時間
時間は誰にでも与えられているけれど
皆
同じ密度
同じ深さ
同じ濃さではない
僕は一欠けらの時間を手にとって
ペロッとめくり
中をそーっと覗いてみる
ある人はどこかに行くために身支度をしていて
またある人は親に叱られて口をへの字に曲げている
もっと目を凝らしてジーッと見てみる
ある人は買ったばかりの新車の鍵をなくしてしまって、必死な形相でポケットをまさぐっている
またある人は誰かの顔を思い浮かべながら、鼻歌と共にフライパンを軽やかに動かしている
一瞬は人それぞれに訪れるが
一瞬の出来事は人それぞれ違っている
人は同じ時計を共有している
時計の針がカチッと傾いたとき
人は人と共存していると感じることのできる一瞬だ