ビッチから呼び出し
「坂本、お前昨日、西澤と一緒に帰ってたよな?」
俺が昼ごはんを食べずに午前の授業の復習をしていたところ、同じクラスの……富田だったか。富田が俺に話しかけてきた。
「今は勉強中だ。話しかけないでくれないか」
「そんなつれないこと言うなよー」
俺が冷たくあしらっても富田は食い下がってきた。そういや西澤もこんな感じで無理やり俺との関係を築いてきたような気がするな。
しょうがない。こういうタイプは何言っても無駄だ。適当に相手してやるか。
「ああ、一緒に帰ったけどそれが何か?」
「やっぱそうだったかー!あー羨ましいなー!」
富田は声を上げて羨ましがった。
羨ましい?
まあ確かに西澤は派手なうえに可愛さもあるとは思う。
クラスの誰かが言っていた学校内カーストとやらでも上位に入る部類だろう。インドのカースト制度で例えるとバラモンってところか。
あとなんか知らんが国語限定では成績もいい。
だがビッチだぞ?
さらに言えば至高のビッチだぞ?
至高のビッチと一緒に帰ることが羨ましいことなのか?
「なあ、どうやって西澤と帰るようになったんだよ?教えてくれよ」
こいつグイグイ聞いてくるな。
「知らん。昨日はなんか向こうから話しかけてきて、たまたま一緒に帰る流れになっただけだ」
「なんだよそれ」
「参考にならなくて悪かったな。さあ帰ってくれ」
俺が引き続き冷たくあしらうと、富田はとぼとぼと肩を落として残念そうに自席へ戻っていった。
さて、復習復習……。
「お〜い!坂本く〜ん!ちょっとこっち来て〜!」
俺が再び勉強しようと、教科書とノートを開いてペンを持ったその時、廊下から西澤の声が聞こえた。しかも俺を呼ぶ声。
これまでは図書室でしか関わりがなかったのに、昨日の下校に続いて今の呼び出し。
西澤は一体何を考えているんだ?
「おい、坂本が呼ばれたぞ」
「なんだ?坂本って至高のビッチと仲良かったのか?」
「クラスの男子とすらほとんど話さない奴なのに西澤と繋がりがあるのか?」
「坂本って頭は抜群に良いいからなあ。西澤も見た目は派手だが案外頭いいし、頭良い同士でなんか話でもするんじゃねーのか?」
そしてクラス内の主に男子が急にざわざわしだした。俺と西澤を交互に見ている者もいる。
てか、西澤ってこんなにも男子に人気あるやつだったのか?
ビッチなのに。
ビッチは意外と人気なのか?
よくわからん。
俺は勉強を続けたかったが、西澤のことだ。俺が無視しても無理やりにでも教室から連れ出すだろう。
そうして俺は頭を悩ませながらしょうがなく西澤の元へと向かった。