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夕方のお茶を約束したアユカたちは、それぞれの滞在先に戻るためにクテナンテの宮を後にした。


その帰り道でホノカに「私も楽器できたらよかったのになぁ。どんなに大声でも遠くまで届かないからしんどいの」と溢され、風魔法で音を飛ばしてもらっていると教えると、両手で右手を握られ、お礼を言われた。


昼食に間に合ったアユカは、何が起こっていたのか、自分が何をしたのかをシャンツァイに伝えた。

シャンツァイは相槌を打ちながらも、時折考えているような素振りを見せていた。


「アユ、皇后派につくでいいんだな?」


「どっち派につくって考えは好きちゃうけど、クテナンテ様と仲良くしたいと思ったんは本当やよ」


「そうか」


「それに、うち、モエカのやり方嫌いやねん。クテナンテ様相手に何をしようが、やり合ったらいいと思う。お互い自分で考えて動ける年齢やから。でもな、まだ助けを求められへん、声を上げることも逃げることも戦うこともできへん子に攻撃するんは許されへんねん。ムカムカするねん。神経疑うわ」


「それは、まだ確定してねぇから、あんまり怒るなよ」


「どういうこと?」


「モエカって女が主導とは限らないってことだ。用意されたものを贈った可能性もあるからな」


「モエカがいいように使われてるかもってこと?」


「そういうことだ」


「ふーん。腹立つけど、分かった」


持っているフォークとナイフを置いたシャンツァイに、真っ直ぐ見つめられる。


「アユ。どうしてキアノティスや、その周りを気にする?」


「んー。気にしてるとは、ちょっとちゃうかなぁ」


「違うとは?」


「召喚された時、キアノティス様だけがうちを案じてくれたし、何より大金もらったんよ。そのお金分は恩を返したいと思ってんよな」


「……お金?」


「でもでも、うち別にお金に目が眩むような子ちゃうで。それも理由にあるってだけで、キアノティス様はシャンの友達って方が大きな理由やで。友達が不幸になったらシャン悲しなるやろ。うちはシャンには幸せでいてほしいんよ。悲しい想いをしてほしくないんよ」


「……俺のため?」


「そう。いや、3分の2くらいはそう。んで、クテナンテ様は爆乳で綺麗やったから、友達になって美の秘訣を教えてもらいたい! 以上」


一拍置いて、シャンツァイがお腹を抱えて笑い出した。

いつも肩を揺らして小さく笑うシャンツァイが、お腹を抱えて大声で笑っているのだ。


シャンツァイ以外の時間が、天地がひっくり返る勢いで止まってしまうのは仕方がないことだ。


目尻に涙を浮かべたシャンツァイが、甘い視線でアユカを射抜いた。


「アユ、愛してるよ」


simple is bestの攻撃にアユカは胸を撃ち抜かれ、硬直して椅子から転げ落ちた。

それでも瞬き1つしないアユカに、周りは心配しながらも笑ったのだった。




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