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「聖女だとしても恋はできるよ。それに、聖女として召喚されるから、治癒魔法使えないと何が起きるか分からないよ」


「治癒魔法や聖女って女の子の憧れやと思うよ。めっちゃ素敵やと思う。でも、聖女って1人おったらいいんちゃうの? そんなイメージなんやけど。やったら、うち、使ってみたい魔法というかスキルというかがあるねん」


そこが顎なんかな? と思いながら、たぶん顎に手をあてて考えているだろうハムスターを見つめる。


「分かった。そういう子が1人くらいいてもいいでしょ」


「ハムちゃん、最高!」


嬉しくて頬を擦り合わせると、満更でもない顔をされた。


「本当にいいんだね?」


「いい、いい。うちがやってみたいの錬金術やねん。聖女もどきにはなれるんちゃうかな」


「錬金術ね。ポーション作れるからいいかも。色々一緒に考えよう。聖女になるために、僕たちが君たちに与える魔法は3つあってね。治癒のキュール、解毒のエストラ、切れた腕や足を引っ付ける癒しのリザレイズ。それらをポイントに変換すると10000ポイントになるんだ」


ゲームみたい。

組員たちが夜中によくやってたなぁ。


「ふーん。じゃあ、そのポイントを、好きな魔法に振り分けていいってこと?」


「さすが知恵の神の僕が選んだ子。理解が早くて嬉しいよ」


立ち上がったハムスターがくるっと後ろを向き、両手を掲げると、斜め上に40インチくらいの画面が現れた。


「タッチパネルになっているよ。そこから好きなものを選んでね」


ハムスターは笑顔で画面を指した後、腕を登ってきて肩で座り直している。

同じ目線から画面を見るつもりなんだろう。


どんな魔法があるのかとスクロールしてみるが、量が多すぎて全部を確認できそうにない。


「まずは錬金術。後は、鑑定が欲しいかな」


「それなら下の方にあるよ。鑑定は、薬草や素材を探すのに便利だからね。いい組み合わせだと思うよ」


「後は何があればやっていけるんやろ」


ハムスターと話し合いをしながら、ポイントを使い切ろうと頑張った。

魔力は多いからどれでも難なく使いこなせるとのことだったので、便利そうなものを追加していく。


習得した魔法やスキルは、錬金術、鑑定、生活魔法、ホーリーガン(神聖銃)、空間収納の5つになった。


「もうこれで十分」


「まだポイント余ってるよ」


「うん。でも、身を守るための魔法はホーリーガンがあるから他の魔法はいらんし、生活してく上での魔法ももう十分やから」


「じゃあ、余った分のポイントは魔力にプラスしとくね」


「マジで? ありがとう、ハムちゃん!」


顔を斜めにして、頬を擦り合わせた。

ハムスターの面持ちは見えないが、先程と変わらない誇らしげな表情をしているはずだ。


肩で立ちがったハムスターは、腕をつたい、今度は手のひらまで降りてきた。


「次は、体だね」


「体って?」


「君の魂は喚び寄せたけど、体は喚んでいないからね。魂を入れる器を作成するんだよ」


キャラメイクってことやろうな。

動きやすそうなら、何でもいいけどな。


ゲームみたいにベースがあるのかと思ったが無かったので、前世の自分をこれから行く世界の外見にトレースしてもらった。

垂れ目で右目下に涙ボクロがあり、内巻きのボブヘアだ。


そこそこの可愛い子ちゃんになったので、髪の色を冒険してみようとしたが、黒目黒髪で合わせると神様同士で決めているらしく変えられないとのことだった。


「僕からは以上かな。何か質問はある?」


「うーん。これから行く世界は、どんな世界なん?」


「そうだね。さっき少し話したけど、聖女に世界を救ってほしくて喚び出そうとしているんだ。その原因は、魔物が活発になったことと、瘴気が漂いはじめたから。魔物と戦い続けていて怪我人や死人が増えていくし、瘴気のせいで食物も水も土地も空気でさえも汚染されていっている」


「だから、聖女が必要なんやね」


「だとしても、他の世界の子を承諾無しに喚び寄せていい理由にはならないけどね」


そうやんな。うちもハムちゃんの説明なく転生してたら、発狂してたと思うわ。

「救ってください」ってお願いされて、すぐに「任せて」って言える強靭な子っておらんと思う。

うち、説明されている今でさえ、救えるんなら頑張ってはみるけどくらいにしか思ってないしな。


まぁ、ハムちゃんがうちを選んでくれたんやし、錬金術でも大丈夫そうやから救えるやろ。


考え事をしている間も、ハムスターの説明は続いていく。


「聖女召喚に賛同した4つの国はどこも大きな国で、これから行く世界の中心だと思っていいよ。


フォーンシヴィ帝国は、ドラゴンの血を受け継いだ国で、黄色の瞳をしているよ。

力が強くて、4つの国で1番強い国だね。


ポリティモ国は、精霊の血を受け継いだ国で、緑色の瞳をしているよ。

魔法に長けていて、農作物の実りがいいね。4つの国で1番豊かな国だね。


リコティカス国は、海族の血を受け継いだ国で、青色の瞳をしているよ。

手先が器用で、物作りを得意としている。4つの国で1番裕福な国だね。


ウルティーリ国は、獣人の血を受け継いだ国で、赤色の瞳をしているよ。

3つの国みたいに特化したところはなく、程よく何でもできる国だね。


そして、誰でも魔法を使うことができるけど、1つの属性しか扱えない。それくらいかな」


「4つの国は仲良いん?」


「悪くはないって感じかな」


「ご飯は? 服装は?」


「君の世界とほとんど変わりないよ。電気はないけど、魔力で家電は動いているよ。これから行く世界では魔具って呼ぶからね。車とかはないけど、そもそも必要ない世界だからね。獣馬は物凄く速いからね」


「んじゃ、特に困ったりはしなさそうやね」


小さく笑ったハムスターはふわりと上昇し、目の前の空中に浮かんだ。


「僕から最後に1つ。本来、君の魂は輪廻の輪に戻る予定だった。でも、僕が君を選んだから、君は異世界に転生することになった。君は本当に転生していい? 今ならまだ止めることができるよ」


優しいなぁと、自然と笑みが溢れた。


「今更やで。うちはもう転生する気満々やから。やから、ハムちゃん見てて。ドラマや映画以上に楽しい話を見せてあげる」


歯を見せてニカっと笑うと、ハムスターは慈愛に満ちた瞳を向けてきた。


「君を選んで正解だったよ。辛いことが多いかもしれないけど、君ならきっと幸せになれると思う。新しい人生、大いに楽しんで」


「今度は、いつ死んでも未練がないような生き方をするわ。ハムちゃん、ありがとうね」


言われなくても、お別れの時間だと分かった。

ハムスターに手を振ると、両手で大きく振り返してくれる。


段々と霧が濃くなっていく中で、ハムスターの慌てたような声が聞こえてきた。


「あ! 僕の印、右手の甲に現れるからね」


「え? 分かった!」


答えた声が届いたかどうかは分からないけど、頷いてくれたような気がした。




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