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「待ち構えるのは、やめろ」


「私もしたくないですよ。ですが、朝一でお話ししたいことがあるんです」


顔を歪ませながら、クレソンが開けてくれたドアから執務の間に入った。

執務机に着くと同時に、モナルダからシャンツァイに書類が渡される。


「フォーンシヴィ? キアノティスが何の用だ?」


「国際会議の招集です」


書簡に目を通したシャンツァイが、ため息を吐きながらクレソンに書類を渡している。


「時間の無駄だ。往復に何日かかると思ってんだ」


「モエカという聖女様がどれだけ素晴らしい知能をお持ちなのか知りませんが、聖女様が住んでいた世界を参考に世界を変えていきたいとは、思い切ったことで招集をかけられますよね」


「名目は何でもよかったんだろ。狙いは、聖女を同伴させることだろうからな。他の聖女の知識を貸してほしいなど、必ず連れてこいって言ってんだよ」


「そのようですね。目的はアユカ様ですかね」


「集める理由の1つだろうな。知識を貸してほしいのは住んでいた世界のことじゃなくて、薬や浄化なのかもな。

でも、キアノティスのことだから、それだけじゃない気もするが」


「フォーンシヴィを、僅か1年で帝国として知らしめた人物ですからね」


「ああ。少しでも油断したらアユを取られそうだ」


「取られないでくださいよ。アユカ様ほど特別な聖女様はいらっしゃらないんですから。普段は気さくなのに、いざという時は堂々と振る舞え、薬の知識は底を知らない。私もさすがに30歳までしか生きられないとされる難病を解明し、薬までも作ってしまわれると知った時は、数秒息が止まりましたよ。宮廷医たちは腰を抜かしたんですよ」


「らしいな。俺はアユが『見舞いに行きたい』と言った時に、そうなる気がしてたよ」


「私たちはそのことを聞かされる前に、病名と薬を知ったんですよ」


「そうだったな」


「それに、その薬を作れるのは現時点でアユカ様のみ。他の者はいまだ成功に至りません」


「ああ。だからか、アユが毎日のように大量に作ってるよ。作っては、ご飯を食べ、1時間眠り、また作るを繰り返しているそうだ。慈善活動の時に薬がないと困るってな」


「薬の渡し方については、私に考えがあります。1度アユカ様とお話しいたします」


「伝えておこう」


「しかし、今回の薬と慈善活動が明るみに出れば、他国からの問い合わせは凄まじいことになりそうですね。薬を他国に販売するとなると、早急に作れる調剤師を増やさなければいけませんしね」


「ああ、国の再生やアユの対応にこの上なく忙しいのに、国際会議とはな。欠席できればいいが」


「フォーンシヴィ帝国との和平条約に含まれている内容じゃなければ拒否できるんですけどね」


「だから、わざと国際会議なんだろ。慈善活動ができないってアユが怒りそうだ」


「なだめてください。向こうに行かれている間に、浄化と慈善活動の予定を調整しておきます」


「そういえば、こちらはいつも通りお断りしておきました」と、もう1つ書類を渡された。


「リコティカスか。しつこいな」


「国際会議で、どうぞやり合ってきてください」


面倒臭そうに吐き出されたシャンツァイの息に、モナルダとクレソンは心の中で同意した。




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