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アユカが薬の作り方講座をする予定は、キャラウェイの誕生日の翌日に組まれた。
モナルダが、それまでに色々手配してくれるそうだ。
なんか準備してた方がいいものってあるかなぁ?
薬草や鍋とかは用意してもらえるしな。
うちは、みんなにちゃんと教えられるように予習っていっても、作り方を読み上げるだけやからな。
ん? 口頭やなくて、作り方を紙であげたらいいんちゃん。
そしたら、うちがおらん時でも確認したりできるやんな。
閃いたとばかりに、チコリにノートと筆記用具を用意してもらった。
10冊持ってきてくれたので、予備があってもいいかと、10冊全部をレシピ集に錬成をした。
アユカが「バカでも分かる薬のレシピ集」と思い浮かべたので、写真のような絵付きの手順解説が載り、必要な薬草それぞれの詳細まで記載されているものが完成した。
出来上がったレシピ集を見たグレコマは斜め上を見て目を閉じ、エルダーは「こんなことまでできるとか意味不明っす」と言い、チコリは崇拝をアユカに向けていた。
この事は直ちにグレコマによってシャンツァイとモナルダに報告され、笑顔だが目が笑っていないモナルダから「ポーションの作り方は絶対に残さないでください」と注意されたのだった。
キャラウェイの誕生日は舞踏会でも開くのかなと思っていたのに、朝から誰も忙しそうにしていない。
むしろ、初デートの前後の方が多忙を極めていたように感じる。
「なぁなぁ、今日ってパーティーせーへんの?」
「なんのっすか?」
「キャラウェイ様の誕生日のやよ」
「しないぞ」
えー、うーん……
たくさんの人を呼ぶから大掃除してたんちゃうくって、あっちの大掃除やってんね。
「王族の誕生日って、偉い人たち呼んでダンスパーティーするイメージやのに」
「それならポリティモ国がしてるぞ。あの国は、踊りを好む国民性だからな」
確かに。やりそう。
精霊の血を受け継いでいる国やもんね。
精霊って、いつも踊ってるイメージやもんね。
「やったら、キャラウェイ様の誕生日はどうやって祝うん?」
「夕食が豪華になるっす」
「それだけ? 誕生日ケーキは?」
「デザートに出れば食べると思うぞ」
それ、誕生日ケーキって言わへんよな?
んー、これがこの国の普通なんやろうから、うちが何か言うんは違うんやろうけど。
でも、誕生日って祝ってもらえるなら祝ってもらってなんぼやん。
うちの誕生日は、組のみんなが朝から晩まで代わりばんこで祝ってくれて、しょーもない1発芸がその日限りで面白かったりしてんな。
最近のキャラウェイ様は、落ち込んだままやからなぁ。
うちに1発芸はできへんけど、少しだけ雰囲気を出すことはできるよな。
元気になれるキッカケになったらいいな。
「料理長のところに行こうっと」
「それは、シャンツァイ様の許可は必要なさそうか?」
「うん」
「本当っすか?」
「嘘つかへんよ」
めっちゃ疑いの眼差し向けてくるやん。ひどいわ。
「話戻るけど、シャンの誕生日も似たようなもんなん?」
「城の中は変わらないけど、市井ではお祭りが開催されるぞ」
「それぐらいっすよね」
「ふーん。ちなみに、いつ誕生日なん?」
「5月5日だ」
「ふーん。ちなみに、今日って何日なん?」
いや、止まらんでもいいやん。
カレンダーも無いし、曜日の話も出てこーへんしさ。
そもそも死んだ日と転生してきた日が、同日かどうかも分からんやん。
「そういえば、アユカとそんな話したことないっすね」
「今日は11月22日だ」
え? ん?
「11月22日?」
「そうだ」
「ええ!? 暑すぎへん!? 秋っていうか、もうすぐ冬でもおかしくないやん。それやのに、半袖やノースリでオールオッケーってなに?」
「「すげー早口だな(っす)」」
ごめんごめん。
久しぶりに驚きすぎたねん。
「ウルティーリ国は1年を通してこんなもんだ。夏はもう少し暑くて、冬はもう少し過ごしやすいくらいだな」
「逆に、リコティカス国は寒い国っすよ。1年中暑くも寒くもない国がフォーンシヴィ帝国とポリティモ国っす」
言われてみれば、フォーンシヴィは快適やった。
移動してる間に夏に変わったんやなくて、ウルティーリが南国ってだけやったんやね。
「あれ? もしかせんでも、ひまわりって1年中咲いてるん?」
「咲いてるな」
よかった。
祭壇には他の花も供えてもらってるけど、鮮やかな黄色のひまわりは目を引くんよな。
なくなったら寂しなるもんな。
アユカは厨房で調理長に誕生日ケーキの話をし、部屋に戻るとチコリに折り紙を用意してもらった。
「折り紙の装飾は、しょぼすぎるかもなぁ」と思いながらも他に思い付かず、次から次へと作っていく。
夕食前になり、チコリたちメイドや侍従の力を借りて食堂を飾り付けし、誕生日ケーキの出来栄えをチェックした。




