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花束 ③

開いて下さりありがとうございます!


短編「私の10年を返していただきます」の付随作品です。短編の方を先に読んでいただければ、より楽しく読んでいただけると思います。

 自室へ戻ったリリーフィアは直ぐにカインへ手紙の返事を書き始めた。


 10年間、ご機嫌を損ねない為に顔色ばかり伺ってきた。嬉しい事も、嫌な事も……全部知っている。それだけ、苦しんできたのだから。


 Dear カイン様

 こちらは慌ただしい日々を過ごしております。

 毎日カイン様の事を想っては、相応しい婚約者になろうと邁進しております。あと2日、会えないのがとても辛いです。

 From リリーフィア


(あなたを調子に乗らせる方法も、全部知ってるもの)


 封を閉じたリリーフィアは、隣の部屋にいる侍女へ明日の早朝直ぐに送るよう頼んだ。忌々しい相手への手紙()を手元に置いておいては、誤って破り捨てかねない。


 そして翌朝、いつもより早くに出勤したリリーフィアはハロルドの後をバレないように追った。

 ここへ来てから3日に1度の頻度でハロルドはだれに告げることなく、経済部から出ていく。

 同僚の人に聞いても、つい1か月前までは出歩く事すらなかったそうだ。


 初めは不思議に思う程度でなんとも思わなかったが、疑惑が重なり過ぎている。


 ひとつはカインへの手紙でアーマルド侯爵家は新たな金儲けの道が出来たらしいがアーマルド侯爵卿の性格上、確定された金儲けにしか動かないがこんなにも早期に動き始めたこと。

 ふたつ、タイミングよくドルファン伯爵家の新事業に王家御用達の印がついたこと。


 何よりもおかしいのは、今まで信頼していたカインをあんな婚約者と呼んだこと。


 どれもが偶然と言うにはおかしすぎる。今までは特段調べる気はなかったが、この偶然がカインへの復讐の足がかりになるとするならば、いくらでも暴いて見せる。


 ハロルドは人気のない階にある一室へ入って行った。この部屋は過去の書類が敷き詰められているだけのはずだ。


 ハロルドが入った事を確認すると、リリーフィアは僅かに扉を開け、耳をすました。


 ◇◇


「既に納められた税の額が違いますね……」

「こんなに早く動くなんて……手を出すのも隠すのもバレバレでもはやおかしいですよ」

「あとは婚約破棄を突きつけるタイミングですな。リリーフィアの様子を見てからまたお話します」


 テオドールとハロルドは帳面を見つめ、苦笑いを零した。


「ほうほう……それでその証拠はいつ出すんですか?」

「時期はまだ見送っておきたいところですな。1番調子ずいている時に出すのが1番なんだが……ってリリーフィア!?」


 さりげなく会話に混ざってきたリリーフィアに2人は目を丸くした。態々奥から座椅子をひとつ持ってきており、初めからいたような顔つきである。


 2人は慌てふためきこれは演劇の内容だとか、知人の相談事なんだとか口走っていたが言い訳なのは目に見えている。

 リリーフィアはため息を吐くと、真剣な目付きで2人を見つめた。


「私に関係ある事、それも1歩間違えれば大切な人が落ちる可能性がある事を、私のせいなのに私が知らないのは絶対に嫌です」

「リリーフィア……」

「私の事はしっかり私が責任を取りたい」


 リリーフィアは少し落ち込んで見えるテオドールを見つめ、


「私の一番、大切な人くらい守らせてください。もうただ守られてばかりの落ちこぼれは嫌です」


 そう言っては何かを噛み締めるように微笑んだ。


「では!計画を見つめ直すとしましょう!」

30話程度で完結予定です。


次話は

今までの悩みが晴れるお話です。


お時間がありましたら

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