表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/209

70

バレンタインデートから1週間ほど経った朝食時。

グレコマとエルダーの悲痛な声がハーモニーを奏でた。


「シャン。うち、冒険者登録していい?」


「……理由は?」


「ダンジョンに行きたいねん。冒険者ちゃうと入られへんのやろ? やから、登録したいねん」


「……誰に聞いたんだ?」


「グレコマとエルダーやよ」


シャンツァイの大きなため息に、グレコマとエルダーは斜め上を見ている。


「冒険者登録はしなくていい。代わりに俺の女という証明を持たせてやる」


「それで入れんの?」


「ああ。それにグレコマとエルダーがいれば、レベル7くらいのダンジョンでも入れるだろう」


「「ゲッ」」


「7はダメっすよ」


「そうです。アユカ様と一緒に7は無謀です」


呆れたように息を吐き出したシャンツァイが、口角を上げた。


「お前たちは護衛があるから、他の者より鍛錬の時間が短い。いい機会だ。訓練と思ってアユとレベル6の階層5まで行ってこい。ただし、アユに擦り傷1つつけるな」


「ろろろくっすか!?」


「念のためアキレアをつけるが、アキレアには手を出さないように伝える」


「終わった……アキレアを誤魔化すのは無理だ……」


ふむふむ。

レベルは、ダンジョンの強さを示してるんやろな。

いつも難なく魔物を倒してくれるグレコマが嫌がるくらいやから、レベル6は相当強い魔物が多いんやろな。

食べたことない魔物だらけってことやんな。

楽しみー。


「なぁ、もしうちに傷が1つでもついたら2人はどうなるん?」


「アユの護衛を休んで、1週間リンデンに特訓してもらうだけだ」


「死ぬっす!」


「リンデン隊長だけは! お願いします!」


「守ればいいだけだろう」


腕で涙を拭くほど泣きはじめたやん。

リンデンはめっちゃ恐いらしいけど、ホンマなんかな?

あんなに優しいのにな。


「アユは、どうしてダンジョンに行きたいんだ?」


「行ったことないから行ってみたいだけ。それに、新しい素材を見つけられるかもやん。楽しみやわ」


ハイポーションの残り1個の材料が、どこに行ってもないんよな。

瘴気の浄化で色んなとこに行ったのに、まだ見つかってないんよ。


しかも、エーテルを作れることが判明したのに、これも材料が揃わんのよね。


ってなると、行ったことのないダンジョンにしか生えてないんちゃうかなって。


「無理はするなよ」


「分かってるよ。わざと転んで怪我しようなんて思ってへんよ」


「やめてっす!」


「俺たちを殺す気か!」


「やから、思ってへんって」


「笑ってるじゃないっすか!」


「冗談で済まなくなるんだぞ!」


3人が言い合っている光景を見て、シャンツァイは肩を揺らして笑っていた。


ダンジョンに向けて出発前に会ったアキレアは「レベル6か……階層5か……」と、悲壮感を漂わせながら呟いていた。

念のため瞳の色を赤色に変えたアユカは、首を傾げながらも高鳴る気持ちを隠さずに、急ぎ足で馬車に乗り込んだのだった。


1時間ほどで着いた場所には、3メートルほどの三角形の岩があり、洞窟に繋がりそうな穴が空いてある。

穴は、真っ暗で30センチ先も見えない。

洞窟が続きそうな穴なのに、岩の奥行きは2メートルほどしかなかった。


「ここが入り口なん?」


「そうです。ここから階層1へ行き、部屋の何処かにある階段を使って下に降りていきます。冒険者ランクBのパーティーが、階層5まで許されているダンジョンになりますね」


「ちなみに冒険者のランクって、最高がSSやったりするん?」


「その通りです」


「んじゃ、中々に強いダンジョンってこと?」


「そこまでですよ。グレコマとエルダーが2人だけでっというのは、苦しい戦いになると思いますが」


「うちも戦うよ。めっちゃ倒そうと思ってるから」


そんな青い顔せんでも大丈夫やから。

来る前にポーションを作ってきたからさ。

大船に乗った気持ちでおってよ。


「だから、嫌なんだよ……動くアユカ様見ながらとか無理に決まってる……」


「それはもうアキレア副隊長に任せましょうっすよ……奇想天外なアユカ見ながらなんて無理なもんは無理っすよ……」


おし! 絶対に帰る前に転んで怪我しよう。

リンデンに鍛えてもらって、筋肉手に入れたらいいねん。


グレコマが重たい息を吐き出しながら、長方形の水晶を入り口の真横にある窪みに翳している。

続いてエルダーも同じように翳している。


「あれは何してんの?」


「身分証明をしているんですよ。もしもの時、入っている人数が分かりませんと助けようがありませんから」


「うちはシャンから借りたネックレスを翳せばいいん?」


「いいえ。アユカ様はそのまま入っていただいて大丈夫です」


「そうなん。変なの」


「うちも翳してみたかったなぁ」と、少し唇を尖らせてしまった。




いいねやブックマーク登録、ありがとうございます。

読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ