勇者vs世界?
俺は10年前に魔王を倒した
あの時の俺は10歳でやたら魔法などが好きだった
剣もちゃんと使えていた
仲間たちが暖かかった
楽しかった
一日一日が楽しくてしょうがなかった
平凡な学校生活が嫌いになっていく俺もいた
でも変わった
魔王を倒してすべてが変わった
俺は魔王の力を手に入れて元の世界に帰ったが・・・
なにもかもが駄目だった
魔法は駄目。剣は駄目。敵を倒すのもだめ。
あんだけ修行もしたのに使い道がなかった
でも、俺は見つけた
あっちの世界で楽しいことを・・・
「関わらないと今回は駄目なんです」
「おいおい。確かに魔王は強いかもしれないけどがんばればいけるだろ?」
「無理です。限界がありますし・・・なにより、仲間がいません」
「いない?いるにはいるだろ?一応町の気配も感じるぞ?」
「ええ、だけどみんな魔王を倒そうとしません。いや、逆に魔王を守ろうとします」
「・・・ちょっとまてどういう―――」
そう言いかけて止まった
そうだ
確かにこんなにのどかな世界にしたんだ
魔王は・・・
そんないいやつをたおそうなんて思うやつはいない
「わかりましたか?」
「ああ、でもなら倒さなくていいんじゃないか?」
「いや、倒さないといけません。言いましたよね?10年で変わると・・・」
「ああいったな」
「倒さなくても10年で絶対変わります。だけど、変わった後の元魔王は何をします?」
「あっ」
「そうです。自由になってなんでもできます。世界を征服することだって簡単です」
「・・・でも勇者がいる。いや、勇者もか」
「ええ、知っているでしょう?勇者も10年で変わります。そして、勇者は魔王を倒す力をなくします」
「そうなると、弱い勇者が2体相手しないといけないのか」
「・・・そして、どんどん増えて行ったら終わりですよ」
案外深刻なものだ
魔王が一体だけでもめんどうなのに複数になるのはいやだな
しかも今回のは12倍の強さ
倒すのは骨が折れるし、今の勇者は・・・
仲間もいないし、修行をつけるのもいないかもしれない
・・・仕方ないな
「わかったよ。アルバイトしてやるよ」
「いいのですか?」
「ああ、たかだか魔王を倒すぐらいまで強くすればいいんだろ?」
「そ、そうですけど簡単なことじゃありませんよ?」
「わかってるよ。強くなるのがどれくらい大変なことぐらいはな」
「そうですか。安心しました」
「そうか。安心したか。なら・・・死ね」
「!!?」
俺は唐突なことを言う
まあ、そりゃなあ
俺に殺気を当てている奴をずっと仲間として扱うのは無理だ
「気づかないとでも思うか?あの家に入る前から気づいていたよ。お前の殺気にはな」
「そうですか。気づいていましたか・・・でもなんでここに連れてくるまでおとなしく?」
「お前が精霊だっていうのは本当だろうな。でも、精霊界の追放も本当」
「・・・どこまであなたは見ているのですか?」
「勇者ってさ魔王倒したら次に何をすると思う?」
「そりゃ王様とかじゃないのですか?」
「大方は合っている。でもなちょっと違うんだよ」
「何が違うんですか?」
「勇者は・・・魔王を倒したらもうただの人間になるんだよ。誰も敵じゃない幸せなただの人間にな」
「へえ、確かにそうかもしれませんねでもそれとこれとで話は違うんじゃないですか?」
「でだ。前の勇者は・・・いや、俺はそれを拒んだ。どうやったかわかるか?」
「さあ?神様にでも勇者の力を残してくださいとでも言ったのですか?」
「ハズレだ。正解はな・・・俺が勇者で俺が魔王なんだよ」
「・・・はぁ?何言ってるんですか?そんなことがあるわけないでしょ?しかも今の魔王はちゃんといます―――!まさか!!」
「そうだよ・・・俺が前勇者で前魔王だ」