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Silent rage  潜伏   作者: しゅんたろう
8/20

VIII. ネットと群衆 The Mob


午後、病院外で「感染者を射殺しろ」と叫ぶデモ隊が発生。SNSで拡散された動画が原因だった。


動画の内容は、暴走した感染者がバス内で乗客を噛み殺したという過激なもの。だがその出所は不明。


「#感染者は人間じゃない」「#排除が最善」といったハッシュタグがトレンド入りし、病院外にはモロトフカクテル(火炎瓶)を持った若者が集まり始めた。


警備隊が包囲網を敷く中、病院スタッフは窓に遮蔽板を打ち付ける。


祐は、南雲の入る隔離室を見つめた。


「この子が明日、“暴れるかもしれない”からって、今日、命を奪っていい理由にはならない……」


群衆の暴動とアンドロイドの起動


夕刻17時12分。新宿総合病院・正門前のフェンスが破られた。

爆竹、鉄パイプ、モロトフカクテル(火炎瓶)――混乱の匂いが、熱と煙とともに立ち上る。


「病院を焼き払え!」「感染者に正義を!」


怒声の波に押し出されるように、群衆が駐車場へと雪崩れ込む。

その中で、誰かが見た――身の丈180センチの銀色のヒューマノイドが、門扉の前に静かに立つ姿を。


それは、まるで都市警備用に設計された警察型アンドロイドのように見えたが、違った。軍事用に開発されたものではあるが、満としては、そう思われるのは全く本意ではない。


あくまでも”正義のヒーロー”ですよと主張するように、満の趣味が反映されたbodyを持っていた。


——柊満の“外殻”のひとつ。重装型ヒューマノイド 通称 ”A-ZULUS” は、

"Tony" Starkこと満よろしく、古のペパーバックコミック マー〇ルのヒーロー、アイ〇ンマンそのものの色形をしていた。


ALSで全身麻痺となった満は、自宅のVRブースから、複数のアンドロイドと接続し、まるで自身の分身のように遠隔活動を行っていた。接続環境が悪化した時に備え、補助AIが組み込まれ、stand aloneで活動することもできる。


病院敷地内に点在する複数の遠隔端末群――戦闘用の実働アンドロイド、対話型ヒューマノイド、そして犬や猫の姿をした本物そっくりのアニマトロニクスたちは、すべて彼の“手足”である。


それらはすべて、満と俊介の父が会長を務める丸菱重工業が携わった極秘プロトタイプ群。

満はそのシステムを改修・拡張し、感染症医としての活動だけでなく、こうした緊急時に“現場に立つこと”をも可能にしていた。


俊介は端末の操作パネルを開き、短く呟いた。


「起動CODE: LOGOS-EXE」


その瞬間、門前に立つアンドロイドの眼球が青白く発光し、群衆に向けて重低音のような警告音を発した。


「警告。これ以上の侵入行動は物理的排除対象と見なす。後退せよ」


叫び声が返答となる。煽られた若者が鉄パイプを振り上げ、走り出す。

その瞬間、アンドロイドが一歩踏み出し、関節部から滑らかに展開されたラバーシールドで直撃。

若者の体が浮き、病院の外壁へと吹き飛ばされる。


続いて電磁衝撃波によるエリア制圧機能、局所催涙ガス噴射。

逃げ惑う者、撮影をやめない者、動けず蹲る者。それは、アイ〇ンマンの時代よりはるかに進んだテクノロジーをもつアンドロイドであった。


だが、誰一人として気づかない。

この無表情の機械が、ベッドに拘束された重度ALS患者――天才感染症医・柊満の“盾”として、遠隔操作されていることに。


医師の知性と軍事技術の結晶は、今や人類の危機に、静かに立ちはだかっていた。


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