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アユカの日常に、1泊で行く瘴気の浄化が含まれるようになった。

シャンツァイがついてきたのは初めの1回のみで、2回目以降はリンデンが同行してくれている。


アユカとシャンツァイの仲は順調に濃密になっており、週に1度のペースでシャンツァイはアユカの部屋で眠っていた。


そんな中迎えた新年の挨拶は、失敗も事件もなく滞りなく終わった。

魔法で声を王都に響かせ、地方では掲示板に表明文として表示されるそうだ。


バルコニーから手を振ると思っていたアユカだったが、トランプのダイヤのような形をした水晶に向かって話すだけと知り、人知れず安堵の息を吐き出していた。


挨拶が終わってからは、城内の至る所で宴会になった。

アユカの提案で、使用人も含めて全員でお祝いをしようとなったからだ。


アユカたちは祈祷室で1日過ごすことにし、お供物はありとあらゆるご飯を用意した。


「ん? ご飯減ってる」


「神様が食べてるんだよ。すごいね」


キャラウェイ様は、いつ見ても可愛いな。

ニゲラもクレソンと一緒におれて嬉しそうやしな。


部屋の中を見渡して、アユカの口角が上がった。


毎年、新年は大変やったなぁ。

挨拶に来る人らをさばくんも大変やったし、絡んでくる酔っ払いを薙ぎ払うんも大変やった。

霧島は、うちが眠ってからしっぽりと飲んでたねんな。

みんな、元気にしてるんかな?


話すことができるんなら、うちは今幸せやよって伝えたいな。

突然殺されて嫌やったけど、異世界転生して大正解やったよって。

恋愛上級者の彼氏ができて、優しい人たちに囲まれて楽しく過ごしてるよって。


シャンやったら、じいちゃんのお眼鏡にも叶うやろうしな。

「いい男捕まえた」って、めちゃくちゃ褒められるんちゃうかな。


「アユ、どうした? もう食べないのか?」


「ううん、食べるで。ただ今年もいい年になりそうやなって思ってただけ」


「そうか。アユが側にいてくれたら、俺はそれだけでいい年になりそうだ」


ううー! シャンは、本当に甘いことしか言わへん。

うち、いつかシャンの甘さにドロドロに溶けて、原型なくなってスライムになりそうやわ。


「シャン、うちがスライムになっても殺さんといてな」


「……スライムになるのか?」


「なる予定はない」


「なんだ、それ」


髪の毛をかき上げるように、後頭部をシャンツァイに撫でられた。


「あかんって。折角チコリが可愛く巻いてくれたんやから」


「どんな髪型でも可愛いから問題ない」


「そういうことちゃうよ」


「怒っても可愛いな」


「やから、そういうことちゃうねん」


酔ってるわけちゃうのに、恥ずかしげもなくポンポン言えるのマジですごいわ。

どういう恋愛してきたら、シャンみたいになるんやろ?


「シャンって、今まで何人と付き合ってきたん?」


「アユが初めてだぞ」


「嘘やー!」


「何度も言うが、嘘つく意味ないだろ」


「だって前にグレコマとエルダーに聞いた時、過去に1人おったって言うてたもん」


飲み物や食べ物を喉に詰まらせて変な声を出したグレコマとエルダーを、シャンツァイが刺すように見た。

青い顔をした2人は、シャンツァイに背中を向けている。


「付き合ったというより親が決めた婚約者だっただけだ。親が死んだ時に解消しているし、指一本触れてない」


「じゃ、じゃあ、何人の女性と遊んできたん?」


「遊んでないな」


「ええ!? ホンマに言うてるん? だって、絶対上級者やん」


「何が上級者なんだ?」


「全部やよ。ぜーんぶ」


「ククッ。全部か。気持ちいいようで何よりだ」


頭、頬、首と順番に撫でられて、シャンツァイの言葉の意味を理解したアユカは、三角座りをして顔を隠した。

背中を優しく撫でてくる手に、意識が集中してしまう。


「そっちの話で、1つアユに言っとかないといけないことがある」


「なに?」


「俺を上手いと思うなら本能が優れているんだろう」


「どういうこと?」


「5月に俺の発情期がくる」


「は?」


予想だにしないことを言われ、埋めていた顔を上げた。

柔らかく愛でるように見てくるシャンツァイの瞳に、アユカの驚いている顔が映っている。


「ウルティーリ国民の特性だろうな。誕生日から1週間だけ発情するんだよ」


「え? でも、キャラウェイ様はそんな感じせんかったで」


「15歳からだからな」


やから時々、1週間ほど会わへん人らがおったんか。


「今までは、その1週間は我慢して気が狂いそうだった。でも、今年からはアユがいるから我慢する必要がない。

1週間よろしく頼むな」


「なっなっなっ……うっ……お手柔らかにお願いします……」


「助かる」


あああああああ! 1週間、抱き潰す宣言されたー!

うちだけって言われてるってことやから、彼女としては喜ぶとこなんやろうけど。

アレが1週間続くとか、ホンマにドロドロに溶けてまうー!


「まぁ、これがウルティーリ国が野蛮って言われる理由の1つだな」


「ん? 別に野蛮ちゃうやん。嫌がる人を犯すんやったら野蛮やろうけど、発情期があるだけで人間性の問題にはならんやん」


「そう言ってくれるアユが、この国に来てくれて本当によかったよ」


なるほどなぁ。

野蛮って言葉をやたら気にしてるって分かってたけど、そんな理由があったとは。

理由の1つってことは、他にもあるんやろうな。


でもな、うちはそんなことよりも、シャンの誕生日がある5月に気持ちが持っていかれすぎててな。

嫌って思わへん自分が、こんなにもスケベやったことに驚愕してるねん。

もう頭の中エロエロフィーバーやもん。


そういえば……と、来週から1週間エルダーとチコリが休暇を取ると言ってたことを思い出した。


どっちかが誕生日なんだろうと分かり、プレゼントを用意するためにシャンツァイに小声で聞こうと顔を近づけたら、近づけた頬を舐められた。


舐められた頬を隠すアユカを見て笑っているシャンツァイを、みんな横目で見ながら「平和だな」とお酒を飲んでいる。


ちなみにキャラウェイとニゲラは、アユカたちを見ないようにお菓子を食べて気を紛らわせていた。




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