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8

「次に、キャラウェイ様」


みんなが吃驚して動けないでいる間に、キャラウェイと視線を合わせるために中腰になった。

驚いていたのに、いまだに止まっていないキャラウェイの涙を手で拭う。


「犬っぽいって言ってごめんな。狼って知らんかったんや。ホンマにごめん」


「僕こそ、泣いてごめんなさい……」


「ええよ。嫌なことがあったら泣くんは当たり前やから。特別にうちの胸を貸しちゃる。ほら、たんと泣き」


柔らかく抱きしめ、優しく背中を撫でる。

遠慮がちに抱きしめ返してきた小さな体から、声を頑張って殺している泣き声が聞こえてきた。


大きなため息に顔を上げると、キアノティスが困ったように頭を掻いていた。


「アユカ、ウルティーリ国は罰さなくていいんだな?」


「やから、なんでそんな物騒になるん? それに、うちはやられたら自分でやり返すよ。見てたやろ?」


「分かった。今回のことではもう何も言わない。でも、もし不当な扱いを受けるなら、いつでも連絡してこい。迎えにいってやる」


「大丈夫やと思うけど、ありがと。心配してくれるんは嬉しいよ」


眉を下がらせたままの顔で微笑んでから、キアノティスは自席に戻っていった。


キアノティスがマツリカを目視してからウルティーリ国の騎士を見やると、騎士たちは焦った様子でマツリカを壁まで移動させている。


アユカも席に戻ろうと、キャラウェイを抱えながら立ち上がった。


かっる!

10歳くらいの子って、こんなに軽かったっけ?


「ア、アユカ様」


「恥ずかしがらずに一緒に座ろ」


「で、でも」


「いいやんか」


有無を言わさないように、すぐさま席に着いた。

膝の上で抱えるようにキャラウェイを座らせると、キャラウェイの涙は恥ずかしさで止まったようだった。


「皆様、僕のせいで食事を中断させてしまい、申し訳ございませんでした」


「もういいですよ」


「私も特に気にしてないよ」


あんたらは、本当に我関せずやったもんな。


「さっき言ったように、俺はもう何も言わない。ただ、これからのことは肝に銘じておけよ」


「……はい」


なんとなくやけど、キアノティス様には誰も意見できへんのかな?

1人だけ皇帝やしな。


うーん、分からん。

鑑定で分かったらいいんやけど、そんな説明なかったしな。


でも、やってみてもいいよな。


好奇心を抑えられず、心の中で鑑定の魔法『アプザル』と唱えてみた。

すると、10インチほどの水色の画面が、視界の色んな所に現れた。


できた!

なになに……名前と年齢とレベルと属性と状態と1口メモみたいなやつと記号?

何を表してんやろ?


キアノティス(24)は、レベル90で雷属性。

健康でフォーンシヴィ帝国皇帝ね。んで、記号は丸。


イフェイオン(22)は、レベル85で風属性。

健康でポリティモ国国王。んで、記号は丸。


アンゲロニア(22)は、レベル84で水属性。

健康でリコティカス国国王。記号は丸か。


3人とも丸なんか。

ちなみに、聖女たちはっと。


おお、全員レベル100の聖女ってことは、うちもレベル100なんやろな。

年齢も、うちと一緒の17歳やもんな。


状態のところが、ホノカとユウカが怯えか。

まぁ、いきなりプチ乱闘やったもんな。怖いよな。

でも、モエカが嫉妬か。

どこにどう嫉妬する場面があったんやろ?


って、1口メモんとこに、みんなの死因書いてるー!

おもっ! 読みたないのに読んでもたやん!


いいや、うちは読んでない。

事故や自殺や病死とか読んでない。


頭から消すことにして、問題の記号よ、記号。


ホノカだけが丸で、モエカとユウカがバツか……

一体、なんなんやろ?


どうせなら他の人もチェックしとこうと壁側を見て、記号の意味に気づいた。

マツリカが、バツだったからだ。


たぶん、うちを好きかどうかやな。

全然話してないのに、モエカとユウカから嫌われていると。


なんでやねん。

慣れてるけど、さすがに悲しいわ。

ただのアユカでも嫌われるとか、やるせないもんあるよ。


「ということです。分かりましたか?」


「あ、はい」


「アユカ様は、私たちの国について知りませんでしたね」と、イフェイオンが説明してくれていたのだ。


アユカは聞かずに鑑定結果を読んでいたのだが、なんとなく耳に届いた話では、ハムスターが教えてくれた血の話と魔物の話のようだった。


聞いていなかったことがバレないように朝食を再開しようとして、思わず声を出しそうになった。


料理やフルーツとかも鑑定できるんや。

毒があるかどうか、甘いとか辛いとか教えてくれるって、本当に便利やわ。

鑑定を選んでよかった。


同じ料理なのに先程よりも美味しく感じてしまい、誰よりもお代わりをして、聖女たちをドン引きさせたアユカだった。




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