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もう少しで何か分かりそうだが、決定的な考えが思い浮かばない。

それに、不死身の騎士を信じていいのかどうかも、まだ決められない。

となれば、不死身の騎士を取り逃がすことはできない。


「なぁ、ユーフォル。敵ちゃうっていうんなら、うちに協力してや」


「アニス!!」


「何を言い出すんだ!」


パキラとアスプレニウムから、肩を掴まれそうな勢いで言い寄られた。

アユカは2人を見ずに、瘴気を眺め続けているユーフォルを真っ直ぐに見つめている。


「できないな。私は聖女が嫌いだ」


「協力してくれたら、呪い消しちゃるで」


ゆるゆると時間をかけて、ユーフォルの視線がアユカに向いた。


「そうか。死ねない理由は呪いだったのか」


「死にたいんやろ。呪い消えたら死ねるで」


「2つ条件がある」


「なに?」


「死に場所は、フォーンシヴィとウルティーリの境目近くにあるカシュ村。そして、聖女。君が私の心臓を貫くこと」


アユカは、目を閉じ小さく深呼吸をした。

人が息絶えそうな所は、何度も見てきた。

こっちの世界に来てからは、トックリランが死んだ所を見ている。


だが、誰かを殺めたことはない。

感覚が麻痺をするのか、命の重さに押し潰されるのか、想像することはできないが、自分がどう選択したいのかは分かっている。


「いやや」


「そうか。残念だ」


「でも、呪いは解くから、いくつか質問に答えてほしいねん」


考えるように視線を逸らしたユーフォルが小さく頷き、再びアユカと視線をぶつけてきた。


「いいだろう」


「ありがとうな。まず、シリールルについて教えてほしいねん。なんで、あんなことしたん? マチューを食べへんかったら、あの村は感染病に罹らんかったのに」


「シリールルはれっきとした貴重な果物だ。それに、感染病の原因はマチューではない」


「はぁ!? だってやで、シリールルは中毒起こす実やんか! それに、マチューちゃうかったら、どっから罹るんよ」


「シリールルはマチューの好物だが、煮詰めれば精神安定剤になる。安穏な気持ちになれる実だ。そのままでは酸味が強いが、煮詰めれば甘くなる実だ。

マチューに関しては、昔は食事の定番だった。感染病になった青史はない」


ああああああ! なんていう落とし穴!


その言い方やと、村の人らには煮詰めるように言うてたかもやん。

いや、まぁ、そのまま食べたらあかんっていう注意事項を、きちんと言うてたんかは定かちゃうけどさ。

でも、うちは実の説明の時、煮詰めることは言わんでいいかって省いたはずやねん。

あの時伝えてたら、別視点で物事を考えられた可能性あったんやわ。


マチューに関しては、話を聞いた上で断定したものであって、うちはマチューを鑑定したことがない。

でもさ、子供たちが食べたんがマチューだけって話やったやん。

マチューちゃうかったら、どっからやねん!


「やったら、ズカードの実は? ユーフォルが街にバラ撒いたんやろ?」


「私は、バラ撒かれていた実を回収しただけだ」


「そん時に会った小さい女の子分かる?」


「ああ、話したな。私に怯えず勇気がある少女だった」


「ピンクの実が売られるって教えたんやろ?」


「親に話せば注意をすると思ったからな。探していると伝えて、協力すると言われたら困る」


「じゃ、じゃあ、その子、視力失くすほど殴られたみたいなんやけど、正体見られたとかではないん?」


「ない。困るなら殺せばいいだけのこと」


やんなー。うちが疑問に思ったことやもんな。

もしかせんでも、マトーネダルが半壊で、ルクストブネトが全壊やったんは、ユーフォルがマトーネダルにバラ撒かれた実を集めてくれたからってことか。


「や、やったら、東洋の商人っていうんは? トックリランと繋がったり、アルメリアと協力したりっては、なんでなん?」


「トックリランという男は知らない。アルメリアに関しては、向こうから連絡があった。どこで聞いたのか知らないが、不死身に興味があるそうだ。話を聞くと、危うい試みをしていた。だから、監視をするために時々訪れていた。私は東洋の商人だから、訪れる理由は作れるからな」


「東洋の商人っていうのは、本当なんや」


「ああ、今の王たちはどうか知らないが、身の保証がない色が違う私は、どの国にも受け入れてもらえなかった。至る所に傷もあるからな。不気味で仕方がなかったんだろう。逃げ道はブルティーリ人が教えてくれた東洋しかなかった。だが、私の愛し人の墓は、この大陸にある。来るためには商人になるのが1番だったんだ」


「もしかして、お墓があるんが、シリールルの実を育ててもらう予定やったカシュ村なん?」


「そうだ。取引で訪れれば、何度も行けるだろう」


「んじゃ、混乱を起こして、この大陸が欲しいとか思ったことないんやんな? 人を殺してるとかないんやんな?」


「昔は暴れて殺したこともあったが、今では億劫だ。人を殺して、大陸を手に入れて、何になる? 私はただ、この生を終わらせたいだけなのに」


はぁぁぁぁ……体から力が抜けそうやわ。

これも思ったことあるやん。

今更、大陸欲しいとかないよな。

欲しいんやったら、もっと昔に反乱起こしてるよな。


うちには、目の前におるユーフォルが嘘を吐いてるようには思えん。

バツ3つやけどな。聖女が嫌いって言うてたからな。

やからって、嘘を吐く吐かへんは記号と関係ないってことやろ。


ってことはさ、黒幕かどうかは分からんけど、あの人を捕まえなあかんってことやんな。

色んな事件はアルメリアを中心とした人らで関係ないんかもしれんけど、クッソ馬鹿げた召喚の発案者が関わってるかもしれんからな。




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