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六、王子様と踊らされた弱虫 ②


 一度話を中断し、シンとキフィ、サイモンで縛り上げた四人を館の地下牢に放り込む。


 目隠しをした彼らのシンが記憶を抜き取ったのを確認する。


 シンのせいで怪我をした男達を治療すると言いサイモンは帰って言った。相変わらず少し意地悪な言い方だった。


「こんなに少ない人数だったなら本当は必要は無かったんだ。昔の大規模なものに比べたらなんでもない…」


 キフィは寂しそうに笑った。


「でも、俺が“生きてる”うちにオリビアや皆に会いたいと思っていたんだ。それにお前もこの村へ向わせたしな」


「そんな…」


 真剣な顔に言葉を紡ごうとするが遮られる。


「まー、俺様のことだから長生きして、あと何十回でも会えるけどぉ」


 おちゃらけたように笑ってシンにいつもの親友の目を向ける。でも、その中に先ほど覗かせた兄の顔も含まれていた気がする。いつもキフィは自分のこともそんな風にみていたのだろうか。


 館の中にはいつもこんなに大人が居たのかと思うほどの人が居た。広間に集まりキフィの姿を見ると嬉しそうに皆、頬を緩ませた。

 軽く偉そうな数人と言葉を交わすとさっさと踵を返して戻ってくる。


 キフィは、オリビアが住んでいる家に行きたいと言った。

 その言葉を誰も止めることなんてしなかった。


「はぁー。やっぱりこっちが落ち着くなぁ」


 館の椅子に比べたら天地の差ほどあるくたびれてガタガタのテーブルの椅子に腰掛けて、キフィは呟いた。

 懐かしむようにテーブルの角を優しく撫でている。


「どうして、オリビアはあっちに住まないの? あっちのほうがふかふかでしょベッドとか」 


 シンはそれを横目に尋ねた。


「…寂しいから。お兄ちゃんともここに住んでたし。昔は、沢山の人が館に住んでいたのに自分が独りぼっちなのが余計にわかる」


 オリビアがお茶を入れながら薄く笑った。


 キフィとシン、ラビの分を注ぐと皆にカップを差し出す。

 ラビは家で留守番を言い渡されていた為、帰ってきた大人たちを見て喜んだのは言うまでも無い。

 特にキフィを見たときの反応は凄かった。

 おくびにも出さないけど、きっと一人で怖い思いをしていたのではないだろうか。


「あ、ラビも能力者なんだろう? クレイ一族なら」


 シンに言われ、ラビはキフィの横で上機嫌に言った。


「僕は、アマゴイなんだ。いつもこの村に雨を連れて来る」


「おっ、ラビの能力はそれかぁ。いつの間にか大きくなっちゃって昔はこんなだったのにな」


 かなり狭い幅に腕を広げてサイズを示していて、シンは心の中でそれはないだろッと突っ込んでいた。

 キフィがラビの頭をわしわしと撫でる。

 ラビの嬉しくてたまらない様子に、子供らしい顔をラビが持っている事を知る。


 ちらりと隣に座るオリビアを見ると聞いてみた。


「じゃあ、オリビアは? 僕、聞きたい事あってさ、オリビアが作る料理には味があるんだよね」


「何言ってんの、シン。当たり前でしょ」


 ラビが馬鹿にしたように言う。


「シンが言っているのは、記憶が在るって事だよ。シンも能力者なんだ」


「えぇ? シンが能力者なの? 信じられない! どういった神様の悪戯なわけ?」


 ラビが興味津々に身体を乗り出す。


「信じられないって…。」


 幼い子供辛辣な批評に少なからずショックを受けながら、


「それで、オリビアは?」


 シンが、尋ねるとオリビアが頷く。 


「アトヨミの能力者…最初のシン拾ったときに、シンの意識揺らいでたから読んでしまって。私、能力がまだ不安定なの」


「読んだって? 何を?」


 仕事の関係上、シンの意識のガードは他の能力者よりかなり固いはずだ。それに軍の隠蔽している情報にかなり関わる。


「ちょこっと。キフィと話しているとことか」


「…そこ、俺わざと読ませようと思って言って置いた部分だなっ! やっぱり俺の妹だ」


「はぁ~?」


 とりあえず変なところを読んではないようだったが、この兄妹は自分の知らないところで何してるんだ。



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