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皇后付きの侍女は、震える両手を合わせながら話し出した。


「皇后様がご懐妊されてから、安静をと宮に籠るようになりました。体調は崩されがちでしたが、ずっとお元気にされていたんです。ですが、臨月になると、ほとんどをベッドの上で過ごされるようになりました。そんな中、お生まれになりました皇子様もお体が弱く……皇后様は自分のせいだと気を病んでおりまして……」


「皇后様は、元気になったん?」


「いいえ。ご出産されてから、ベッドから起き上がれない状態です」


「皇子様は体が弱いって、風邪ひきやすいとか?」


「それはっ」


お、おおう。泣いてしまった。

生まれたばっかりやと思う赤ちゃんが、どんな状態なら泣くまでになるん?


「うん、分かった。うちで治せるんか分からんけど、お見舞いに行くわ」


「ありがとうございます!」


「でも、ちょっとだけ教えて」


「何でございましょう?」


「宮廷医は? なんて言ってるん?」


「手の……施しようがないそうです」


「やったら、モエカは? 治してくれへんの?」


「モエカ様はお忙しいようでして、お時間をいただくのは難しく……」


これは、あれか?

勝手に派閥ができたんやなくて、モエカが皇后に喧嘩売ってるってことか?


「そうなんや。モエカ大変なんやね」


「そのようです」


「んで、なんでうちなん? 聖女は他にも2人おるやろ?」


「実は到着された順にお伺いさせていただきましたが、私が皇后様付きのメイドだと分かると追い返されました」


「んー、分かった」


アユカは元気に立ち上がり、皇后付きのメイドに笑顔を見せた。


「お見舞い行こっか。手土産が何もないけど許してな」


「いいえ! 来てくださるだけで光栄でございます!」


泣き出してしまいそうなメイドからシャンツァイに向き直す。


「シャン、もしかしたらアレ使うかも」


手の施しようがないんやもんな。

ポーションで治ればいいけど、無理ならハイポーションやな。


「そうか。キアノティスに請求するから使ったら教えてくれ」


「分かった、ありがとう。ってか、シャンは一緒に行かへんの?」


「俺はモナルダと話し合いをしてる。チコリとグレコマとエルダー、後ネペタも連れてけ」


「分かった。いってきます」


「アユ、ちゃんと俺のところに戻ってこいよ」


「ん? 変なシャン。昼食までに戻ってくるよ」


シャンツァイに手を振って、チコリたちを引き連れて部屋を後にした。

廊下に出た途端にエルダーから「アユカは、本当に女としてダメっすね」と言われ、チコリが代わりに殴ってくれていた。


皇后の宮へ向かって歩いていると、聞いたことがあるような無いような声に名前を呼ばれた。


「アユカー」


横を向くと、廊下の先からホノカが駆けてくる。


「ホノカ!?」


「久しぶり。元気にしてた?」


「え、う、うん。うちは元気にしてるけど……え? ホノカ、もう怯えたりしてないんやね」


「こっちに来て8ヶ月は経つんだよ。その間に怖いことたくさんあってね。これは、もう怯えてる場合じゃないって頑張ったの。そしたら、慣れた」


さも当然のように何てことないように言われて、笑いが込み上げてきた。


「めっちゃ簡単に言うやん」


「簡単じゃないよ。本当に大変だったんだから。フロヴィーテ様を呪いそうになったよね」


怒ってないだろうに怒っている風に言うホノカが可愛くて堂々と笑うと、ホノカも可笑しそうに笑い出した。


チコリに「アユカ様、急ぎませんと」と言われ、どうにか笑いを収める。


「ホノカ、ごめんな。うち、用事があって行かなあかんねん。って、ホノカ1人なん? 護衛は?」


「部屋から抜け出してきたからいないよ」


「は? え?」


「ここで、アユカたちに会えてよかった。そこのメイドさんを探してたの」


ホノカは、皇后付きのメイドを笑顔で見ている。


「私ですか?」


「うん。私に用事があって来てくれたんだよね。それを、イフェイオン様が追い返してたから気になっちゃって。あの人、本当に融通が効かないんだよね」


うちのホノカの印象が崩れてく。

サバサバしてるサバ子やったとは。

うちはサバ子の方が好きかやら、今のホノカはウエルカムよ。


「ホノカ。それなら、うちが引き受けたよ。やから、大丈夫」


「そうなんだ。ごめんね、ありがとう」


「いいよ」


「でも、折角だし、私も協力するよ」


「あー、んー、まぁいいか。お願いするわ」


「任せて」


握り拳で親指を立てているポーズをされて、アユカは笑いながら同じポーズをした。

ホノカも混ざり、皇后の宮に向かって歩き出す。


「このポーズ、分かってもらえた?」


「ぜーんぜん」


「やんな。うちも、やっとみんなピースしてくれるようになった」


「それ、イフェイオン様から聞かれたよ。どうしてチョキが流行るんですか? って。ピースだって言っといた」


楽しそうに話しているホノカに、アユカは笑顔を向ける。


ホノカ、ごめんやで。

疑ってるわけちゃうけど、鑑定させてもらうな。


アユカは、心の中で『アプザル』と唱えた。


ホノカ、17歳。レベル……110!? 上がってる!?


ってか、レベルに100以上があるとは。

えー、うちも自分のレベル知りたーい。

鏡越しでも無理やってんよなぁ。


そんなことより、それ以外よ。


丸は、2重丸に変わってるんか。

会ってなかったけど、好感度が上がってるんは嬉しいわ。

状態が懐旧か。同じ転生者に会えたら、そりゃ嬉しいし懐かしいわな。

うちもちょこっと嬉しいもん。


うちに敵意はないようやし、悪い子ではないと思うから大丈夫やろ。

注意事項に、ホノカのことは無かったしな。


ホノカに「どこに向かっているのか」「何をしに行くのか」尋ねられ、聞いた内容を話した。

「え? でも、それって」の後は何も発せられなかったが、ホノカは考え込んだような顔をしていた。




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