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アユカが驚きのあまり呆気にとられている中、クレソンの説明は続いていく。


「ありがたいことにアユカ様のおかげで、今王宮には薬がたくさんあります」


「え? うち、作りすぎてた?」


「いいえ。色んな店舗に卸す可能性を考えると足りません。足りませんが、子供にさえ薬を買えない家庭もあると思うんです。まずは、子供に対して販売していこうと考えているんです。子供の薬が安価で手に入るなら、親も薬が高くても買うことができるでしょうから。

ただこの話は、アユカ様の了承がなければ、これ以上進めることはできませんし、いたしません。薬を作ってくださっているのはアユカ様ですから」


うーん、今まで買ってこーへんかったのに、余裕ができたとしても買うかな?

自分の薬は高いままなんやで。

それやったら、余裕できた分娯楽に使いたいもんちゃうの?


それに、子供だけ贔屓だって怒る人とかおるんちゃうかな。

考え出したらキリがないけど、子供がって嘘をついて買う人とかも出てきそうやん。


「俺が今日アユを5人に会わせると言ったら、モナルダがクレソンにこの話を叩き込んだんだ。アユなら、この5人の再就職先を潰すようなことはしないと考えたんだろう。この5人のことは気にしなくていい。嫌だったり、重荷に感じたりするなら断っていい」


あ、ああ。

うちが考えてる間、黙ったままやったから困ってると思ったんかな。

5人のことは頭から抜けてたわ。ごめんよ。


でも、そっか。5人の再就職先になるんか。

ってことは、5人分の労働力はあるんやんね。


「ちなみに薬の値段は決まってるん?」


「まだだな」


「じゃあさ、他の店がやっているように、薬草は冒険者ギルドに発注して入れ物も購入しよう」


「また何か言い出したっす」という、いつも通りのエルダーの小声が聞こえてきた。


「そしたら、どれくらいの費用で用意できるか分かるやん。んで、うちが5人に作り方を教えるから大量に作ろう。そしたら、子供だけやなくて平等に買うことできるやろ」


「……いいのか?」


「そ、うですよ。アユカ様の技術ですよ。教えてよろしいんですか?」


「ええよ。困ることなんか1つもないやん」


うん、困ることなんか1つもないな。

うち以外が知るからって、シャンとの恋愛に何かあるわけちゃうしな。


アユカは歯を見せて満面の笑みだが、アユカの迷いのない言葉に誰もが仰天していて動けないでいる。


「あ! 薬草ってさ、自分たちで育てられへんのかな? 育てられたら、採りに行く時間の短縮にも、依頼金の節約にもなると思うねん。それに、採れる量が多いなら薬草を販売できるしさ。どうやろ?」


突然、シャンツァイに両手で頭をもみくちゃに撫でられた。


「わ! わ! わ! な、なに!? ちょっ!」


そして、強く抱きしめられた。


だだだだだだだだだきしめられてる!?

あかんあかんあかん!

鼻血出るー!


棒立ちで目を見開いているアユカは、抱きしめられていた時間が数秒だとは気づいていない。

「なんて慈悲深い」「聖女様、ついていきます」「戻ったらモナルダに相談いたします」「あの顔怖いっす」「見るな。呪われるぞ」などと言われている言葉は、一切耳に届かなかった。


「アユ、起きろ」


「ふぁ?」


シャンツァイに鼻をつままれて、変な声が出てしまった。


「馬車?」


「意識を飛ばしすぎだ」


「しゃーないやん。シャンがだだだだだき……意地悪するから悪いねん」


「愛情表現だろ」


「ああああああい……」


そそそそそそそれって、シャンはうちのことが好きってこと?


えええええ!? いいいいつ!? いつから!?

うちが恋愛するならシャンみたいな肉体美の人がいいってはじまった婚約者関係で……


婚約者なんやから、シャン的にもうちを好きな方がいいんか。


「おい、また心ここに在らずになってる」


頭を軽く小突かれてシャンに意識を向けると、繋いでいた手をほどかれ、その手で肩を抱かれた。


「ななななななに?」


「本当のキスを教える約束だったろ」


「まままって。そう、待とう。少しおちっっ……」


あたあたあたあたってるーー!


あ、シャンの唇柔らか……


うぎゃー!!!

ななななんこれ!? なんこれ!?


ああああああああ! 舌がー!


何もかも耐えられなくなったアユカは意識を飛ばし、目を覚ましたのは次の日の朝だった。




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