってしまう。もう気にしないでおこう。



 さて、もうひと頑張りしますか!

 俺はコップにもう一度牛乳を注いで一気飲みし、自室へと向かった。

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