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感情のないグンネラの瞳が、アユカに向いている。


「まさか制圧中の陛下に連絡をするとは思いませんでしたよ」


「なんでそう思うん? たまたま当てたかもしれんやん」


「アユカ様の居場所が分からなくなってからの時間ですよ。あそこからここまで辿り着くには、場所を分かっていないと不可能な時間でしたから。モエカ様の場所を知っているのは、陛下と私のみです。とくれば、陛下しかいませんよ」


「常にうちのこと監視してるなんて、熱烈すぎて吐きそうやわ」


「仕方がないじゃないですか。あなただけは呪いがかからなかったのですから」


うち、ホンマにかからんかったん? すごない?


「髪しか集められませんでしたから、確実にかかるよう聖女の力という制限を設けましたのにおかしいですよね。なぜ、アユカ様だけ免れたのでしょうか?」


それは、うちが特殊な聖女やからやろうなぁ。

教えるつもりは一切ないけどな。


「知らんよ。下手やっただけやろ」


「そうですね。私はこの数年勉強をしただけですからね」


「魔法陣のってこと?」


「ええ、私の願いを叶えるために、遥か昔に特別な魔法を用いていたというブルティーリ人を探していました。見つけたブルティーリ人は知識はあるのに魔力が少なく、私が勉強をして扱えるようになったのです」


「その人は、どこにおるん?」


「聖女召喚の魔法陣を盗み出してきたから帰る場所がないと申すので面倒を見ていましたが、アルメリアが実験体に欲しいと言ってきたので引き渡しました。先日、息を引き取ったそうです」


「アルメリアと結託して、何の得があったん? 4大陸を統一して、キアノティス様を祭り上げて、その横にパキラにおってほしかったみたいやけど、それを望んでるんはグンネラだけやん。迷惑やと思わんかったん?」


よく思い返したら、4ヶ国で国に被害が出てへんのはフォーンシヴィのみやねんな。

国を衰退させ、騎士を弱らせれば、フォーンシヴィに助けを求めるしかなくなる。

もしくは、そのまま滅んでいくか。


クテナンテ様が狙われたんは、ペペロミア様を身籠ったから。

キアノティス様の後継者は、パキラとの子供がいいと思ったからやろうな。

やから、2回目はペペロミア様を狙った。


きっと、アルメリアからうちの居場所を探すためにホノカを痛ぶるって聞いて、それなら怪しまれへんと思って乗っかたんやろうな。


「アルメリアと協力関係を結んだのは、動けない私に代わり、安易に動いてくれる人たちが必要だったからですよ。愛する人を手に入れる協力をすると言えば、簡単に頷いてくれました。全ての罪を押し付けられる人物は必要ですからね。

今だって、あなたにバレなければリコティカスが手に入り、鬱陶しい女どもは全員処刑できたんです。

何度計画を修正しようと、アユカ様に阻まれてばかりでした。聖女1人に手を焼くとは思いませんでしたよ。陛下が気にいるはずですよね」


うちに対して好感度は丸のままやから、大陸統一後の聖女をうちにしようと思ってたんかもな。

やから、多少アルメリアに虐められるとしても、全てが終わるまで隔離したくての誘拐やったんかもな。


はぁ、ホンマに好感度のところが落とし穴やったわ。


グンネラはうちを殺すつもりはなく、キアノティス様が治める国の聖女でいてほしかったってことやろ。

グンネラが理想とする国の聖女やから、うちを害する気持ちがなくて、力を認めてるから丸ってことやんな。

気づけてよかったわ。


「なぁ、そんなにキアノティス様しか王様になったらあかんの? シャンかって優しい王様やで」


「そうですね、シャンツァイ陛下のみ高い壁でした。あのまま逝去してくれていたら、ここまでのことをしなくてよかったんです」


ん? まさか……


「シャンを呪わせたんは、グンネラやったん?」


「気づかれてなかったのですね。私が助言したんですよ」


ほほう。悪びれもなく平然と言いよるやないか。

もしシャンが死んでたら、うちは幸せになれんかったし、どの世界においてもトップ オブ トップの肉体が失われたことになるんやで。

それを、何事もなかったかのように言うたな。

はじめから許すつもりなかったけど、絶対に許されへんわ。


「ってかさ、パキラのこと好きやのに、なんでキアノティス様の伴侶なん? グンネラが結婚したいとかないん?」


「卑俗なことを仰らないでくださいよ。陛下も魔塔主様も、聖女であるアユカ様よりも崇光な存在です。同じ空気を吸っているだけで光悦な心地を覚えるんですよ。私のような低俗な人間は、仕えられるだけ光栄なんです」


こっわ! マジもんで、こっわ!

いつも自信しかないパキラの頬が引き攣ってるやん。

パキラからドヤ顔奪うなんて大したもんやで。


こういう人の行き着く先がストーカーなんかな?

んで、思い描いた理想像から外れると、プッツンして攻撃的になるんかも。


「パキラとキアノティス様以外が低俗ってことは、もしかして、キャラウェイが気に食わんから殺そうとして魔物送りつけたん?」


「ええ、そうですよ。あんな泣くことしかできない弱い子供が、パキラ様に似合うわけないでしょ。どうしてバレた、かは……わ、わかりま……せんが……」


パキラの殺気に、うちも泣きそうや。

グンネラも話せんほど震え出したし、モエカなんて気絶してもたやん。


「アニス、半殺しはいいよね?」


「パキラ様、私も殴りたいのです。半半殺しでお願いします」


怖いわー。怒らせたらあかん2人を怒らせてもた、グンネラの自業自得やわ。


「2人とも半殺しでいいよ。死なんかったらいいんやから。殺した人の分、何度も回復して、何度も死にかけたらいいねん」


「いい案だね」


残酷かもしれんけど、うちはホンマに許す気ないから。

理想を追い求めるんは素敵やと思う。

やからって、罪もない人たちを駒として使っていいわけちゃう。

ましてや、殺してしまうとか、許しようのないことしたらあかんねん。


グンネラの鈍く低い呻き声を聞きながら、アユカは倒れているメイドを治療した。

ただ自業自得だと思っていても、心には鉛のようなものが溜まっていく。

早くシャンツァイに会いたいなぁと、通信石を取り出し、連絡が来るのを待った。




明日は11時の1話のみの投稿になります。


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