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「ふふ、楽しみだな。どんな反応するんだろ」


小さなハムスターが、大きな鏡を心嬉しそうに眺めている。


「ミナーテ。何を見ているの?」


ミナーテが振り向くと、フロヴィーテが困ったように頬に手をあてていた。


「あ! フロヴィーテ、久しぶり。僕の庭に来るなんて珍しいね」


「あなた、今日の会議忘れているでしょ。呼びに来たのよ」


「本当だ! すっかり忘れていたよ!」


短い手足を使って立ち上がり、フロヴィーテの目線の高さまで浮かんだ。


「いつまでハムスターでいるの?」


「んー……アユカが、ハムちゃんって呼ばなくなるまでかなぁ」


「入れ込みすぎよ」


「明るく元気な子だから、見ていて楽しいんだよ」


「罪滅ぼしではなくて?」


ミナーテが向けてくる笑顔からは何も読み取れず、フロヴィーテはミナーテが眺めていた鏡を見つめた。

そこには、ゲイムの診察を受けているアユカが映っている。


「ウェスティアが怒っていたわよ。あの世界の物語の権利を、やっと手に入れたのにって。完璧な物語だったのにってね」


「ウェスティアが協力してほしいって言うから協力したのに、酷いなぁ」


「私たちが介入するなんてシナリオになかったでしょ」


「僕、アドリブ入れるよって伝えていたよ。オッケーしたのはウェスティアなのにさ。それに、シナリオ通りに動かなかったのは僕じゃなくてアユカだよ」


「それは、あなたが聖女の魂を変更したからでしょ。そのせいで色んな人たちの運命が変わったのよ。怒られて当然よ」


舌を出して惚け顔をしたミナーテが、「あ!」と嬉しそうにフロヴィーテの肩を叩こうとした手を空中でパタパタさせている。


「ほら見て、フロヴィーテ。アユカの笑顔は、こっちまで幸せになれるんだよ」


鏡の中には、飛び跳ねて喜ぶアユカと、青い顔をしてアユカを見守るゲイムたちがいる。

フロヴィーテは、呆れたように息を吐き出している。


「お腹の中の子供の運命は?」


「ペペロミアの奥さんが濃厚じゃないかなぁ」


「あなた、相当ウェスティアに恨まれるわよ。あの子が引き立てようとする魂たちを、次々に幸せにしてどうするのよ」


「僕はね、魂をより強く輝かせるために、わざと苦難な道を歩ませようとするのはどうなのかなと思っただけだよ。

僕たちは世界の理を決めるだけでいい。後は、生きていくモノたちが迷い、考え、決断し、愛を知っていけばいいんだよ」


「はぁ、ミナーテはそうよね。だから、あなたの世界はアドリブしかないのよ。しかも、あなた、あの星で亡くなった人たちの転生の手伝いをするらしいわね」


「大勢死ななければ手伝いはしなかったんだけどね。輪廻の輪に戻る手続きをするだけなのに、魂のまま順番待ちするのは寂しいじゃないか。だから、当分は休みなしなんだ。アユカの観察もここまでかな」


「だったら、ハムスターの姿止めなさいよ。言い合いをすると虐めている気分になるのよ」


「そうなの? じゃあ、会議が終わるまでは、この姿でいるよ。ウェスティアからの文句が少なくなってほしいからね」


「ひとまず、謝りなさいよ」


「もちろん」


駆けつけたシャンツァイに抱きしめられているアユカを見て、ミナーテは微笑みを残し、フロヴィーテと会議に向かったのだった。




〜 Fin 〜



最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

無事に完結できて、ホッとしています。

元気で前向きなアユカを書けて、とても楽しかったです。

皆様にも楽しんでいただけていたら幸いです。


次作は、契約で婚約するお話を書きたいなぁと思っています。

「悪役令嬢かもしれない〜」や「恋愛がしたい私の〜」のSSも書きたいと思っています。

全部願望ですが、投稿した際にはお付き合いいただければ嬉しいです。


ここまで読んでくださり、本当の本当にありがとうございました!めちゃくちゃ感謝していますm(_ _)m


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