表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/20

おやすみのメッセージ

 午後11時。

 期末テストが終わり気持ち的には楽になったが、俺はテスト期間など関係なく今日も夜中まで勉強に勤しんでいた。

 まあさすがに深夜2時とかまで勉強をやる予定はないけど。


 いやしかし、まさか国語で西澤に負けるとは思ってもいなかった。予想外だった。


 俺の中では今回の期末テストでさっさと西澤との関係を切りたかったのに、切れるどころか連絡先が繋がってしまった。


 俺はいったん勉強の手を止め、スマホを手に取った。そして繋がってしまった連絡先を眺める。


 西澤彩香の四文字が並んでいる。

 家族以外の唯一の存在。西澤彩香。


 西澤は今何をしているんだろうか。

 深夜のテレビが面白かったとかどうとか前に言ってたような気がするし、今はテレビでも見てるんだろうか。


 いや、もしかしたら大人の男の人との怪しいバイト中かもしれない。なぜなら西澤は至高のビッチ。至高のビッチは大人の男を手玉に取るくらい容易(たやす)くできるはずだ。


 って、俺はなぜ西澤のことばかり意識してしまうんだ?


 まさかこれが友達になったということで、西澤に興味を持ったということなのか?


 最近西澤のことを考えると胸がキュッとなった感覚になる。何なのだろうか。俺は心臓の病気にでもなってしまったんだろうか。わからん。


 なにせこれまでの人生で一度も友達がいなかったから、これがどういう感情なのかわからん。



 あ、いや、そういえば期末テスト前に西澤に宣戦布告されてから俺は、『打倒西澤!』のハチマキを巻いて、西澤に負けないようにと勉強に励んでいたが、今思うと既にその時点で西澤のことを意識していたのかもしれない。無意識のうちに。


 俺は知らず知らずのうちに西澤の手のひらの上で転がされていたのかもしれない。


 もしかして西澤はビッチのフリをした策士なのか?

 これが至高のビッチと言われる所以なのか?


 するとその時だった。

 スマホからピコンという電子音。

 そして西澤から突如メッセージが届いてきた。


「うわっ!」


 あまりにも突然のことだったので驚いて声まで出てしまった。

 西澤のことを考えていたら西澤本人から急にメッセージがくるなんて……。


 俺はメッセージを開いて見てみた。


『やっほ〜!いま何してる〜?もう寝ちゃったかな〜?ちなみにあたしはね〜、いま本読んでるよ〜ん』



 すごくご機嫌な内容のメッセージだった。俺までご機嫌になってしまいそうなくらいだ。


 というか、西澤って読書するんだな。あの国語の成績は読書するからこその結果だったのかもしれないな。



 とりあえず俺もメッセージ返しとくか。



『何の本を読んでんだ?ちなみに俺は今勉強してた』



 ポチッと返信した。

 と思ったその途端、すぐにまた返信がきた。早いな。



『さっすが勉強だけが取り柄のボッチ!テスト終わったのに今日も勉強は怠らないんだね〜!エラい!あ、本はね〜、黒猫探偵の殺人って本を読んでるよ。赤山龍って人の作品だよ〜』



 メッセージとともに本の写真まで送られてきた。

 本の表紙には黒猫の横顔が大きく写っていて、表紙の上のほうにでかでかと『黒猫探偵の殺人』と赤い文字で書かれていた。

 割と本格的なミステリー小説のようだ。



『なかなか面白そうな本だな』

『いま半分過ぎたあたりだけど、謎が多くて続きがすっごく気になるの〜!面白いからつい夜更かししちゃう!お肌の敵!あ、読み終わったら貸してあげよっか?』

『俺には勉強があるから遠慮しとく』

『えー、そんなこと言わずに素直に借りなよー。ってことで、読み終わったら貸すねー!』



 本を強制的に借りることになってしまった。

 しかし、これまでは学校の図書室や町の図書館の貸し出しでしか本を借りることがなかったから、友達から本を借りるということができるのはなんか嬉しいし新鮮だ。



『じゃああたし、そろそろ寝ようかなあ』



 そうしてついついメッセージをお互い送り合っているうちに、いつの間にか深夜1時になってしまっていた。



『もう1時になってたんだな。じゃあ寝るか、おやすみ』

『うんっ、おやすみ。また明日学校で会おうね』



 おやすみのメッセージが西澤から来たのを確認したところで俺は寝ることにした。

 勉強以外でこんなに時が過ぎるのが早いと思ったのは久しぶりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ