48
昼食後は武器屋に寄ったが、今キャラウェイが持っている剣よりも上等な物はなかった。
そろそろ決めたいと思いながら、東側にある大通りに移動した。
「シャン、あのお店って何の店?」
「あれは防具屋だな」
言われてみれば、さっきの武器屋には盾とか置いてなかったわ。
「行ってみるか」
「うん」
大通りから脇道に入った防具屋はほのかに薄暗く、1人では絶対に入らないと思うようなお店だった。
店内には、頑丈そうな盾や籠手や兜が並べられている。
その一角に、指輪やブレスレットなどのアクセサリーが置いてあった。
「いらっしゃいませー」
店番と思われる、15歳くらいの亀に似ている少年が声をかけてきた。
お店の雰囲気とは不釣り合いな明るい少年だ。
「何かお探しですか?」
「剣術を頑張ってる男の子へのプレゼントを探しに来たねん」
興味深そうに見つめてくるカメ少年に、心の中で首を傾げる。
「お姉さん、もしかして聖女様?」
「え? なんで?」
「だって目が黒いですよ」
自身の赤い目を指されながら言われた。
「坊主、間違ってるぞ。目は黒いが東洋人だ」
「そうなんですね。そんな遠い所から来られるのは大変だったでしょう。僕のお店は超一流だから買って帰ってくださいね」
キアノティス様は着物を見て、東洋の国って言うてたな。
んで、黒い瞳してるんか。
日本やん!
うちが住んでた日本と、どう違うんやろ?
いつか行ってみたいなぁ。
「剣術を頑張っている男の子へのプレゼントでしたよね。アクセサリーはいかがですか?」
「このアクセサリーも防具なん?」
「はい。特殊な技法を用いてまして、この指輪は1時間ほどですが防壁を作ることができるんです。ですので、ダンジョンの毒が漂っている階にもお勧めなんです」
「壁できてる間は毒吸わんでいいってこと?」
「はい、その通りです」
それは本物やったら凄いけど、繁盛してるように見えへんねんなぁ。
鑑定してみよかな。『アプザル』っと。
なになに……
アーティファクトって出たよ。
確かに防壁が作られるってなってる。
こっちは身体強化で、こっちは魔力強化。
めちゃくちゃ凄いやん。
これなら持ってなさそうやし、何個あってもよさそうやしな。
プレゼントに最適やん。
指輪は、サイズ分からんからなぁ。
ブレスレットとかいいかも。
「これも防壁?」
鑑定をしているので分かっているが、付与を聞かずに買うことはできない。
質問をしながら、赤色の魔石が埋め込まれているブレスレットを指した。
「いえ、そちらは魔力強化になります。その隣は身体強化になります」
「んじゃ、この魔力強化ちょうだい」
「ありがとうございます! あ、でも、あの……注意事項がありまして、魔石分の利用が終わりますとただの装飾品になります。魔石だけを付け直すということはできません」
「そうなんや」
「怒られないんですか?」
「なんで怒るん?」
「高価なのに消耗品だからです」
高価と言われて初めて値札を見た。
200万ベイと書かれている。
なるほど。200万ベイは高価なんか。
そういえば、パスタ1200ベイやったな。
1ベイを1円に換算するとして、200万円てことか。
たっかいな!!
で、パスタの値段や200万円が高価な世界ってことは、金銭感覚は前世とほぼ変わらんと思っていいんかも。
となると……高いけど、もうちょうだいって言ってしまったし、キアノティス様からの1000万ベイあるから余裕で買えるしな。
ってか、キアノティス様の1000万ベイ……さすが皇帝ってことやん。
「おい、坊主。高価で怒られると思っているなら、どうして安くしない?」
「大量生産できないからです。ここにある商品は全部リコティカス国からの輸入品になります」
「アクセサリーもか?」
「はい。そして加工ができるのは父のみですが、父の魔力量は多くなく、月に1つしか作れないんです」
「リコティカス国からの輸入でなければ安くできるだろ?」
「その場合、武具が特殊な加工に耐えられないようで破損してしまうんです」
「さすがリコティカス産だな。そして、そこに魔石代も入るからと」
「仰る通りです」
難しい顔をしているシャンツァイと、辛そうに俯いているカメ少年を交互に見た。
「でもさ、高くても効果は本物なんやろ。それやったら、文句ないんちゃうの? それに、冒険者は欲しがりそうやん」
「お店を開店させた時はにぎわっていたんですが、1度冒険者チームと揉めてしまいまして……そこからはお客様が減ってしまったんです」
お店の口コミって大切やもんなぁ。
初めてのところなら、星何個以上じゃないと食べに行かへんとかしてたもんなぁ。
「言いにくいこと、たくさん聞いて悪かったな」
「いいえ。商売は信用が大切ですから」
いい子やし、いいお店と思うんやけどなぁ。
ちょっと薄暗いから入りづらかったけど。
「アユ、それにするのか?」
「うん、これにする」
「じゃあ、俺は防壁の指輪にするかな」
「指輪のサイズ分かるん?」
「知らないが、どこかの指に合うだろ」
そっかー。
お揃いで左手薬指とは違うもんな。
「2つも!? よろしいのですか?」
「ああ。プレゼント用に包めるか?」
「はい! お包みできます! ありがとうございます!」
ちなみにアクセサリーの使用方法は、はめ込まれている魔石を指で3回叩くと発動するそうだ。
何度もお礼を伝えられ、購入後はお店の外に出てまで見送ってくれるカメ少年に手を振って、大通りに戻った。
いいねやブックマーク登録、ありがとうございます。
読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。




