3話 ステータスと今後
双子は6歳になった。この世界では6歳になると魔法の適性をみるために神殿にいく。そこで自分の適性を初めて知り、ステータスカードを作成する。そこから魔法を使う訓練のために初等学校に入学することになる。
そして、6歳の誕生日俺たち双子は魔法の適性を知るために神殿に行かなくてはいけなかった。普通の人の適性は1つなことが多い。しかし、これまでの練習の中で、俺には水、風魔法の適性があることが分かっていて、ナナには火、水、地、風属性の適性があることを双子だけが知っていた。
ちなみにナナ姉は恥ずかしかったので、普通にナナと呼ぶことにしている、すごい反発があったけど。
俺が住んでいるライダ村はカノ王国では西の田舎にあり、神殿がある大きな街に移動しなくてはいけなかった。今回は西の交易都市サウスへ向かっている。家からは両親と共に乗り合いの馬車に乗り、神殿まで向かっていた。
双子というのはこの世界でも珍しいのか、周りからの視線が痛い。コソコソと内容までは聞こえないが話しているのが分かり、少し居心地が悪い。
しかし、ナナの捉え方はコーダとは違ったものだった。確かにほとんどの視線は双子を珍しがるものだったが、中には好意を持っていることがわかる視線もある。女子はそういった視線に敏感なのだ。自分で言うのもなんだが、コーダもわたしも美形だろう。みんなの注目を浴びるのも仕方がないことだと思う。しかし、なんだろうか。コーダのことを外見しか知らない人にそんな目で見られていると思うと胸がモヤモヤする。
そこでわたしはコーダの腕に抱きつき、周りを威嚇するように睨みつける。わたしの可愛い弟はあげないという意思を込めて。
「どうしたのナナ?」
「なんでもない」
少しきつい言い方になってしまう。コーダが特別なのか、男の子はこういった視線になぜ鈍いのだろうか。全く気づいている様子がない。しっかりお姉ちゃんが守ってあげなくちゃ。わたしが決意を新たにしていると、頬に柔らかい感触がした。
「どーしたの、難しい顔して?なにかあった?」
「えへへ、なんでもなーい」
コーダの優しさにわたしの心が幸せでいっぱいになる。いつもわたしのことを見てくれている弟の愛を感じる。
そんな恋人のような甘々な空気を作り出す双子の様子にさらに視線が集まるが、当の双子は2人の世界に入っているのか、気にするそぶりはない。異様な空気が馬車の中を包んでいる。馬車はゆっくりとサウスへ向かう。
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俺たちはやっとサウスに到着した。道中は特にトラブルもなく、ナナは途中から機嫌も良く、はじめての長距離の馬車の旅だっだが、スムーズな旅となった。
サウスは西一番の交易都市というだけあって、ライダ村では見たこともない、日本にも引けを取らないほどの人で溢れていた。商店からは大きな声が飛び交い、
「すごい人だねナナ、はぐれないように気をつけないとね」
「そうね、手でも繋いでおこっか」
そんなナナの提案を聞き、手を繋ぎながら両親の間を歩いていく。
「お父さん、神殿まではどれくらい?」
「そうだな、歩いて後10分くらいかな。大都市に来たのも初めてだが、大丈夫か?」
「うん、全然大丈夫」
「わたしも元気だよー」
両親は幸せそうな顔で双子の様子を見ている。はじめての子供、そして苦労して産んだことで両親の溺愛ぶりは大したものである。
両親と楽しく会話しながら進んでいると、遠くに神殿が見えて来た。真っ白で厳かな雰囲気のある神殿には少ないが列も出来ている。同い年の子たちが来ているのだろう。ここで両親とは別れて双子だけで列に並び順番を待つ。
「なんだか緊張してきたね、ナナはどう?」
「わたしたちはもう適性知ってるし考えすぎよ」
「だからこそだよ、俺たちの適性は多い方なんだから、変に騒がれたりしないか不安なんだよ」
「それこそ、しっかりしていれば問題ないわよ」
こういう肝が据わっているところはナナのすごいところである。そんな話をしていると神殿の中からざわめきが聞こえてきた。
「すげぇや、火と風属性の適性持ちだってよ」
「今年はこれで4人目だろ、中には3属性に適性がある奴もいたらしいぞ」
そんな話し声が聞こえてくる。俺には水と風属性の適性があることが分かっている。更にはナナには4属性もの適性があるのだから、混乱は確実だろう。
ついに、俺たちの順番が回ってきた。神官に連れられて、2人で適性を知るための水晶の置いてある部屋に入る。この水晶は適性のある属性ごとに発光するもので、火属性なら赤、水属性なら青、風属性なら緑、地属性なら黄、光属性なら白、闇属性なら黒に光り、適性が強いほど光が強くなる。
まずは俺から水晶に手をかざすと、水晶から眩い光が放たれる。色は青、緑、そして黒。自分に闇属性の適性もあることが分かった。神官が驚いた顔をしている。ステータスカードを神官が水晶にかざすとカードが一瞬光り、カードに情報が記録される。
コーダ 6歳 男
魔法適性 水魔法 風魔法
闇魔法(隠蔽:女神ユリアの祝福)
技能 速読術 魔力操作 (隠蔽:言語理解)
称号 守る者
神官にカードを渡され、目を通す。色々突っ込みたいところはあるが異世界からの転生という希少な例から考えればこれくらいのことは許容範囲内である。
次にナナが水晶に手をかざすと、水晶から俺の時と同じほどの光が放たれる。色は赤、青、緑、黄、白。
ナナには光属性の適性もあったらしい。今度は神官も開いた口が塞がらないようだ。
「あの神官さん、大丈夫ですか?」
俺が体を揺すりながら声をかけるとやっと神官たちが動き出す。震える手でステータスカードを水晶にかざし、ナナにカードを渡した。
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sideナナ
わたしが水晶に手をかざすと眩い光が放たれた。しばらく放心していた神官さんからステータスカードを受け取って確認する。
ナナ 6歳 女
魔法適性 火属性 水属性 風属性 地属性
光属性(隠蔽:女神メシアの祝福)
技能 身体強化 魔力操作 (隠蔽:言語理解)
称号 導く者
そこからはもう大騒ぎだった。どこから漏れたのか、わたしが5属性もの適性を持っていること、その双子の弟も3属性の適性を持っていることが知れ渡り、物珍しさから神殿の周りにはたくさんの人が集まり、抜け出すのに1時間もかかった。そこからは逃げるように馬車に乗り、ライダ村に帰った。
帰ってからは両親からの話があった。まずは父からの話だった。
「これでステータスカードも手に入れて、初等学校に入学する準備ができた訳だが、ここの学校ではお前達にはもう簡単すぎるかもしれない。そこでだ、王都の学校に行くつもりはないか?」
「王都の学校⁉︎それって王立カノ学院ってことだよね、あそこはほとんどが貴族とか裕福な人たちがいくようなところだよ」
そう王都で庶民が入学できる学校はこの1校だけである。貴族や裕福な人たちがこぞって子供を入学させようとする名門校である。入学も実力主義であり、権力など関係がない珍しい場所である。卒業するだけで将来が約束されるとまで言われている。
「そうだ、お前達にはあの学院がふさわしい。なによりお父さんとお母さんの母校でもあるしな、子供ができたら入れてやりたいと思ってたんだ」
「そうよ、私たちもカノ学院でたくさんのことを体験して、お父さんとも出会って、素晴らしい学院生活を送ることができたの」
お父さんとお母さんはとても楽しそうに話している。そこまで言われたらわたしも行ってあげたいし、行きたい気持ちが強くなっていく。
「わかった、わたしもカノ学院に入れるように頑張るよ。コーダも良かったかな?」
「うん、ナナがそこにいくんなら俺もついていくよ」
「ありがとうコーダ」
「にしてもお前ら双子は仲良いよな、まあいいことなんだが」
ニヤニヤした顔でお父さんにからかわれる。初めてできた弟は可愛くてしょうがないから仕方ないのだ。わたしはこのままだといじられると思い話を変える。
「でも、王都の学校に行くとなると寮とかの生活になるのかな?お父さんとお母さんと離ればなれになるのはいやだなぁ」
「いや、それに関しては心配しなくていいぞ。王都にも家はあるからな」
「えっ!」
「あーそうか言ってなかったか。この家は子供が産まれるってことで、療養とかのために一時的に住んでいるだけだからな、なぁ母さん」
「そういえば言ってなかったわね。さっきお父さんも言っていたけど、私たちの子供にはカノ学院に入ってもらいたかったから、王都の家も置いたままにしているのよ」
「そうだったんだ、びっくりしちゃったよ。でもそれなら家族で王都に住めばいいから安心だね」
こうして、わたしたちは王立カノ学院に入学することが目標になった。
「でも、コーダはともかく、わたし勉強の方は全然なにもやってないから大丈夫かな?」
「そうだね、ナナは体はよく動かしてるけど、本とか読まないもんね」
「それじゃあ、家庭教師でも雇ってみるか。王都に戻れば、人材はすぐに見つかるだろう」
「じゃあ王都にも早めに帰りましょうか」
「そうと決まれば行動だ、各自持ち物を整理して王都に帰るぞー」
「「「おー!」」」
こうして、わたしたちの王都での生活が始まろうとしていた。
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