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シャンが呼んでるって言われたから執務の間に来たんやけど、モナルダがおった時点で嫌な匂いプンプンしてたんよな。


「嫌や。来週初めての慈善活動やってんで。うち、やる気満々やってんで」


「知ってるが、今回は無理だ」


「行ったところで、うちに知識なんかないのに」


「どういうことですか?」


「うちが住んでた世界の何をどう参考にするんかは分からんけど、うちはもう出来上がった物を買って、それを使ってただけの子供にすぎんかってんで。物の仕組みとか聞かれても分からんもん」


ってか、参考にするとこなんて何もないやん。

ハムちゃんが言ってた通り、困ること1つもないんやもん。


「そうだとしても、国際会議は拒否できねぇんだよ」


「フォーンシヴィ帝国と結んだ和平条約の1つに、如何なる時も国際会議には参加をするという項目があるんです。これは、フォーンシヴィ帝国が残りの3カ国それぞれと結んでいる条約になります」


「行かへんかったら戦争になるってこと?」


「最悪な」


「うちは会議よりも、他にやりたいことあるのにー」


「俺だってそうだ。まぁでも、1ヶ月半近く24時間ずっとアユと一緒にいられると思うと、国際会議も悪くないと思うけどな。馬車は2台で行こうな」


なっ! またシャンのエロスが大暴走してるー!

あの妖しく笑っている顔は、絶対にそうや!

馬車で2人っきりになるつもりや!

2人っきりで、何するつもりか決まってる!

うちの腰を砕けさせるつもりやー!


「って、1ヶ月半?」


「ククッ。そうだ。どうせなら近隣の瘴気の浄化をしながら向かおうと思ってな」


「うちはかまへんけど、シャンがそんなにお城空けて大丈夫なん?」


「全部モナルダに押し付けていくからいいんだよ」


「私、絶対にやつれると思いますので、お土産をお待ちしていますね」


「お土産? うん、いいよ。何がいい?」


遠い目をしているモナルダの珍しい言葉に、アユカは笑顔で頷いた。

どこに行くとしても、モナルダにはいつもは淡々と予定を言われるだけなのだ。


「行幸予定にフォーンシヴィの王都でデートがある。こっちで見ないような物を買えばいい」


「デート!? 嬉しい!」


「機嫌が治ってよかったよ」


単純なのは、うちの長所やからね。

ずっと怒ってても疲れるだけやしね。

参加せーなあかんのやったら、シャンとできそうな楽しいこと考えよう。


「あ! 今回、グレコマはお城待機でいい?」


「俺も行くぞ」


「あかんよ。オレガノさんについててあげな」


「そういう理由なら行かなきゃ、逆にオレガノが嫌な想いをする。自分の体のせいで俺の足を引っ張ってるてな。それに、アユカ様がじいやまで治してくれたから、何も心配することないんだよ。元気になりすぎて、歩かずに走って移動してるしな」


「そうなんかぁ」


「薬を作ってくれたことで感謝しきれないほど、俺もオレガノも感謝してる。アユカ様を守らなきゃ力がある意味がない」


「薬のことは気にせんでいいのに。それにさ、グレコマが無理ならリンデン来てくれるかもって思ったのに。1ヶ月半もリンデンに会われへんとか辛いわ」


「「おい(っす)」」


うん、綺麗にツッコんでくれるん嬉しいわ。


「アユ、何度も言うが、俺とリンデンが同時に城を空けることはないからな」


「分かってるよ。半分冗談やん」


ここでもツッコんで。半分かよってツッコんで。


「アユカ様。明日、改めて注意事項はお伝えしますが、リコティカス国にはお気をつけください」


「んー、分かった」


「それと、日にちにゆとりがあるので問題はないと思いますが、必ず陛下の誕生日までにお2人してお戻りください。もし足止めをくらい戻れないようでしたら、馬車の中で1週間お過ごしください。もしも時の食料は別で積んでおきますから、それには手を出してはいけませんよ」


「分かった」


「会議は4月3日からですので、終わられましたら真っ直ぐお戻りくださいね」


「明日から出発ってことは、先に浄化を終わらせるんやね」


「そうなりますね」


「予定通りに帰ってくるとしたら、何日になるん?」


「4月20日頃ですね」


「そっか、よかった。それなら、シャンの誕生日プレゼント買いに行けるな」


アユカの安堵した笑顔に、温かい空気が部屋を満たしていく。


「アユと過ごせるだけで十分だぞ」


「あかんよ。ちゃんとお祝いさせてよ」


「本当に一緒にいてくれるだけでいいんだがな。アユの誕生日は何がしたい? お礼に何でも叶えてやるぞ」


「デート!」


「他にはないのか?」


「うん、デートできたらいい」


「そうか。今から空けておこう。いつ誕生日だ?」


「うちの誕生日は……って、いつになるんやろ?」


「分からないのか?」


「分からへんていうより、どっちやろと思って」


「どっちとは?」


「うちっていうか、聖女はみんな1回死んでるねん。んで、神様の力で生まれ変わったから、元々の誕生日なんか、召喚された日になるんか、どっちなんやろって思って」


ん? みんなの時が止まってる。

これは、うちだけが動ける時空の魔法が発動してるとか?

やったら、みんなの顔に落書きしても、うちが疑われることないんちゃうかな。


「……どういうことだ?」


なんの魔法も発動してなかったわ。

まぁ、分かってたよ。

みんなが微動だにせんかったから、時間潰しに妄想しただけやよ。


アユカは「他の聖女は、もう話してるかもやしな」と、初めて召喚された経緯を伝えた。

話し始めから終わりまで、シャンツァイの機嫌の悪さにみんな息がし辛くなっていて、冷や汗をかいている。


「話は分かった。しばらく訓練場にいる」


シャンツァイとネジまき人形のようにカクカク動くクレソンが部屋から出ていくと、何個も「ぷはっ」という音が聞こえてきた。

かくいうアユカも同じ音を出している。

全員、ようやく息ができたのだ。


めっちゃ心臓ドキドキいうてるー。

人を怖いと思ったん久しぶりすぎて、指1本すら動かせんかった。


「今日、訓練してる騎士たちは地獄を見るな」


「はいっす。漏らすかと思ったっす」


「訓練場の修繕が大変です」


シャンツァイは騎士たちと総当たりをした後、リンデンと模擬試合をし訓練場を半壊させたそうだ。

それでも、まだ機嫌が悪かったシャンツァイはレベル10のダンジョンに潜りに行ったらしい。


夕食に姿を見せない理由を、ほぼ泣いている状態のクレソンが教えに来てくれ、シャンツァイの怒りの強さにアユカたちは青い顔をしたのだった。




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