雀の天具帖
テスト投稿用その2です。
「でさ、ボクはこう思ったんだ。どうすればよく飛ぶ紙飛行機を作れるのか、ってね」
机の上で、雀は嘴と足で器用に天具帖という、薄い高級和紙で紙飛行機を折りながら、そんな下らないことを言った。
夏の昼前。二階の柔らかな風でちりんちりんと風鈴が鳴る中、私はTシャツと半ズボンというラフな格好で、木造の窓枠に肘をかけ、氷の入った麦茶を片手に、青い空と白い蜘蛛と、輝く太陽が織りなす、夏のコントラストをめいいっぱい楽しんでいた。
眼下には、家の庭が。中程には真向かいの屋根が。遙か遠くにはそびえ立つ入道蜘蛛が広がっていた。
「ねえ、ぼくの話を聞いてる?」
そんな私の態度に、ちゅんちゅんと机の上で雀が抗議する。
「めんどくせえよ。私が何でテメエの話なんぞの聞かないけねえんだ」
「ちゅ~ん~」
雀はひまわりの種一粒でいっぱいになりそうな程、小さな頬を頑張って膨らませて、怒りを表そうとする。
しかし私はそれを無視して、木造の窓枠に肘をかけながら、麦茶を一杯口に含む。
「ふーん、だ!」
やがて根負けしたのか、雀はちゅんちゅんと紙飛行機制作に戻っていった。私は、と言えば、空になったコップに新しい麦茶を注ぐために、一階に降りていった。
そんなこんなで三十分。もうすぐタモさんの『笑っていいとも』が始まろうという時間。
「でーきーたー」
ちゅーんー、と嬉しそうに羽を大きく広げるぴょんぴょんと飛び跳ねる雀。二時間以上の格闘の末、どうやらついに紙飛行機を折り終えたようだ。嘴と爪で穴だらけになり、さらに涎と折り間違えがひどくてぐしゃぐしゃしていたが、辛うじて紙飛行機と呼べるものの原型は残っていた。
「ねえねえ飛ばしてよ」
と羽をぱたぱたさせ、せかす雀。
「和紙じゃ柔らかすぎて飛ばねえよ」
「大丈夫、大丈夫だから!」
ちゅんちゅんと、あまりに五月蠅いので、私は和紙の紙飛行機を窓の外に広がる青空に向かって、すっ、と手を離した。
しかし、そのぴらぴらとした薄い翼では、涼しげな夏風を捉えられなかったようで、紙飛行機は五秒も持たずに夏の庭に墜落してしまった。
窓枠に突っ立って墜落した紙飛行機を残念そうに眺める雀。残念すぎたからか、ちゅんとすら鳴かない。
ため息を付き、私は麦茶を飲み干す。
冷たい液体が喉を通り、私はコップを置いた。
からん、と氷がぶつかる――夏の音がした。
いつ書いた作品だろう。笑っていいともとか懐かしすぎて。
蜘蛛は誤字じゃないです。
喋るスズメがいるんだから空に蜘蛛が浮かんでてもいいということで。