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「アユカ様、これ」


横にきたグレコマに、紫色のビー玉のような水晶を見せられた。

グレコマの手のひらの上に置かれている。


「話してる間にネペタに取ってきてもらった」


ネペタを探すと、ネペタはドアに体を預け必死で息を整えている。

心の中で「なんか分からんけど、ごめんやで」と謝りながら、グレコマの手のひらに視線を戻す。


「なにこれ?」


「盗聴防止の魔道具」


「そんなんあるん!?」


「貴重な魔道具だよ。シャンツァイ様の持ち物で借りてきてもらったんだ。それで、伝言も受け取ってきてる。『後1時間もしないうちに昼食だぞ』だそうだ」


「もうそんな時間なん!? はよ祓って戻らな」


急いで竜笛を取り出すアユカに、グレコマは慌てて盗聴防止の魔道具を発動させた。

間一髪で間に合い、困ったように息を吐き出しながらもアユカの音色に耳を傾けた。


そして、何回も聞いているエルダーたちはもちろん、初めて竜笛を聞くホノカたちも、気持ちを包み込んでくれるような音に聞き惚れている。


暗い気持ちを追い払った場所に芽吹く明るい気持ちが、体を軽くしてくれる。

そんな音色だと感じていた。


音を奏でている当の本人は、「消えてなくなれー。悪意なんていらないんだよー。楽しくて幸せが最高なんだよー」と念じていたのだった。


吹き終わったアユカは「どうだ!?」と目をかっぴらき、ペペロミアを見た。


おお! 祓えてるやん!

光放ってるんかと思うほど、元気になってるやん。

はぁー、よかったわー。


「アユカー! すごい! マジで凄い!」


隣からホノカに抱きつかれた。

アユカに抱きつきながら飛び跳ねているホノカに「こける!」と思いながら、重心をしっかりと足と腰に持っていき踏ん張った。


こんな状況でもアユカは、ホノカが気兼ねなしに接してくれることに喜んでいた。

だから、腕を払うことはせず踏ん張っているのだ。


「聖女アユカ様。誠に、誠にありがとうございます。この子の元気な姿を見ることができ、まるで夢のようです」


元気に腕と足を動かしてるペペロミアを、静かに泣きながら見ているクテナンテに、アユカは微笑んだ。

アユカから離れたホノカも、顔から笑顔が消えないでいる。


「夢ちゃうよ。それに、これからはずっと元気やで。けど、やんちゃすぎるんは大変やろうから、ほどほどの元気が1番やよな。皇子様、聞こえてる? ほどほどやからね」


初めて小さく吹き出したクテナンテに、アユカとホノカは視線を合わせてから笑い合った。

「あ! 敬語忘れた」と気づいたアユカがクテナンテに謝ると、クテナンテは「不要です」と綺麗な笑みを零していた。


「もう少し話してたいけど、そろそろ戻らなあかんから帰るわな」


「まだお礼を言い足りないのですが……」


「お礼はホンマにいらんよ。それに、シャンがキアノティス様に色々要求すると思うし。でも、1つだけお願いがあるねん」


「なんでも仰ってください」


「うちと、とととと友達になってほしいねん」


うわー、言うん初めてやから噛んだー!

恥ずかしい! 恥ずかしいよー!


「私とですか?」


「う、うん。うち、聖女やけど、未来はシャンと結婚して王妃になるねん。やから、その、先輩としても仲良くしてほしいし、友達としても気軽に話し合える人がほしいしで……あかんかな?」


「い、いいえ! いいえ! とても光栄なお申し入れでございます! 私も気軽に友と呼べる人物がおらず、寂しく思っておりました。ですので、誠に嬉しゅうございます」


「よかったー。んじゃ、会議が終わったら、お茶しに来るわ。その時に色々話そ」


「はい、お待ちしております」


照れたように微笑みあっていると、クテナンテとの間に横から腕を差し込まれ、上下に大きく振られた。

腕を振ってくる人物、ホノカを見ると、少し頬を膨らませている。


「私も友達になる。なりたい」


そんなホノカの態度にアユカとクテナンテは顔を見合わせて、笑いながら頷いたのだった。




明日は区切りの良さを優先するため、1話投稿になります。


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