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アユカの話に眉間に皺を寄せる者もいれば、顔を青くしている者、驚愕して顎が外れている者もいる。


「知らずに食べてたらヤバいっすね」


「そうやねんなぁ。もし宴会の料理に入ってたら、村の人ら普通に食べてるってことよな。中毒者おったら信じてもらえるやろうけど、おらんかったら反発されそうやわ」


「聖女の言うことは信じるだろ」


「そうっす。浄化の奇跡を見てるっす」


「そんなん関係あらへんよ。食べたらまた食べたくなる実なんやで。しかも、食べた人が美味しいと思う味を感じるんやで。そんな美味しい実が精神を壊すなんて、誰が思うんよ」


「だとしても、実は燃やした。もう手に入らない」


「そうやねんけど。なーんか胸騒ぎがするねんなぁ」


アユカが腕を組んで唸っていると、息を切らしたグレコマが帰ってきた。


「もど、りました」


「惜しいな。30秒遅刻だ」


「くっ」


「明日の朝、俺が訓練してやろう」


え? なんて?

シャンが訓練すんの?


「シャン、上半身裸でやるやんな?」


さっきまでしていた難しい顔は幻だったかと思うほど、アユカの顔は目が三日月になるほどニヤついている。


「上半身以外も、裸は毎日見てるだろ」


「なっ! そんなこと言わんでいいねん!」


夜イチャついてることが、みんなにバレたー!

恥ずかしい! 恥ずかしすぎる!


バレていないと思っているのはアユカだけで、みんなは全部気づいている。

今も「また始まったよ」としか思っていない。

チコリとクレソンだけが、仲睦まじいことは良いことと微笑ましく見ている。


「シャンツァイ様、調査結果をお伝えします」


誰もが「グレコマ、やめろ。アユカ様との時間を邪魔したら、殺されても文句言えないぞ」と、冷や汗をふきだした。

これは、チコリもクレソンも同じ想いだ。


「そうや、そうや。シャンが命令したんやから、早く聞くべきや」


「早く聞いて労ったら、何かしてくれるか?」


「うっ……夜にマッサージしてあげる……」


「楽しみだ」


「逃れたー! グレコマ、よかったな! 生きられるぞ!」と、全員出そうになる涙を堪えていると、顔面蒼白のネペタが戻ってきた。

尋常ではない様子に、おふざけモードは消え失せ緊張が走る。


「まずは、グレコマから聞こう」


「はい。調べた結果ですが、村人が何人かいないようです。『あの子もなの』や『この村はどうなるんだ』など、不安に満ちた声ばかりでした」


「そうか。ネペタはどうだ? 何が分かった?」


「は、はい。グレコマ先輩の続きの内容になります。今、この村は流行り病に侵されているようで、何人か隔離されています」


「……流行り病か」


「は、流行り病を見てきたのですが、全身に発疹があり、発疹は水膨れを起こしていました。そして、高熱なのか息が浅く、うなされていました」


ん? それって、水疱瘡ちゃうの?

ってか、見に行ったって言うたでな?


「なぁ、ネペタ。どこまで近づいたん?」


「か、患者の横までです」


「あっかーん! はい、それ、あかんやつ!」


「え? え?」


「詳しく調べるんは大切やと思うよ。でもな、近づきすぎてネペタが感染したら、今ここでシャンにも移るかもやねんで。それに、シャンはネペタという騎士を失うかもしれへん。ネペタが苦しんだら仲間の騎士たちも辛いんやで。調べるんなら、それを分かって調べなあかん」


「あ……す、すみません……おやお役に立ちたくて……」


「気持ちは分かるけど、これからは考えて動くんやで。無茶はしたらあかんねんで」


「は、はい。ありがとうございます」


よし! と大きく頷くと、シャンツァイに柔らかく頭を撫でられた。

騎士たちからは、小さく頭を下げられる。


「んでな、非常に言いにくいことやけど、ネペタ感染してるわ」


「「は?」」


「アユ、距離開けろ!」


「大丈夫やって。発症せーな感染力はないから」


たぶん。

今ネペタが話したけど、誰も感染せーへんかったからな。

でも、「疱瘡コンコン病」かぁ。

水疱瘡と一緒のようで違うんかな。


ってか、この村来た時に『アプザル』してたら感染する前に気づけたんかもな。

やっちゃったぜ。てへ。


「そうか。よかった」


安堵の息を吐き出したシャンツァイが、おでこにおでこを引っ付けてきた。


おおおおおお! これは何気に初めて! こっつんこは初めて!

熱測る以外でもやるんか。

勉強になります。さすがエロス大先生。


「アユ任せになって申し訳ないが、ネペタはどうすればいい?」


「シャ、シャン、まずはこっつんこ止めよか」


「こっつんこか。可愛いな」


微かにしか笑わへんのに、この距離やからシャンが笑ってる息がかかるー!


ウルトラピンクみたいな激しいことしてるから免疫あるはずやのに、ベビーピンクみたいなこっつんこで、ここまで心を揺さぶられるとは。

まだ恋愛上級者と対等にはなられへんってことか。


「シャ、シャン。早急に解決せーな、夜のマッサージの時間なくなるで」


「楽しみが少なくなるのは困るな。話し合いをするか」


やっと離れてくれたー。

もう、ホンマにみんなの前で恥ずかしいねん。

でも、恥ずかしがってるん、いつもうちだけやねんな。

この世界の恋愛経験値が高すぎてビビるわ。




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