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黒の奇譚 ~夜王転生録~  作者: アメフラシ
第一章 黒廼家
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第五話 黒い石









 「ぐっ…………!?」

 「動けない……」

 「クソっ! 離せぇええ!」



 夜斗が二番線ホームに続く通路にムタをおびき寄せる事に成功してからほんの数分後、一番線ホームにある新型魔導列車の近くには、白く発光する枷のようなもので体を拘束されたムタの仲間が全員、まるで簀巻きにされたような状態で地面に転がっていた。



 「あまり動かない方が身のためだぞ……無理に外そうとすれば、反動で感電死してしまうかもしれないからな」



 必死に枷を外そうと藻掻くテロリスト達を、見下ろしながら言葉を投げ掛けたのは霧夜だった。



 彼等を拘束している枷は霧夜が魔導器によって発現させて形作った電気の枷だった。

 無理矢理にでも外そうとしたその瞬間、拘束されている人間の全身に高圧電流が流されるという仕組みの拘束具だ。



 夜斗の手によって無力化されたとはいえ、彼等が危険なテロリストである事に変わりはない。

 追い詰められた彼等が思いもよらない行動に出ないとは言い切れない。最悪な事態になるのを防ぐために霧夜は、拘束という手段で彼等の動きを封じる事にしたのだ。



 「――――霧夜」



 霧夜の名を呼びながら、魔導列車から栞奈が降りてきた。



 「妹か。列車内の方はどうだった?」

 「なーんにも問題ないよ。列車の中にいた残りのテロリスト達はぜ~んぶ、ぶっ飛ばしちゃったからさ!」



 にこやかな表情で自分の両拳を突き合わせながら栞奈は答えた。



 「それはそれは、連中に同情を禁じ得ないな……全く以て可哀想に……」

 「アンタどっちの味方なのよ……でもこれで皆を外に避難させることが出来るね」

 「ああ。夜斗君が敵のリーダーを引き付けている今なら、観客達を安全に外へ誘導できるな」

 「あ、うん。そう……だね……」



 夜斗の名を聞いた途端に先程の元気が嘘のように無くなった栞奈は、不安そうな面持ちで二番線ホームに続く連絡通路の閉じられた入口へと視線を向ける。



 「ねぇ、霧夜……ヤト兄、大丈夫だよね……?」



 それはとても弱々しい声だった。

 普段の栞奈からは想像がつかない程に儚げで、今にも消えてしまいそうな声だった。



 「夜斗君は自分で囮役を志願したんぞ。無理なら自分から名乗りでたりはしないだろう」

 「……そうだけど……」



 兄の夜斗を心配するあまり不安を拭いきれずに俯いてしまった栞奈の右肩を霧夜がポンと叩く。



 「心配しすぎだ、お前は。夜斗君なら必ず大丈夫だ……私達の家族を信じろ」

 「……うん」



 霧夜の言葉を受けた栞奈はもう一度連絡通路に目をやり小さく呟く。




 「……大丈夫だよね……ヤト兄……」





 ◇◇◇





 ――――二番線ホームに残響する電磁銃の発射音。



 二体の機械人形が俺に目掛けて電気の弾丸を交互に、そして絶え間なく撃ち続ける。



 俺は迫りくる弾丸を紙一重で躱し続け、機械人形との距離を徐々に縮めていきながら反撃の隙をうかがっていた。



 「ちぃっ! ちょこまかと……機械人形っ!」



 ムタの合図と共に機械人形は左腕に装備されていたネット銃での攻撃に切り替え銃口を向ける。速さで翻弄するならその足を止めてしまおうという魂胆なのだろう。



 ……だがそんな物に捕まってやるつもりはない。

 攻撃の流れが変わったのを好機とみた俺は意を決して機械人形に肉薄する。



 機械人形との距離およそ十メートル。

 距離を一気に詰めた俺の眼前で、機械人形の左腕の銃から捕縛用のネットが発射される。



 ……ここだ……!



 ネットが自分に届く直前、地面を強く蹴って上に高く跳躍し、迫りくるネットを飛び越えて機械人形との距離を更に縮める。



 機械人形との距離およそ五メートル。

 一体の機械人形に狙いを定め、短剣を逆手に持ち替えて上段に構える……そして頭頂部目掛けて力の限り振り下ろす。



 機械人形との距離……ゼロ

 短剣は頭頂部に深く突き刺さり、機械人形をまるで断末魔のように軋む音を上げながら崩れ落ちていった。



 ……これで二体目……残りは……



 残りは一体、そう思った時だった……



 「……フッ、フフフ…………フハハハハハッ!」



 いったい何を思ったのか……ムタがいきなり大声で笑い始めたのだ。



 「いや失礼、だが……クックック……まさかここまで追い込まれてしまうとはな。君の事を少し侮っていたようだ。いや実に……見事な腕だ!」



 思いもしなかった敵からの称賛の声。不気味にも感じたその行動に俺は少し戸惑ってしまう。



 「……気でも狂ったか? アンタ、今の状況がわかってるのか……もう後がないんだぞ?」

 「それはもちろん十分承知しているさ。だが――」



 不敵な笑みを浮かべながら目を見開き、より一層強く俺を睨み付ける。



 「――最後に勝つのは……この私だっ!」



 その声を皮切りに最後の機械人形が動きだす。

 銃を構えていた腕を下げ、その巨大な体躯からは想像もつかない速さで、俺に向かって突撃してくる。



 ……まさか、特攻か? それなら……



 右手の短剣を順手に持ち替え、迫りくる機械人形目掛けて一気に駆け出す。



 向こうから近づいて来てくれるならいくらでもやりようがある。




 思考を巡らせ、頭の中でどう立ち回るかを考える……距離を詰めて間合いに入った所で更に加速。そして擦れ違い様に機械人形の首を落とす。

 次にその勢いのまま、機械人形の背後で指示を出しているムタへと肉薄し無力化する……それでこの戦闘は終わりだ。




 お互いに距離を詰める。そして、ある程度距離を詰めてから次の行動に移ったのは機械人形だった。

 接近する俺を迎撃しようと、腕を振り上げて地面に叩き潰そうとする構えをとる。



 ……それがどうした……!



 何て事はない。

 機械人形が腕を振り下ろすよりも先に首を切り落とす自信が俺にはあった。



 あと一歩。

 俺があと一歩前に踏み出せば機械人形は俺の間合いに入る……そう思ったその時。



 「――――――っ!?」



 機械人形の内部から聞こえていた駆動音が突然止んだ。機械人形は腕を振り上げた状態のままその動きを止める……機能停止したのだ。



 止まった!? なんで急に――――っ!?



 気がつくと俺の眼前にいる機械人形の背後には、その機械人形を盾にして不敵な笑みを浮かべるムタが立っていた。



 足許には魔導器で現象を発現させる際に展開する蒼く発光する円形の陣――『術式』が。そして前に突き出された左手には黒い雷が巻き付くように纏わされていた。



 「っ!? クソッ!」



 ――――罠だ。

 それに気づいた俺は前に踏み出そうとしていた右足を踏み止めて、咄嗟に左へと飛んだ。



 「――――消えろっ!」



 放たれる黒雷。

 その黒い閃光は空気を引き裂きながら機械人形の胴体を貫き、横に跳んだ俺の右足を掠め、最後に停車していた旧型列車に直撃、側面を破壊する。

 胴体に風穴があいた機械人形は火花を散らしながら爆発。周囲にパーツを撒き散らして四散していった。



 危なかった……まさか、機械人形を囮にするなんて……もう少し気づくのが遅かったら今頃は……



 「ほう……あの体勢からよく躱せたな。実に見事だ……だが」



 地面に膝をつく俺を、蔑んだ目で見下ろすムタが口許を歪めて笑う。



 「……? なに笑って――――っ!?」



 足に力を入れ立ち上がろうとしたその時、俺は自分の身体に起きている異変にようやく気がついた。



 ――――右足に感覚がない。

 恐らく先程の黒雷が右足を掠めたせいで神経が麻痺してしまったらしく、足の付け根から先端にかけてまでの感覚が無くなっている。まるで右足がすっぽりと抜け落ちたような喪失感だった。



 「さぁ、続きといこうか。もっとも……その足では満足に動けんだろうがなっ!」



 絶好の獲物を見つけた言わんばかりに嘲笑うムタの足許に、またあの蒼い陣が展開される。



 「くっ!?」



 俺は左足の力だけでなんとか立ち上がり、ムタから距離を取ろうと右足を引きずりながら動きだす。



 「そぉぉらぁぁ!」



 掛け声と共にムタが左腕を振ると移動を試みる俺の行く手を阻むように眼前を一筋の黒い雷光が走る。



 「……っ クソッ!」



 このままじゃ狙い撃ちされる……!

 俺はすぐさま踵を返し別方向へと逃れようとするが、またも黒雷に道を阻まれてしまう。



 「フハハハハッ! どうしたどうした! 先程までの勢いはどこにいったぁ? ん~? もっと速く逃げないと黒焦げになってしまうぞ~? ハーハッハッハッ!」

 「っ! 畜生……!」



 ……あの野郎、遊んでやがる……!



 ムタの下卑た笑い声がホーム全体に反響する。

 俺は右往左往と必死に逃げ回るも、ムタが繰り出す黒雷に翻弄され続け徐々に逃げ場を失ってしまう。その結果、気がつくと俺はホームの壁際まで追い詰められていた。



 ……っ……追い込まれた……!?



 「クックックッ……形勢逆転、後がないのは貴様の方だったな、小僧……!」



 ムタが勝ち誇った笑みを浮かべながら俺の前に立つ。俺の間合いには決して入らず、自身の放つ黒雷が届く射程内ギリギリの距離である安全圏から左の掌を前に翳し構えていた。



 「随分と舐めたマネをしてくれたな……だが、それもここまでだ。我々を邪魔した報いを受けてもらおうか……!」



 ムタの左腕に纏われる黒雷。今まで放っていた黒雷とは違い右腕全体を覆い尽くすその帯電量は目に見えて凄まじいモノだった。

 激しい音を立てて発光する黒雷を見て俺は直感する。



 ――――コイツは……次で俺を跡形もなく消すつもりだ――――



 どうする……?

 この足じゃ躱すのは不可能だ。


 なら攻撃を撃たれる前に奴を無力化する……?

 無理だ……距離がありすぎる。奴に手が届く前にこっちが先にやられてしまう。


 短剣を奴に投げる……?

 駄目だ……武器の投擲なんてやった事がない。それに、それで武器を失ったらそれこそ打つ手がなくなってしまう。



 「さぁ……覚悟はいいな!」



 思案に余る俺に狙いを定めるようにムタは掌を突き出す。



 ……だったら……



 俺を短剣を持っていた右手を前に突きだし、剣の腹を見せるように横に構えた。



 「……なんだそれは? まさか、それで私の攻撃を防ごうとでも? クックックッ、ハーハッハッハッハ! これは傑作だ! そんな小さな得物で本当にどうにかなると思っているのか? クッハハハハ!」



 俺の行動を見たムタの人を見下した高笑いが耳の中で鬱陶しく反響する。



 ……馬鹿みてぇに笑いやがって……無茶なのはこっちだって承知の上だ。

 けど……一か八か、これに賭けるしかないんだよ……!



 「クックック……だが折角だ、試してやろう。本当に凌げるかどうかをな!」



 ムタの左腕に纏っていた黒雷が翳していた掌の先に集まり形を成す。

 人間一人位なら軽く飲み込んでしまいそうな、どす黒く濁った巨大な雷球へと変わっていった。



 「跡形もなく……消し飛べ!」



 掌から発射される黒い雷球。

 セラミックタイルの床を削りながら猛スピードで動く。

 受けてしまえば最後、この世に存在していた痕跡さえ残らないであろう――――圧倒的な死がすぐそこまで迫っていた。



 ……来るっ!



 俺は壁に背を預け、左手を短剣の腹を押し出すように添えてグリップを握る右手にありったけの力を入れ身構える。そして――――



 「ぐぅぅぅっ!?」



 ――――短剣の中心で黒い雷球を受け止める。



 「ほう、止めたか。ククッ……だが……」



 雷球を受け止められたにも関わらずムタの表情は余裕に満ちていた。自身が発現させた最強の一撃。防ぎきれる筈がないという絶対的な自信がムタの表情から垣間見えた……その証拠に。



 「っ!? ぐあっ!?」



 受け止める事には成功したが、黒い雷球の勢いは止まることを知らず、更に重みを増し、俺を消し去ろうと絶えず圧力をかけてくる。



 ……っ……手が……!? 



 黒い雷球は放電される火花を激しく迸らせ、短剣を構えた俺の両手を焦がしながら、ジリジリと俺を追い込む。



 「ぐうぅ!? くっ、この……!」



 高熱に当てられ痛みを発する両手に再度力を込める。グリップを強く握りしめて意を決する。



 「――――っ!」



 こんな奴に――――



 「っ! だぁらああああああああああっ!」



 ――――負けられるかぁぁぁぁぁっ!



 短剣を切り上げるようにして力の限り振り抜き、黒い雷球を弾き飛ばす。



 「っ!? ばっ、馬鹿なっ!?」



 途端、ムタの表情から余裕の色が消える。

 自身最大の攻撃が弾かれたのを見て、表情に焦りの色が急激に浮上していった。



 弾き飛ばされた雷球は弧を大きく描くように上昇し、二番線ホームの天井に激突。雷球は内側から破裂するように弾け飛び、天井に巨大な大穴を空けて消えていった。



 破壊された天井から雨のように地上目掛けて崩れ落ちる鉄骨や石膏の塊。そしてその瓦礫が降り注ぐ場所にはムタが居た。破壊された天井はムタが居る場所の丁度真上の位置だった。


 「くっ!? クソがあああああ!」 


 優位な立場から一転して窮地に立たされ焦燥の色を更に濃くしながらもムタは動く。

 魔導器の回路出力を限界まで上げ、魔核のエネルギーを全てを打ち砕く巨大な黒い雷に変え発現させる。

 真上に向けて放たれた黒雷は落ちてくる瓦礫を塵と化し、その軌跡を残して空へと消えていった。

 

 破壊した瓦礫の残骸である塵や小さな破片がぱらぱらと雪のように振り落ちる。その様子を見たムタは、自身に迫る危険を完全に取り除いたと思い口許を緩め安堵の笑みを漏らす。


 「うぉりぃやあああああああ!」


 ――――気を緩め無防備と化した隙をついて俺は拳を振りかぶりムタに向かって突撃をする。天井から落ちてくる瓦礫に気をとられている間に、足を引き摺りながら距離を詰めておいたのだ。

 俺の接近に気付いたムタは咄嗟に右手を構え迎撃の体制をとる……だが、術式が展開される事はなかった。魔導器が機能しなかったのだ。


 魔導器を高出力で現象を発現させ続けたそ結果、度重なる過負荷が原因でオーバーヒートを起こしたのだ。

 魔導器も機械だ。無理に使い続ければ悲鳴をあげ、動かなくなるのも当然だ。


 俺の拳がムタの顔面を捉える。飛び付くようにして打った拳に体重を乗せ――


 「沈めぇええええええええっ!」


 ――ムタの後頭部を地面に打ち付けるように殴り飛ばす。


 「がっ……!?」


 地面に亀裂が入る程の衝撃を頭部に受け激しく脳を揺さぶられたムタはその反動からか、やがて気を失っていった。


 「はぁ……はぁ……終わっ、た……」


 しんどい……やっぱ魔導師相手に短剣一本はちょっと無理があったか。よく勝てたよな俺……不意打ち気味でかなり卑怯臭かったけど。

 でもまぁ俺、片足使えなかったし。そう考えればイーブンだし……いや、イーブンどころじゃないな。ハンデだ。俺はハンデを背負って戦ってたんだ! だとしたらあの勝ち方は全然卑怯なんかじゃなかった。うん、そうだ! 俺は卑怯なんかじゃない! ……そう思うようにしよう。


 ……にしても、この短剣すげーな。いったい何で出来てんだコレ? あんな黒い大玉を弾き返すなんて。今度母さんに聞いてみるか……次はいつ部屋から出てくるか分からんけど。


 「ふぅ……」

 

 今頃は人質にされた観客達を兄貴達が全員外に逃がしてる頃かな。取り合えずこれで俺の役目は終わりだな。


 「……さて」


 右足の痺れも少しとれてきたな……これなら歩くのに支障はなさそうだ。足の感覚も戻ってきた所で……。


 「お宝拝見……っと」


 白目を向いて地面に倒れ伏すムタに近より、ズボンのポケットに手を突っ込んで中を漁る。


 確か……右のポケットから取り出してたよな。え~と……おっ!


 「あったあった……コイツの魔導器」

 

 俺がテロリスト達の注意を引き付ける陽動役に志願したのには二つ理由がある。

 一つは作戦を開始する前に兄貴と栞奈に言った通り、二人に危険な役をやらせたくなかったから。そしてもう一つが……この魔導器だ。


 展示会場で一目見た時から気になってたんだ。この魔導器……やっぱり俺達が持っている魔導器と形が違う。というよりも既存の物を違法に改造している? それなら高出力で魔導器を連続で使えたのも頷ける。


 俺の知らないタイプの魔導器かと思って期待してたのに蓋を開けてみれば違法改造か。良い研究材料になるかと思ったけどコレじゃあなぁ……

 けどコレ、もしかしてコイツが自分で作ったのか? ……あんまりそんな器用な事が出来る面には見えないけど。


 「まぁ、どれだけ改造をした処で動力源の魔核を引っこ抜いちまえばただの…………」


 ムタが所持していた魔導器の前面をスライドさせ端末の中枢部を開放する。


 ――――えっ?


 「なんだ……“コレ”……」


 思わず口から意図せずして言葉が漏れる。

 魔導器の中枢部には当然のように魔核が填められてあった。それ事態は何の問題も無い。コレが無ければ魔導器は動かないのだから。

 ただ……その魔核は従来の物と違いとても異質だった。


 「黒い……魔核……?」


 魔核は本来、蒼の淡い光を放つ綺麗な石だ。魔導師や候補生、政府が保管しているのもコレだ。例外なんて無い。

 だがムタが所持していた魔導器に填められていた石は黒く濁り、不快な鈍い輝きを放つ気味の悪い石だった。


 なんだよコレ……黒い魔核が存在するなんて聞いたことがない。魔核って普通蒼い物じゃなかったのか?

 それにこの石……なんだか嫌な感じがする。この魔核を見ているだけで吐き気がしてくる。なんなんだこの感覚は?


 ……取り合えずこの魔核の事は後だ。今はこっちの作戦が完了した事を兄貴に伝えないと。


 霧夜に連絡を取る為、パーカーのポケットから魔導器を取り出そうと視線をふっと下に向ける。すると地面に影が写っていた。自分のものとは違う別の影。

 最初は破壊された天井にぶら下がる鉄骨か何かかと思ったがどうもおかしい。その影はシミが広がっていくようにどんどん大きくなっていくのだ。


 不思議に思った俺は振り返り視線を天井に向ける。


 「っ!?」


 その光景に思わず息を呑んだ。

 視界に飛び込んできたものはぶら下がっている鉄骨でもなければ落ちてきた瓦礫でもない。


 ――――人だ。

 白いロングコートを身に纏い、フードで顔を隠した人間が空から落ちてくる瞬間だった。

 それだけでもかなり衝撃的な光景だったが、俺はその白いコートの人間が両手に携えていた物に目を奪われていた。

 

 両手に携えていた物は刀。

 碧と蒼の鮮やかな色に染まった見事な刀身の弐刀だった。

 

 白いコートの人間は魅惑的な輝きを放つ弐刀を振りかぶり……そして俺の脳天目掛け振り下ろしてきた。

 


感想やこうした方が良いという意見などありましたらお待ちしています。


……あと気に入って頂けたらブクマをピッとお願いしますm(__)m

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