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黒の奇譚 ~夜王転生録~  作者: アメフラシ
第一章 黒廼家
2/9

第二話 落ち着かない買い物








まさか……街に来て一番最初にこんな所へ連れてこられるとは……



「ねぇヤト兄、こんなのどう? 似合う……?」



栞奈が手に持っているのは、ハンガーに掛かっている清楚な白いワンピースだった。

そのワンピースを自身の前にあて、嬉々とした表情で俺に問いかけてくる……が。



「えっ!? あ、ああうん……い、いいんじゃないか、な?」



栞奈には悪いが正直言って今、それに答える余裕はあまり無かった。



「んもう! ヤト兄ってば、ちゃんと真面目に選んでよね! ……って、なんでそんなに縮こまってんの?」

「いや、だって、お前この場所……完っ全に俺、場違いじゃん!?」



凪之市の中でいちばん人が賑わう繁華街。その一角にある洒落た雰囲気が漂うブティックの店内で、俺は栞奈の買い物に付き合った事を若干後悔していた。



この店は女性服を専門に扱っている洋服店。当然と言えば当然だが店員も含め店内にいるのは女性ばかり。どれだけ辺りを見回しても男性は一人もいない……多分俺達だけ。



……なんか居づらい

別に周りの人達の視線がこっちに集中している訳でもなければ、うしろ指を指されている訳でもない。



ただ……その……こう、女性ばかりの場所に居るのは、何て言うか……落ち着かないというか、恥ずかしいというか……なんだか晒し者にされた気分を感じる……



「そんなの気にしすぎだって。こういう所に男の人が居るの、別に珍しくもなんともないんだから。アタシの友達だって男の子と一緒に行くってよく聞くよ」

「……本当かよ、それ……」

「ホントだってば、クラスの男の子とか兄妹とかで来るし……あとはアタシ達みたいに二人で一緒に来たりとかする、その……か、彼氏みたいなの……とか……」

「それじゃあ今度来るときは俺じゃなくて、クラスの子か彼氏と来てくれ……俺にはこの店の雰囲気はちとキツすぎる……」

「……はぁぁ~……ああ、そう、そうですか、そうですよね。ヤト兄ってほんっっとブレないですよね……そんなヤト兄にアタシはさぁ、……ガッカリですよ……」



……何故っ!?



「……おい、そこの愚妹。お前、今さりげなく私をいない者として喋っていただろ」

「……ん~? なんだ、いたの霧夜?」

「一緒に店に入ってきただろうが! 私の事を忘れるんじゃない!」



……兄貴、声でかいって。頼むからあんま騒がないでくれよ……唯でさえ緊張して居づらい場所なんだからさぁ……



「ふん、まあいい。それよりも喜べ妹よ。お前に似合いそうな服を私が直々に選んできたぞ」

「……えぇ~」

「フッ、その明らかに期待していない反応、それはすでに想定済みよ。だがこの服を見ればきっと驚き、必ずや気に入るであろう……さぁ刮目せよ!」



声高らかに霧夜は後ろに隠していた物を俺達に見せる。



「なっ!? ちょ、なによこれっ!?」

「ブッ!?」



霧夜が持ってきた物を見た瞬間、俺は思わず吹き出してしまった。

霧夜が持ってきたものは服ではなく下着だった……それも本来、隠すべき場所を隠しきれていない殆ど紐のような下着だった。



パネェ……こんなのまで有るなんて、最近のブティックはパネェわ~。ってかそれを平然と持ってくる兄貴、引くわ~。



「あ、ああ、あ、アンタ、バカじゃないのっ!? あ、アタシは、服を見にきてんよ、下着じゃなくてっ! し、しかも、なんでそんな……その……ま、丸見えなやつを持ってきてんのよっ!?」

「まぁ落ち着け妹よ。これはだな、お前に圧倒的に足りていないものを補う至高の逸品なのだぞ」

「な、なによ……アタシに足りないものって……」

「お前に足りないもの……ズバリッ、女性としての『色気』だっ! これは着ればどんな女性でも色気を十二分に引き出す事が出来るという優れ物なのだ……お前のその貧相なものでもな」

「……? アンタ、どこ見て……」



霧夜の視線は向かい合っている栞奈の顔ではなく、それよりも少し下の方に向けられていた。

霧夜が向けている視線の先。栞奈がその場所を見ると……



「……っ!? だぁれが貧乳だぁああああっ!」



……一瞬。それは本当にほんの一瞬の出来事だった。

霧夜が見ていたのが自身の胸部だということに気づいた栞奈は、目にも止まらぬ速さで霧夜の腹部に強烈なボディーアッパーを繰り出していたのだ。



「グボォァァ!?」



店内に響くサンドバッグを強く打ち付けたような重い音。

霧夜は膝から崩れ落ちるように力無く、ゆっくりと倒れていった。



床に『く』の字で横たわり白目を向いている霧夜。先の惨状を見ていた俺は心底震え上がっていた。



やべぇ……今の一撃やべぇよ……

だって浮いたもん。打たれた時、兄貴一瞬だけど宙に浮いてもん……アレ、確実に痛いっていうレベル越えてるよ……



「アンタねぇ……言うに事欠いて、人が一番気にしていることをズケズケとぉ……誰の胸が平坦だって? 誰の胸が更地だってぇええ!?」



いや、何もそこまでは言ってない……ってか涙目になんなよ。



「くっ、せっかくお前の為に、良かれと思って持ってきたというのにこの仕打ち……鬼か貴様は!」

「何がお前の為よっ! 絶対に面白半分で持ってきただけでしょうが! 大体アンタが選ぶものなんてね、全部ろくなものじゃないんだから……最初っからアテにしてないのよ、アンタなんてっ!」

「貴様ぁ……それが実の兄に対する言い方か、この愚妹が!」



二人の罵声が店の中を飛び交う。

店内にいる客や店員達が何事か、といった様子で騒ぎの中心である二人に皆の視線が集中する。



ああ、周りの人達の視線が痛い。

これだけ騒がしくしてれば流石に注目されちゃいますよね、そうですよね……頼むから静かにしてくれ!



「なによバカ霧夜、アンタやる気!? だったらもう一回床に沈めてあげるけど!」

「図に乗るなよこの愚妹が……泣きを見るのは貴様の方だ!」

「やめて! もうやめて! お願いだからもうやめてーー!」




◇◇◇




「あ~もう、疲れた~。霧夜のせいで余計に疲れちゃったじゃないのよ~」

「それはお前が店の中で暴れたからだろ、決して私に責などない。逆にお前に喧嘩を吹っ掛けられた私の疲労の方が、お前よりも遥かに蓄積しているに決まっているだろ」

「……はぁ~……」



……まだ言ってるよ、この二人。



俺達は今、ブティックがあった繁華街から少し離れた場所にある高いビルが無数に建ち並ぶ電気街通りを歩いていた。



あの騒ぎのせいで俺達は店に居づらくなり、適当に買い物を済ませそそくさと逃げるように店を後にした。



帰り際に女性店員が『またのお越しをお待ちしております』と言って笑顔で俺達を見送ってくれはしたが……



店員さんの笑顔……すっごいひきつってたな。こめかみも何だかヒクついてたし……あの店もう行けないかも……



「あ~あ、あの店お気に入りだったのに……霧夜のせいでちょっと行きづらくなっちゃったなぁ」



えぇ~、ちょっとなの? あれだけ騒いどいてちょっと行きづらくなった程度なの? 俺だったらもう二度とあの店には行けねぇよ……?



「まぁいっか。さてと、次は何処にいこっかな~」

「せっかく電気街まで来たのだからな、少しこの辺りを探索するのもいいのではないか?」

「う~ん……それも有りっちゃ有りかな。あんまりここらへん来たことないし……新規開拓してみるのもいいかもね」

「ならば私が案内しよう。この辺は来慣れていて私にとっては庭みたいなものだからな」

「あ、ホント? じゃあ頼んじゃおっかな~」



あれだけブティックで口論していたのに、今じゃ普通に話をしてる。



……なんだかんだ言ってあの二人仲良いな……あれが喧嘩するほど、ってやつなのかな。普段からこれくらい仲が良ければいいのに。



次に行く場所を何処にするか話し合いながら、歩行者天国と化した人通りの多い休日の電気街通りを悠々と歩く霧夜と栞奈。

そんな二人の背中を眺めながら俺は、二人の後をのんびりとついていく。



『――次のニュースです。本日の午前十一時時から凪之市のターミナル駅にて開催されております、羽柴グループが開発した新型魔導列車の一般展示会場の様子をお伝えします』



不意に頭上から聞こえてきた機械音を伴った女性の声。

上を見上げるとビルの五階部分に設置された街頭ビジョンにニュースが流れていた。



いつもはテレビドラマや映画の宣伝ムービー、新作ミュージックのPV等が頻繁に流れる街頭ビジョンにニュースが放送されているのは珍しいことだった。



あまりにも珍しかったので俺はつい足を止め、二人についていくのを忘れて街頭ビジョンに見入ってしまう。



『今回、日本延いては世界初となる水陸両用魔導列車の御披露目ということもあり、各国の製造メーカー関係者の方々が会場であるターミナル駅に続々と集まって来ている模様です――――また、午後十四時からは羽柴グループの会長、羽柴 宗一朗(はしば そういちろう)氏が新型魔導列車説明の為、会場に姿を現すそうです』



新型魔導列車の一般公開……そういえば学校でクラスの連中がそんな話をしてたっけ……そうか、今日がその日か。



「なにしてんのヤト兄……ん? アレって……そっか、そういえば今日だっけ、新型の御披露目」

「ああ、そうみたいだ。すっかり忘れてたな」

「今度のは海も走れちゃうんでしょ。凄いよね……『魔導機関』様々って感じ」

「ああ……そうだな」



『魔導機関』

この世界の在り方を変えたその技術が台頭したのは、もう随分と昔の事になる。



『魔核』という特殊な力を秘めた鉱石を『魔導器』と呼ばれる機械媒体に設置してあらゆる現象を引き起こす新技術。



それは無から有を生み出す奇跡に近い現象だった。

様々な現象を発現させるその技術は、国に保管されていた古い文献に記されていた過去に実在していたといわれる『魔導師』が操る失われた呪法『禁術』。それにとても酷似していた為、政府の科学技術部は魔導師から名前を取り、『魔導機関』と名付けられた。



今や魔導機関は世界共通の科学技術となり、世界各国で魔導機関の研究が行われている。

それはここ日本も例外じゃない。魔導機関の研究、開発、そして運用の為の区域が各地に設けられている。



北陸、関西、四国等にその区域が設けられ、その場所は『魔導特区』と呼ばれていて、俺達が住むこの街もその一つだった。



関東魔導特区『凪之市』

この海辺にある巨大な街は、魔導機関という技術が発達してできた新興都市だった。



「そんな事よりさヤト兄、早く次の場所に行こっ」

「次って……何処に行くのか決めたのか?」

「うん。とりあえず霧夜がよく行く店があるからそこに案内するってさ」

「………………えっ」



兄貴がよく行く店って……まさか。



「どうしたんだ夜斗君? 急に立ち止まったりして……妹が気づかなかったら置いていってしまっていたぞ?」

「……なぁ兄貴。これから行く兄貴のよく行く店ってさ、もしかして……あの店?」

「流石は夜斗君、ご明察だ。そろそろ新しいブツが入荷している筈だからな。店主に顔を見せるついでに、いくつか購入しようと思ってね」

「いや……けどさ、今日は栞奈もいるわけだし……」

「何事も経験だよ、夜斗君。なぁに、これも社会勉強の一環だ」



社会勉強って……もう、どうなっても知らんからな俺は……



「……? ねぇ、何の話?」

「……最初に言っておくぞ栞奈。これから行く店は兄貴の付き添いで行ったことがあるだけで、俺は利用したことは一度もないからな……それだけは忘れないでくれ」

「なにそれ?」



……栞奈には少し刺激が強いかもしれないな。果たしてあそこに行っていつも通りでいられるのかどうか……



◇◇◇



霧夜の案内のもとたどり着いた店に入るやいなや栞奈は慌てふためきだした。



「なっ、なっ、なにっ!? っていうか、えっ、えっ? ここってあの……ちょ、えぇええええっ!?」



……そりゃあそうだよな、普通女の子一人でこんなところに来ることなんてないもんなぁ……エロゲーショップなんて。



「やっ、やややや、ヤト兄、この壁に貼ってある絵とか、棚に並んでるのって……もしかして、全部……!」

「18歳未満は購入が禁止されている成人向けコンピューターゲームのソフトとその絵だな。他にもアダルトゲームっていう呼び方もあるけど」



店の壁一面に貼られているポスターと陳列棚にズラリと並べられているゲームのパッケージ、そのどれもに際どい格好をした女の子の絵が描かれていた。

そして絵の下には作品のタイトルであろう題名が書かれているのだが……どれもこれもが刺激の強すぎるタイトルばかりだった。



「つまり……これって全部、その、えっ、エッチなゲームってこと……!?」

「正解」

「ええっ!?」



……こりゃまた、見事に顔が真っ赤だな。



「五月蝿いぞ愚妹、自重しろ……気が散って仕方ないではないか」

「ね、ねぇ霧夜、もう十分みたでしょ……そろそろ次に行かない……というかもう行こ!」

「今はまだ吟味中だ、もう少し待て」



棚に並べられた商品を左から右へゆっくりと視線を動かして品定めしていく霧夜。その表情は真剣そのものだ。



こういう時の兄貴はすげぇ集中してるからな……何を言っても無駄だもんな



「あ、アタシ、お腹空いちゃったなぁ~! もうお昼時だしさ……どっかご飯食べに行こうよ……?」

「……昼食か」



おっ? 意外にも食いついてきたな、珍しい……



「確かに言われてみれば空腹を感じるな……わかった。この辺りで一時中断し、食事にしよう」

「……! じゃ、じゃあさ駅前に新しく出来た洋食屋に行こうよ! そこのオムライスがすっごく美味しいって評判でさ! そうと決まったらさっそく……」

「その前に……少し気になる物を見つけてな。買おうかどうか非常に悩んでいる物があるのだが……ちょっと見てもらえないか?」

「へっ!? な、なんでアタシが……!」

「まぁそう身構えるな、ただ見てもらうだけの事だ」



そう言って霧夜は棚に置かれていたパッケージをひとつ手に取り、それを栞奈の前に差し出す。



「さぁ妹よ。これを見てくれ……どう思う?」

「どうって…………………………っ!?」



……なんだ? 栞奈の奴、急に固まっちまったぞ? 兄貴、いったいどんなタイトルの物を栞奈に渡し――



『妹パラダイス! お兄ちゃん、私の初めてを――』



ってアウトォォォ! これアウトォォォ!

よりにもよって実の妹になんてもん見せてんだなアンタはっ!



「~~~~~~~~~~~~っ!」

「ん? どうした妹よ。黙っていては何もわからんぞ。これを買うべきかどうか、遠慮せずにお前の意見をこの兄に教えておくれ。さぁ……さぁ!」



……楽しんでる。この人めっちゃ楽しんでる。悪い顔ですっげぇニヤニヤしてるし。



「………ふわぁ」

「ちょ、栞奈!?」



急に顔を真っ赤にして倒れやがった!? 危ねぇ……ギリギリ押さえんのが間に合ったけどこれ……目ぇ回してるし、ちょっとヤバイんじゃないか!?



「お、おい栞奈!? 大丈夫か!? おい、しっかりしろって!」

「この程度の事で卒倒するとはな……フッ、お前もまだまだだな。修行がたりんな、妹よ。はっはっは」

「どんな修行だよっ!? ってか笑ってないで手ぇ貸せよっ!」

「……ふわぁ……」




◇◇◇




「……どうだ? 落ちついたか、栞奈……?」

「……うん……なんとか」



電気街から少し離れた場所にある凪之市の駅。その駅前に昭和の香り漂うレトロな喫茶店を彷彿とさせる内装の洋食屋が店を構えていた。



ショップを急いで出た俺達は、倒れた栞奈を何処で休ませようか頭を悩ませていた時に、栞奈が話していた駅前に出来た新しい洋食屋の事を思いだした。

街を歩く人々の視線に晒されながら、迷惑だとは思ったがその洋食屋にさながら駆け込み寺に逃げ込むかの様に入店した。



栞奈は店に入って少ししてから気がついた。

まだ気が動転していた栞奈は最初に出されたグラスに入った水を五杯ほど一気に飲みほし、ようやく落ちつきを取り戻していた。



「妹よ、よぉく夜斗君に感謝しろよ。無様にも倒れたお前を一人でこの洋食屋まで運んでくれたのだぞ……お姫様抱っこでな」

「お、お姫様抱っこ……!?」

「いや違うから、普通に背負って此処まで運んだから……」



人の多い街中でそんな恥ずかしいことするわけないだろ……



「そ、そっか……あの……ごめんねヤト兄、その……迷惑かけちゃって」

「ん? ああ……いいって別に、そんな気にしなくて」

「……でも」



栞奈の表情はとても曇っていて、本当に申し訳なさそうにしている様子だった。



「だから気にすんなって。これぐらいの事、迷惑だなんて微塵も思ってないしさ……それよりも」

「わっ……!?」



俺は隣でしょぼくれた表情を浮かべている栞奈の頭の上にポンっと手をおいた。



「何時までもそんな暗い顔してんなって。栞奈がそんなだとさ、なんかこっちまで調子が狂うんだよ……だから余計な心配なんかしないで、お前はいつも通り明るく振る舞ってれば良いんだよ……な?」

「……うん……ありがとう、ヤト兄……」



おっ、笑ってる。

なんとか持ち直してくれたみたいだな。何よりだ……



「……で? 君達はいつまでそうしているつもりなのかな?」

「っ!?」



霧夜の言葉を受け、ハッとした表情を浮かべた栞奈は俺から即座に距離をとる。

テーブル席の窓側に座っていた栞奈は、廊下側に座っていた俺から逃げるように席の奥の方まで離れていった。



……ああ、そういえば朝、気安く頭を触るなって言われたばかりだっけか。

また怒らせちったか……だけどそんな露骨に拒否反応を見せなくてもいいのにな……



「さて、昼食はこの店で食べるとして……その後、午後からの行動を今のうちに決めておいたほうがいいと思うのだが……次に行く場所は決めているのか、妹よ?」



これからの行動予定を栞奈に尋ねる霧夜。だが当の本人は何故か上の空で話を全く聞いていない様子だった。



「……聞いているのか、妹よ?」

「へっ!? あ、う、うん、そうねっ! 決めるなら今のうちのほうが良いよね、今のうちがねっ!」



尋ねた事とは全く別の返答が返ってきた事に対し霧夜は呆れた表情を浮かべている。



「……お前、私の話を全く聞いていないだろ? 次は何処に行くかという話をしているのだぞ……」

「えっ!? あ、そうそう! 次ね、次っ、次の話ねっ! う~んと……次はねぇ……」



ちゃんと聞いてなかったな、これ……



「う~ん……あっ! ねぇヤト兄、どっか行ってみたい場所ってある?」

「えっ?」



……俺の行ってみたい場所? なんで俺?



「午前中はアタシと霧夜の行きたい所ばかり廻ってたでしょ。だから今度はヤト兄の番かなーって」

「なるほどな、確かに私達ばかり休日を満喫するのはフェアじゃないな……珍しく気が利くじゃないか。褒めてやるぞ、妹」

「……一言余計だし、アンタに褒められても嬉しくないわよ。ねぇヤト兄どこか行きたい所ない?」

「行きたい所って……」



その気持ちは嬉しいけど……急に言われてもな。今日は付き添いだけのつもりで来てたからな……ん~行きたい所か……あっ



「えっ、と……行きたい所って言うか……ちょっと見ておきたいのがあるんだけど……」

「……フム、なんだいそれは?」

「それは…………」








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