花の選択 ①
開いて下さりありがとうございます!
短編「私の10年を返していただきます」の付随作品です。短編の方を先に読んでいただければ、より楽しく読んでいただけると思います。
「まぁあの子がそんな事を?今の立場上、最後まで言えないのも分かりますが……意気地無いところはあの人そっくりだわ」
王妃殿下にある日のテオドールとの会話で起きた疑問を話すと、アメリア同様、意味深な笑みを浮かべられた。
意気地無いという意味はよく分からないが、笑えない内容にリリーフィアは苦笑いを零す。
「話の真意は置いておくとして……今日はインターシップの折り返し。小テストをしましょうか」
王妃殿下の言葉を封切りに雰囲気は一気に厳かになり、今までの復習兼小テストが始まった。
アメリアから始まった淑女教育のテストは満点を出す程の素晴らしさがあり歩いているだけで目を惹き付けられる何かがある。
女の自分でも思わず惚れてしまいそうなくらい品があって美しい。
それに対する王妃殿下の意見も的を得ており、2人が並べば1級品の絵画にも勝るだろう。アメリアが見せる頷く時の伏せた目元や髪を耳にかける仕草……名前の通り、まるで薔薇のようだ。
「では次リリーフィア、お願いします。自己紹介からいきましょうか」
見とれている間に順番は周り、リリーフィアは素っ頓狂な声を出しながら立ち上がった。緊張が不安を上回り、普通に歩くだけでもおかしくなっていると自分でもよく分かる。
リリーフィアは一度立ち止まると、大きく息を吸った。
(アメリア様と同じ……にはいかないとしても)
『お前はそんなに今いる環境がそんな惨めなのかよ』
(イレット様、あの時は上手く言葉にできませんでしたが、私は誇りに思っています。この様な素晴らしい場所に立てる事、認めて貰える事……それこそ夢のように感じるんです)
『あなたを認めてくれた人達の目が悪いって言ってるのと同じなのよ?』
(王妃殿下、あの時は何も言えず申し訳ありませんでした。私を認めてくれたあの人達を裏切りたくはありません)
『リリーフィア……凄いな、この期間でつい昨日のミスを直すだけでなく更に細やかに記されている』
『……俺も負ける気は無いからな』
今まで格段に上だと、同じ舞台の上に立てないと思っていた父や兄に認められた事が。
あの暗い過去すらも受け入れてくれた生徒会役員の存在が。
リリーフィアの顔を上げさせ、背中を押す。
(私が私で良かったと、誰に言われるでもなくそう思えるその日まで……)
「ドルファン伯爵家息女、リリーフィアと申します」
ゆっくりと目を開けた先、そこにはつい数分前の怯えた彼女の姿はいない。今まで王妃に教わってきた事を全て吸収した大輪の花が咲き誇っていた。
もちろんまだ拙い箇所はある。しかしその全てが些細な箇所に見えてしまう可憐さと、惹き込まれる美しさ。
今までの努力がリリーフィアの背中を押すように、小テストの結果は上々の結果を残せたのだった。
◇
「スラム街廃止案計画が最終候補に選出されたというのは本当か?」
「はい。それも候補に選ばれたのはーーー」
経済部の部屋は驚きに包まれ、話題の渦中にいる当の本人は知る由もないのだった。
20話程度で完結予定です。
次話は
父との和解、そして日の目のお話です。
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