ぼっちの始まり
そうしてここは森の中。
シルフォノーレ国、王都ベルンマーリ…………郊外の森の、深い……かなり深い森の中。
このシルフォノーレ国は多種多様な人がいる大国と呼ばれるひとつである。
多様な人種を受け入れる寛容なこの国は他国からはよく変わっている国と言われる事もあるが、この国の国民である自分はとても良い国だと思う。
まあ、王都には行ったことがないので、実際どんな暮らしや文化がいりみだれているのかは知らない。多様な人物、多様な暮らし、様々な文化からもたらされた華やかな王都--と、言われている。
王都はちょっとやる気を出せば割と時間もかからず着く距離にあるのだが……もう一度言うが、行ったことはない。
まあ、つまりは……お金が無かったのだ。
こんな文無しで、身なりも綺麗でなくて、……人様の前に出れるわけが!だったのだ。
……こほん。
お金が無くて、身なりを整えられなくて、自作の服を着ているのだが、こんな手作り服で王都へ入るなど……無理だ。
……そんなこんなで郊外のこの森からは出ないで過ごしている。
まあしかし、自分の現状はさて置き…………ここシルフォノーレ国は良い国だ。何より身分にこだわらないのが良い。
一応、王族と呼ばれる方々もいて、貴族もいて、富豪もいて、平民もいるのだが、----王族は得に身分を気にせず個を大切にする方々だそうで、国民に関しては好きな商売をするのも良し!自分の好いた者と生きて良し!貴族を目指して功を上げる為に生きても良し!と言ってくださるのだ。
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シルフォノーレ国。
階級もあるし、貴族の努めもあるが、自分の生き方を自由に選べる国。
次代の王も、国政を担えるよう必要時期となると王位継承教育と執務が始まる為、……つまりは皇太子を決めることになっている。
王家の血を継ぐ全ての者が候補者であり、国民の意見も反映される。
大人となる12歳以上の者、ひとりひとりの願いによって次期国王様が選ばれる。
また、国土は広大な面積を誇り、周囲には友好国も多い。
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……らしい。
それが一応自分でも知っているこの国の事なのだが。
--つまりは、自己の自由が尊重されているのだ!!!
……まあ、中にはオカシナ者が居たりもするが……。
お話を戻そう。
ここは、深い深い深い森の中。
何故森の中?答えは簡単。世の中から切り離してくれるからだ。
「よし!これで、他人だ。」
気づいたらひとりだった。いや、正確には家族という者はいたのだが……まあ、うん。
ひとり最高!
12歳となったあの日、自分の可能性に気づいた事が決定打だった。
--すぐさま決行した。
--家出だ。
「これでもう心配ない。--ひとりだ--。」
そうして深い深い深い森の中。