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五、弱虫の意地 ①

  

 シンは、白い上着と手袋を着て家から出てばれないように広場へ向かった。(これでも元諜報部なんだ)ここのところ外へは出ていなかったため新鮮に感じる。


 広場には多くの村民が集まっていた。

 しかし、どうして集めたりするのだろう。無防備な村人は本来ならば家から出させない方が安全だろうに。


 人々を横目に村の出口へと歩く。

 かやの外なら、自分の目で確かめてみるしかない。

 自分の力で解決できるのならば、それでいい。


 最初の日にオリビアの後について歩いた通りを、今日はひとり逆に歩いてゆく。

 しかし、学校といわれた建物を通り過ぎたところで病院から人が出てくる。全ての人が広場に集まっていると思ったが計算違いだ。


 病院から出てきた人物は、シンを見止めると不敵に笑う。


「ははん。やっぱりお前ぇさんが、原因かい?」


 そう言ったのは、医師サイモンだった。


「…分からないから、確かめに行くんです」


 シンは、そう告げる。


「確かめる? 逃げるの間違いじゃないのかい?」


 シンは、ため息を吐く。

 こんな事をしている場合じゃないのに。


「僕は、確かに軍の人間でした。けれど、もう僕は軍の人間じゃない」


「つまり、脱走してきたって事か?」


 意外そうに尋ね返す。


「…そうです。だから、僕を追ってきたのなら、僕が相手になればいい」


「追ってもらえる自信があるのか。…そうすると、必然的に幹部か」


 目線を逸らすシンに、サイモンは近づきながら笑う。


「行けばいいさ。まぁ、お前ぇさんがどんな能力者かは知らないがね」


 すれ違いざまに背中を思いっきりばしばし叩かれる。


「…なんで、分かったんだろう?」


 ひりひりする背中に、言い訳のように呟いてシンは走り出す。





 門の前には、二人の男が立っていてシンを見ると駆け寄ってくる。


「お前、やっぱり外から来たスパイだったんだな!」


「いや…」


 説明しようとするシンに対して、聞く耳を持たない男達は捕まえようと襲いかかって来る。


「違うってば!」


 否定の言葉と同時に抵抗して出した右肘で、思いっきり一人の男の後頭部を殴ってしまった。男が地面に落ちる。


「何が、違うって!? 逃げる気なんだろう! 相方をこんなにしやがって!」


「わわわっ! ごめん! でも本当に違うんだよ」


 もう一人の男もシンにつかみかかろうとする。

 門の前で揉みあっている内に、引っかき傷が沢山できてくる。

 どう考えてもシンは取っ組みあいの喧嘩が苦手で不利だ。しかし、


 ―――っごん!!


 派手に鳴ったこの音で決着はついた。

 シンの後頭部が門の扉に思いっきりぶつかり、男の顔面がシンの膝にぶつかっている。同時にこけてしまった事で起きた惨劇。


「ってて、またこけちゃった。タンコブ増えちゃったよ。あ、大丈夫?」


 痛みには何かと慣れっこだ。


 鼻血を見事に()いた男に律儀に声を掛ける。

 フラフラながらも二人とも意識があるのを確認して、勝手に門の扉を押し開く。


「僕が出たら、鼻血君がすぐに鍵を閉めてね」


 僅かな隙間に身体を捻じ込みながらそういい残してシンは門の外に消えた。



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