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告白のような宣戦布告

 西澤からなぜか呼ばれた俺は、呼ばれるがままに廊下に出たところ、そのまま制服の袖を引っ張られて学校の屋上まで連れてかれた。


 屋上は誰もいない静かな場所だった。

 雲がゆっくりと流れていて、風が爽やかだった。


「へー、屋上って入れたんだな」

「うん、あたしがカギを壊して入れるよーにしたんだもん」

「器物損壊じゃねーか」

「いーのいーの!こんくらい!」


 いいんだろうか……。

 でもまあ、俺には西澤のことなんて知ったこっちゃないし、どうでもいいか。


「おい、それよりもだ。あんまり大声で名前を呼ばないでくれ。俺は学校で静かにゆったりと勉強ができるボッチ生活を送りたいたんだ」

「あーごめんごめんっ」


 舌を出して謝る西澤。あざとい。このあざとさは妹の真鈴を凌駕するあざとさだ。

 ああ、真鈴はこんなビッチみたいにはならないでくれよ……。


「で?こんな場所に連れてきて一体なんの用だ?」

「あたしお弁当作ってきたんだ〜。だからさ〜、ここで一緒にごはん食べよっ」


 なんだよ、昼ごはんのお誘いかよ……。


「西澤はボッチの俺なんかと食べて平気なのかよ」

「うん、今日はキミと食べると決めてたからいーの。友達たちにもそー言ってるし」


 はあ。西澤のイケてるビッチ友達たちも、俺と西澤が昼ごはん食べることを許可済なんですか。

 そういうもんなんですかね。

 なんなんですかねこの状況は、まったく。


「てか俺、昼ごはん食べないで授業の復習するつもりだったんだけど」

「授業の復習なんて今じゃなくてもいつでもできるじゃ〜ん!でもお昼ごはんはお昼の今しか食べられないんだよ!それにお昼ごはん食べないと午後から授業に集中できなくなるかもしれないよ?さっ、とゆーことで食べよ食べよ!」


 西澤はそう言うと屋上の床に女の子らしくスカートの中が見えないように座り、そして弁当箱を置いた。

 半ば強引に昼ごはんの弁当を食べさせられることになった俺は、しぶしぶ西澤お手製の弁当箱を開けた。


 弁当箱は二段構成になっていた。

 片方はふりかけがかかったカラフルなごはん。

 もう片方はたこさんウィンナー、玉子焼き、プチトマト、あと冷凍食品などのおかずだった。


 とりあえずひと口、たこさんウィンナーを食べてみた。


「どう?美味しい?」

「ああ、不味くはない」

「やった!」


 弾ける笑顔で嬉しがる西澤。

 そんなに俺に不味くはないと言われたことが嬉しかったのか?


「そういや西澤ってただの派手なビッチかと思ってたけど、意外とクラスの男子に人気あったんだな」

「まあね〜。どう?そんな人気あるあたしとキミは今、一緒に二人っきりでお昼ごはんを食べてるんだよ。嬉しくない?」


 西澤はそう言うとニコッと笑ってきた。


「まあ、嬉しいかどうかと言われたら、別に普通って感じかな。俺、他人には特に興味ないし」

「えっ何よ別に普通ってー!そこは嬉しいって言うトコでしょー!」


 次はぷんすかと怒り顔になった。

 西澤はまるで顔面七変化だな。


「なあ、そういや前から疑問だったんだが、なんで西澤はボッチの俺にこんなに関わってくるんだ?しかも今日は弁当まで作ってさ。一体何がしたいんだ?勉強を教わる以外の目的でもあんのか?」


 俺は前から気になってたことを一気に聞いてみた。

 すると西澤は神妙な面持ちになった。


「その答えは今言わないといけない?」

「ああ、気になるからな。今聞かせてくれ」


 西澤は一呼吸置いて、語り始めた。


「じゃあぶっちゃけて言うよ。あたしね、一番が好きなの。一番にキョーミがあるの。それでできるならあたしも何かで一番になりたいなって思ってるの。で、この前の中間テストで学年総合順位1位だったキミにキョーミが湧いちゃったから、このごろ関わってたってワケ。キミと関わったら勉強も教えてもらえるしね」

「はーん、興味が湧いたねえ」


 ふりかけごはんを口に含みながら相槌を打つ。


「そっ、キョーミが湧いたの。つまり今のあたしは……キミのことが気になって気になってしょーがないの。できるならあたしはキミの一番の存在になりたいの」

「はあ……」

「はあ……って、こんなあたしに迫られてるっていうのに、キミはあたしにキョーミ湧かないの?あたしはこんなにキミにキョーミ湧いてるんだよ?キミのことが気になってしょーがないんだよ?」


 俺、西澤に今告白されてるのかな。

 まあ誰がどう聞いても、この西澤の言葉は好きって言ってないだけの告白だよな。

 場所も誰もいない屋上で二人っきりだし。そういうシチュエーションだよな。

 だがなあ……。


「すまんが俺は勉強にしか興味が湧かない孤高のボッチなんだ。それとついでに言っとくと、少なくとも恋愛事なんかは高校生のうちはまだ早いと思ってる。だから西澤には興味がないし、これから興味が湧くことも一切ない」


 キッパリと言ってやった。

 これで西澤も諦めてくれるだろう。

 そして早く弁当を処理してこの場を離れようと、一気に口の中にごはんをかき込んだその時だった。


「そう、わかった。あー!なんか俄然ヤル気出てきたー!あたし、ぜーったいにキミの一番キョーミが湧く存在になってみせるから!ぜーったいに!」

「ご、ごふっ!」


 思わずごはんを喉に詰まらせてしまった。


 なぜだ?

 キッパリと断ってやったかと思ったのに逆効果だったのか……?


 西澤の目はなんかメラメラと燃えだしてしまっている。


「あっそう。まあせいぜい頑張れよ」

「うん、ガンバる!あ、例えばだけど〜、あたしが順位1位になれば〜、キミもあたしにキョーミが湧いちゃうよねっ?ねっ?」

「なぬっ?」


 あ、いかん。

 順位1位というワードに思わず反応してしまった。「なぬっ?」とか言ってしまった。


「ほらキョーミ湧いた。じゃああたし、キミに負けないように次の期末テストはガチでガンバるから。それでもしあたしがキミに順位で勝ったら、キミはあたしにキョーミを持つこと。約束だよ、いいね?」

「いいかどうかは知らんが、俺は負けんぞ。絶対に1位になってみせる」

「あたしも負けないよ。絶対に一番になってみせる。テストも、キミのキョーミの対象からも」

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