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朝食が終わると自室に戻らず、そのままシャンツァイと獣馬に乗って外出した。

距離をあけて、グレコマたちや数名の騎士たちが後ろをついてくる。


「なぁ、シャン」


「どうした?」


「足触らんとって」


「手持ちぶたさなんだ」


「うちと居るのに暇とかひどいわ」


「ククッ。言うようになったな」


そうやろ。

もっと褒めてくれていいんやで。


「……アユ、スピードを上げるぞ。掴まれよ」


「え? ひゃっ!」


おおおおおお! 流石にこれは話されへん!

魔法で壁あるはずやのに、めっちゃ風を感じる!

ジェットコースターみたいやん!

気持ちいい! 最アンド高やわ!


爆速は数分後には緩やかになり、シャンツァイが面倒臭そうに吐き出した息が頭にかかった。


「急に何やったん?」


「ああ、どっかの国の偵察隊だろう」


「うちやシャンを観察してるん?」


「俺というよりアユだな。聖女の情報が欲しいんだよ」


「うちさ、それ謎すぎるんやけど」


「どうしてだ?」


「それぞれの国に欲しいから4人も召喚したわけやん。自国にちゃんと聖女はおるんやから、他の国の聖女はいらんやん。それに、うちを観察しても何も出てこーへんのにさ。ホンマ謎やわ」


「別にアユだけを観察してるわけじゃないと思うぞ。どの国も早く元の国に戻したくて必死なんだよ。それに聖女だけじゃなく、それぞれが国勢を調べているのは普通だ。聖女の影響は計り知れない。だから、調べる対象になるんだよ」


「ふーん。シャンもそうなん?」


「王としてはそうなるな。自国を守るためにも他国を知らないといけないからな」


「王じゃないとしたら?」


「アユ以外に興味はないから、自国だろうが他国だろうがどうなろうと構わねぇよ。王じゃなかったら全ての時間をアユに使えるしな」


「それは無理やで。働かな生きていかれへんやん」


「俺の強さとアユの魔法があれば、旅しながら生きていけるだろ」


「ホンマや! 楽しそう!」


「早く子供作って、さっさと王位譲って、気ままな旅に出るか」


シャンツァイに優しくお腹を撫でられて、気恥ずかしくなる。


「さ、さきに結婚とか、新婚旅行とか、色々たくさんあるんやから。人生長いんやし、気ままな旅はお婆ちゃんになってからでいい」


「そうか。じゃあ、アユや家族が苦労しないように王様を頑張るかな」


「うちはシャンを支えられるように頑張るな」


「頑張らなくていいぞ。癒してくれたらいい」


「うち、癒し系やもんな」


アユカの肩に頭を置いてシャンツァイが笑い出した。

体を揺らせて小さく笑っている振動が、アユカに伝わってくる。


「なんで笑うん?」


「癒されてる証拠だ」


「そっか」


「そうだ」


見たことあるような無いような景色だなと思っていたら、海に到着した。

海岸にはクマおじいちゃんがいて、瘴気の浄化に来た海だと気づいた。


「ようこそお越しくださいました」


「無理を言って、すまなかったな」


「とんでもございません。我々は、陛下の提案にとても喜んでおります。素晴らしい提案をしていただき、誠にありがとうございました」


「礼はいい。アユに喜んでほしくてしたことだ」


うち? なんやろか?


「終わったら騎士が声を掛けに行く。待ってなくていいぞ」


「お気遣いありがとうございます」


頭を下げるクマおじいちゃんを尻目に、シャンツァイに手を引かれて海岸沿いを歩いていく。


「のんびり歩くのもいいな」


「あ! シャン、アレやりたい!」


「アレとは?」


「シャンが歩いた跡を踏みながら歩くねん」


「……何が楽しいんだ?」


「やったことないから分からん。でも、恋人たちはしてるはず」


「そうか。転けるなよ」


大きく頷いて、砂浜にできていくシャンツァイの足跡を踏んでいく。

時々、振り返るように後ろを見てくるシャンツァイと、顔を合わせて微笑み合った。


うーん……これの何が楽しいんやろか。

シャンの足おっきいなって、ドキドキするところなんか?

分からん。


足跡に集中しているアユカは、シャンツァイが面白がって少しずつ歩幅を大きくしていることに気づいていない。


うさぎみたいに跳ぶようについてくるアユカを見て、シャンツァイは足跡遊びの楽しさを味わっていた。




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