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3

浮遊感が訪れ、次の瞬間にはお尻に衝撃が走った。


「った!」


落ちた? 転けた? 一体、何やねん。


座った状態で辺りを見回すと、大きな部屋の床に描かれた魔法陣の真ん中にいることが分かった。

天井にはシャンデリア、壁には間接照明があり、部屋は明るい。


あれが家電じゃなく魔具かぁ。

普通に照明やん。

いや、照明はインテリアか。


立ち上がろうとして、着ている服が目に留まり、大声を出してしまう。


「はぁぁぁぁぁぁ!?」


うそやー!

なんでよりにもよって、死んだ時に着てた着物なん?

これお見合い用で、真っ黒な生地に登り龍やねんで。

はっっずっ!


「やっと来た」


「ん?」


呆れ返ったような声が、後ろから聞こえてきた。


振り返った先には、赤い瞳で、茶色の髪をツインテールにしている鹿っぽい顔の同年代の女の子が立っている。

服装はミニスカートにニーハイで、レース多めのメイド服だ。


睨まれているが、女の子の睨みなんて怖くない。

どれだけ人相が悪い人たちと一緒に暮らしていたか。

それでも、いい気分ではない。


立ち上がり女の子に向き直ると、女の子の肩越しに壁に寄りかかって眠っている男の子が見えた。

天パのようなクリクリの銀髪をしていて、目を閉じているが、きっと可愛い顔なんだろうと分かる顔立ちをしている。


その男の子の横には、護衛だろう騎士が5名立っている。

全員、赤い瞳だ。


何も知らんふりした方がいいんやろうか?


「自分、誰?」


いや、そんな驚かれても……

見知らぬ場所に見知らぬ人がおったら、普通は聞くもんちゃうの?


「あなた、記憶ないの?」


「あるけど、なんで?」


「だって今、自分のことが分からないって」


あー! 関西弁あるあるー!

自分 イコール あなたってことやから!

やっぱ通じへんのかー!


「それはごめん。うちが住んでたとこでは、相手のことを自分って言うたりすんねん」


「……他の聖女たちと違って、あなた独特なのね」


ってことは、方言使う聖女はおらんのか。

その子らは神様に会ったこととか言うたんかな?

うーん、分からん。


「他の聖女はどこにおるん?」


分かりやすいため息を吐かれて、首を傾げるしかない。


「あなたが遅いから、他の人たちは宴会場に移動したわ。まぁ、宴会も終わって眠っていそうな時間よね」


そうなんか。ハムちゃんと話しすぎたんやろな。


「ごめんな。うちのことは待たずに、宴会に参加して寝てくれててよかったのに」


「そうしたかったわよ! こんなに失礼な聖女だと知っていたら待ってなかったわ!」


うち、何か失礼なこと言うたかな?

いつもなら「待つのは当たり前やろ」って言う場面やけど、これからは自分を偽らず、思ったことを言おうと決めたからな。


でも、正直に言い過ぎるんはあかんのかな。

気をつけよう。


「すみませんでした。待っていてくれてありがとうございました。ってことで、休憩した方がいいやろうから移動しよ」


「ちょっ! 待ちなさいよ!」


待たせて疲れさせただろうから早く休憩をと、急いで歩き出そうとした。


だが、誰かに力強く腕を掴まれ、歩みを止められた。


突然のことだったので無意識に体が動き、前世で教えられた護身術を使って、腕を掴んだ人物を投げてしまった。


「ったー」


「あ、ごめん」


腰を打ちつけて顔を顰めている少年は、焦茶色のオールバックに、猿っぽい顔をしている。

見た目もひょろっとしている。


少年を投げてしまったお詫びに、体を起こす手伝いをしようと手を伸ばした。


「エルダー。女の子相手だからといって気を抜きすぎだ」


手を取って立ち上がったエルダーという少年は、罰が悪そうに苦笑いをしている。


エルダーが苦笑いを向けている相手、笑顔で注意してきた筋肉ムキムキの青年を見やった。


緑色のドレッドヘアをしていて、エルダーと同じ制服を着ている。

詰襟のかっちりした制服は暗めの赤色で、ズボンは黒色だ。

腰には、剣を差している。


「お前、強いっすね! 着物もパンチあるっすもんね! すごいっす!」


エルダーに肩を何回も叩かれ、痛くて反射的に力一杯叩き返してしまう。


痛いわ! うち、か弱い女の子やのに!


痛みで顔を歪めるエルダーを、ドレッドヘアの青年が笑っている。


「遊んでるんじゃないわよ!」


めっちゃ怒ってる。

絶対、休憩した方がいいって。

美味しいもん食べて寝たら、怒り収まりやすいんやから。


「マツリカ様、落ち着いてください」


ん? 騎士がメイドに敬語?


「あ、殿下が起きたっす。マツリカが五月蝿いせいっす」


「呼び捨てにしないで!」


殿下が起きたの言葉に、眠っていた男の子の方に視線を向けると、マツリカが駆けていく後ろ姿が見えた。




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― 新着の感想 ―
[良い点]  ここまで拝読させていただきました!  あらすじをみて、聖女で錬金術ってどういうことなのだろうと不思議に思っていましたが、本編に入り『ああ、なるほどそういうことなのか』と納得しました。  …
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