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没落を望むビッチ

 不覚。

 期末テスト初日に限って風邪を引いてしまった。しかも寝不足気味という合わせ技。

 これは西澤に一本を取られかねない状況だ。最悪だ。


 だが勉強だけが取り柄の孤高のボッチとしては、何がなんでも負けるわけにはいかない。

 俺はやる。俺はやるんだ。


 絶対に負けられない戦いを前に決意を固めつつ教室に入ると、真っ先に西澤と目が合った。すると西澤は俺にウインクしてきた。あいつ余裕だな。


 西澤の顔を見る限り、どうも向こうは風邪なんか引いておらず、寝不足気味でもなさそうだった。

 残念ながらコンディションでは俺の負けだ。


 だがコンディションでテストの結果が決まるわけではない。

 テストの結果が決まるのは努力の量だ。努力が俺を勝利に導いてくれるのだ。





 ◆





 期末テストの期間が終わった。

 結局テスト期間中は風邪のままだった。

 頭痛や鼻水などを堪えつつ問題を解いたが、果たしてどうなることやら。

 まあ答え合わせした感じでは全ての教科で90点以上は取れてたようだけど。


「坂本く〜ん、テストお疲れさまー!」


 俺の肩をぽんっと叩いて、西澤が爽やかに声をかけてきた。それと同時に甘ったるい匂いも漂ってきた。


 西澤はクラス内では俺のことを坂本くんと呼ぶ。だが俺と二人っきりのときはキミだとかボッチくんだとか言って、ちょっと小悪魔的フレンドリー感を出してくる。

 そこらへんはなんか西澤のほうで使い分けているんだろう。


 てか、なんか嫌な視線を感じる。それも複数……。


 俺が教室内を見渡すと、男子数人がじろりと俺の方を見ていた。


『おい、西澤が目立ちすぎてるせいでクラスの男子たちに注目されちまったじゃねーか。お前気付いているのか?』

 と俺は目で合図するも、どうやら西澤は気付いていない様子。

 なのでしょうがなく口で伝える。


「俺は学校で静かにゆったりと勉強ができるボッチ生活を送りたいって前も言ったよな? 目立つとそれが阻害されるんだ。だから教室では俺に声をかけてくんなよ」


 俺は小声で西澤に注意した。


「ごめんごめん。つい声かけちゃった。てへっ」


 前と同じようにまた舌を出して謝ってきた。全然反省してないなこいつ。


「まあそれよりもだ。西澤こそはテストどうだったんだよ?」

「一言で言うと、完璧だね」

「随分と自信があるんだな」

「まあね〜。あたしガンバったからね!」


 西澤はふふんと自慢げな顔をしている。本当に色んな顔ができるんだな。

 やっぱりこいつは顔面七変化だ。顔の筋肉とか柔らかそうだ。


「結果が楽しみだな」

「そうだね〜。坂本くんがまさかの1位陥落!大富豪からの大貧民!ってなるのが楽しみだよ〜」


 西澤は目をキラキラさせながら俺の没落を望んだ。本当に小悪魔みたいだと思った。

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