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昼食が終わり、キャラウェイとは別れ、白亜の宮殿に戻ってきた。


執務室だろう部屋のソファで、シャンツァイと向かい合わせで座っている。

クレソンは、シャンツァイが王に返り咲いたことの処理をするために退席している。


「王と聖女として話をしよう」


「分かった」


「まずは、アユカが何をできるのか知りたい」


「できるんは、錬金術と瘴気の浄化と生活魔法とホーリーガンになる」


鑑定と空間収納もあるけど、これは隠してても問題ない。

シャンツァイを信用してないとかちゃうけど、奥の手は隠しておくもんやって霧島に習ったからな。


「錬金術とはなんだ? 魔法と違うのか?」


「属性魔法ではないかな。魔法陣を使って薬を作ったり、物を作ったり、魔物を捌いたり、料理したりできるねん」


「なんでもありなんだな」


「そういうわけでもないよ。石を金に変えることはできへんから。元々の物を一瞬で加工する魔法になると思う」


「なるほど。瘴気の浄化はキャラウェイから聞いた通りだろうから省くとして、生活魔法とは?」


「生活に便利な魔法で、シャンツァイ様にかけたお風呂の『クレネス』もその1つになる。後は掃除ができる『リーグ』に、濡れたものを乾かす『ドラグ』に、小さな火をつけるだけの『メファ』に、照明のように照らす『ラット』がある」


「そうか。最後にホーリーガンとは何か話してくれ」


「魔力を1箇所に集めて放つ魔法になる。この世界って、銃やライフルとかはあるん?」


「あるぞ」


「それと一緒。魔力の玉を打って、敵をやっつけられるのがホーリーガン」


聞き終わったシャンツァイは俯いてしまった。


返事をくれないと、何を話せばいいのか分からなくなる。

もっと詳しく話した方がいいのかなと思うが、今説明した以上の言葉を持ち合わせていない。


「クックックックック」


「シャンツァイ様?」


「悪い。我慢しようとしたんだが、無理だったようだ」


前屈みで俯いたままのシャンツァイが、小刻みに揺れている。

漏れるように聞こえる声もあり、笑われていると分かった。


「遠慮せず笑ってくれていいよ」


「ククッ。元々こんな笑い方だ」


そうですか。


「面白いな。クックッ。俺の女として丁度いい」


くはっ! 前髪の隙間から愉快そうな上目遣いぃ!!

しかも、俺の女って……俺の女ってー!


絶対、恋愛の達人やわ。

その人と恋人ってことは、ご教授いただけるってことやから、うちも恋愛の達人になれるんちゃう?

何年後かに、迷える子羊に道を示せる大人の女になれるやん!


「はぁ、笑った」


体を起こしたシャンツァイが、執務室に入った時にメイドが用意したお茶で喉を潤した。


「相談だが……どうした?」


「なにが?」


恋愛の達人になれると思い込み、顔を輝かせて、今にもスキップしそうに見えるアユカは、シャンツァイから見て相当おかしな女の子だろう。


そして、シャンツァイの眉間に皺が寄せられても、アユカは「お茶渋いんかな? 美味しいけどな」くらいにしか思っていない。


「まぁ、いいか。薬のことだが、どれだけ作ってもらえる?」


「材料があれば、いくらでも」


「材料を教えてくれ。用意する。そして、可能な限り作ってほしい」


「作るんはいいんやけど、うちが自分で取りに行きたい」


「……専属護衛にグレコマとエルダーをつける。2人の言うことを聞くように」


「リンデ一一


「リンデンはダメだ。騎士団のトップだからな。抜けられると困る」


騎士団のトップなんか。

あの筋肉やもんな。

納得!


「次に、魔物を食することだが、まずは王宮に取り入れようと思う」


「マジで!?」


「ウルティーリ国は、瘴気の被害で年々食料問題が深刻になってきている。魔物が食べられるなら解決できるが、抵抗が多い者が大半だろう。だから、王宮で食べて安全だと広める」


お、おお、おおおおおお!

なに、このめちゃくそイケメンな男は!!

この人、うちの彼氏やって!

すごい! 信じられへん!


「他にも香辛料の代わりになったり、食べられるものは教えてほしい」


「分かった。素材採取に行く時に、魔物捕まえて食材も取ってくるわ」


「……グレコマとエルダーに伝えておこう」


「あ! まだモンペキングの肉残ってるで。食べる?」


「そうだな。明日食べるか」


「明日?」


「今日はカレーなんだろ」


ここに来る前にシャンツァイが料理長を呼んで、伝えてくれていた姿を思い出す。


「うん! そうやったね。チーズを入れたナンで食べるカレー。楽しみー」


「持てる力を出し切って作ってくれるだろうよ。

次に、瘴気の浄化についてだが、元々食糧基地だった区域や食糧基地に近い場所から順にお願いしたい。月に2回ぐらいになるだろう」


「任せて」


「報酬は何がいい?」


「んー、お世話とお小遣いと自由」


「薬を買い取ったりするぞ」


「んじゃ、それをお小遣いとしてくれたらいいよ」


「それでいいなら、そうするか」


シャンツァイって、マジで話分かるわー。

あかんって言葉が出てこーへんもんな。

いい男やわ。


「次に、男と女としての話だ」


「う、うん」


「どの宮殿がほしい?」


「え?」


「聖女には、本来なら今いる宮殿、ロッククリスタル宮殿を与えることになっている。俺がここで眠っていたのは、少しでも加護があればと思ったんだろう。でも、お前は俺の女だからな。気に入った宮殿、どこでもいいぞ」


「んー、ここでいいよ」


「もっと大きくなくていいのか?」


「いい、いい。でも1つだけお願いがある」


「なんだ?」


「どこか1室に祈祷室がほしい。ミナーテ様の祭壇も作ってほしい」


「いいだろう。部屋は選んでくれ」


「ありがとう」


「後、俺もここに住むからな。朝は一緒に食べるぞ。夜も合わせられるなら合わせる」


「わわ分かった」


同棲!!?? 早くない!?

い、いや、同棲ちゃう。

シェアハウスみたいなもん。

本邸に住んでる時は、組員いっぱいおったやん。

同じ感覚のはず。


「アユカ。お前は俺の女であり、聖女だ。お前より偉いのは俺しかいない。気に入らねぇ人間は殺したってかまわない。覚えておけ」


「分かった。媚びへつらったりせーへん」


頷くシャンツァイに、笑顔で頷き返した。


「俺に求めるものはあるか?」


「1つだけある」


「なんだ?」


「肉体美のキープ」


「……気をつけよう」


「シャンツァイ様は、うちに求めることある?」


「様付けするな、くらいだな」


あ! 名前!

恋する乙女が憧れるやつやりたい!


「やっぱりお願いがある」


「言ってみろ」


「2人だけの呼び方をしたい。うちのことはアユって呼んでほしくて、シャンツァイのことは……あだ名あったりする?」


「ねぇな。好きなように呼べばいい」


「んじゃ、シャンにしよ。いい?」


「ああ、アユは特別だからな」


ぐおっ! 所々で心臓鷲掴みしてくる。

この男、マジでやりよる。


「最後に侍女を決めねぇとな。今から面接するか」


「それやったら、チコリがいい」


「チコリか。いいだろう」


話したいことは終わったようで、ロッククリスタル宮殿内を案内してくれた。


その際に「手繋ぐだろ?」と指を絡められ、アユカはずっと手に集中してしまい、各部屋の位置を覚えることができなかった。




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