表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

子連れエルフ物語 ~森に捨てられていたウチの子、もしかしたら……天才かもしれない……!~

作者: 悠羅/秋冬

 森の外れに私の家はあります。

 私は同族から少し敬遠されており、集落からもかなり遠いです。


 今日は日課の森のお散歩。


 やっぱり、エルフは偶に森林浴しないと木になってしまいますね!

 ちなみに、これは私の中で鉄板の『エルフ的ギャグ』です。


 昔人間の仲間に言ったとき「意味が分からない。エルフにギャグセンスはないみたいだ」と言われたので、今は封印しています。(ぷんぷん!)


 同族には、もう言いませんよ。


 そもそも私は、同族には遠ざけられていますからね。

 最後に言ったのは少し昔です。


……確か五百年ぐらい前でしたかね?


 まあ昔のことはともかく、私は木にならない為にも森の中を歩いているのです。


「ああ……! うああ……!」


 ん? どこからか何か聞こえてきたような……?


「うあああ! あああうあああう!」


 これは……子どもの泣き声……!?


 私は、すぐさま使い慣れた探索魔法の精度を上げます。

 野生動物や、魔物を探索からはじくと、百メートルくらい先に反応が残りました。


 おそらくこの反応が声の正体ですね。


 自身の体に強化魔法をかけ、全速力でその場所へと向かいます。


「見つけました……!」


 木の幹の穴に納められるようにして、その子はいました。


 幸い近くに魔物はいなかったみたいですね……。


 赤ん坊は私の姿を見止めると、泣きやみ、あどけない瞳を向けてきました。


「捨て子、ですか……」


 この森の付近にはエルフ以外の人里はありません。

 わざわざこんなところに置いたということは……それ以外に考えられませんね。


 世の中には、子どもを育てたくても育てられない人がいるというのに……酷いことをするものです。


 しかし、実際にはこの森に子どもを捨てに来る人間は多いです。


 原則的に、エルフは人間を里に受け入れることはありません。

 だからこういう捨て子は『見つけても放置せよ』というのがエルフの掟です。


 ですが私には……見つけてしまった以上、命を見捨てることはできません。


「君のお名前は、なんというのですかぁ?」


 私は猫なで声を出しながら、子どもに手を差し伸ばし、抱き抱えました。


「ううああううう」


 嬉しそうに声を上げる子どもの首には、〈R・S〉と描かれたプレートが掛けてあります。


「……人間の文字で……アル……スー……?」


 私は百年以上前の記憶を呼び起こします。

 若干自信がないですね……。


「アル、アルス……! あなたの名前はアルスですね!」


 とりあえず便宜的にも、名前は勝手につけさせてもらいましょう。


「それで、アルス君はどうしてここにきたのですかぁ?」


 魔法でアルス君の思考を読んでみますが、やはり赤ん坊の思考は、かなり読みづらいですね……何も分かりません。


「とりあえず、家に行きましょうか?」


 私は来た道を、アルス君を抱えながら歩いていきます。


 私達はずっと笑顔のままでした。







 その後は大変でした。


 私は子どもを育てたことがありません。

 ご飯もおしめも、何もかもが初めての経験で……。


 でもその全てが私には楽しかったのです。


 そういえば、あのときは気付きませんでしたが、名前の刻んであったプレートの裏には、人間の使う暦が刻まれていたのです。


 そのプレートがこの子の誕生日だとすると、この子は一歳ということです。


 ならこの子は間違いなく天才ですね……。


 だって、この子はもう歩いているんです!


 確か、昔エルフ友達に訊いた話では、『赤子というのは大体三年ほどして、つかまり立ちができるようになる』だそうですから、この子は間違いなく大天才です!


 だって、三倍ですよ、三倍!


 凄すぎます……!


 まあ、魔法の才能は他の赤子とあまり変わらないようなので、魔法を尊ぶ『精神の存在アニマ』と呼ばれるエルフにとっては、さほど重要ではないかもしれません。


 でも、このアルの可愛さだけでもいいですから、今すぐにでもエルフの里で自慢してあげたいくらいです!


 でも……それはできません。


 あの頭の固いエルフどもは、私がお願いしたにもかかわらず、『人間の赤子を捨てねば森を追放する』と言ってのけたのです!


 分かりましたよ、出て行ってやりますよ!


 どうせ、人間のアルスがこれから暮らしていくなら、ずっとここには居られませんからね!


 そう決めてからは早いものでした。


 私は、昔愛用していた黒いローブと、それに色を合わせた三角帽を引っ張り出し、旅装を整えました。


 この格好は、昔旅の仲間だった人間に、「魔法使いと言えば、この格好だ」と言われてからずっと愛用していました。


 他の仲間の一人には「幼児(ロリ)体型だから魔法少女みたいだな」と言われました。

 意味はよく分かりませんでしたが、ムカついたので火あぶりにしました。


 まあ、昔のことは良いです。

 あいつらが気付く前に出ていかなければなりませんからね。


 それから私は、ここ五十年ほどお世話になった家に、頭を下げて別れを告げました。


 今考えると、この家に定住していた期間は、これまでの人生で一番長かったかもしれませんね。


「さあ行きましょうか、アル?」


 私はニッコリと微笑み、高い高いをしながらアルスに尋ねました。


「あううああ、まんまぁ」


 こ、この子今私のことをま、ま、ままま、ママって……!


 て、天才です! 間違いなくこの子は天才です!


 確か以前エルフの――(以下略)




 私はアルを腕に抱えながら、森を抜け、近くの街道に至りました。


 エルフの奴らは、なんのアテもない私が出ていくとは思っていなかったでしょうね。

 でも、私にだってコネくらいあるんです。

 さてと、最初の目的地は、昔の仲間が治めていた国に行ってみましょう。


 アルと一緒ならどこへ行っても楽しいでしょうからね!


「楽しいですねえ、アルゥ?」

「あうあ、まんま、まんまぁ」


 アルにママと言われる度に、私の心は満たされるのでした。

連載するかどうかはあなた方の反応に懸かっております!


よろしければ感想、評価、ブックマークなどよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 評価ポイントつけました 面白いです!!
[良い点] 昔の仲間のくだりが個人的には面白かったですw 口は災いの元ですね。火あぶりにされちゃう( ´△`)
[一言] 母性に溢れた素敵な短編ですね。 母子のお話個人的には好きなんですが、中々ないので拝読できて嬉しいです。 親ばか前回の続編をぜひ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ