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「アニス嬢、我々も中に入ろう」


「ううん。うちは聖女やからね。この場面をひっくり返すわ」


「どうやってだ?」


「ずっと空見てて気づいたんやけど、水滴の波紋のように瘴気が波打ってるんねん。円状に広がってるんか、円状に濃くなっていってるんかの、どっちかやと思うねん」


「なるほどね。瘴気を生み出してる物、それを扱っている者が円の中心にいるんだね」


「そうちゃうかなって。んで、大陸の真ん中と言えば……よな」


「聖女の湖か」


パキラが、黒い笑顔でおかしそうに笑っている。

狂ったと言ってもいいほどに、邪悪に見える。


「面白いね。今はフォーンシヴィの管理下にあるはずなのにね。巡回している騎士が負けたのか、はたまた寝返ったのか、確かめに行ってみようよ」


「巡回の騎士はどっちでもいいけど、うちはそこに不死身さんがおることを祈るわ。リコティカスはなくなってしまうんやから、不死身さんにも落とし前つけてもらわなあかんからな」


「待ち伏せをしている可能性もある。私も行くぞ」


頷き合った後、手を繋いで、瞬間移動で聖女の湖に向かったのだった。



聖女の湖に到着したアユカたちは、見えた景色に瞳を鋭くさせた。


湖が黒く染まり、竹ぐらいの太さの煙が、湖の真ん中あたりと空を覆っている瘴気とを繋いでいる。

湖は外側から内側に向かって円状の波紋が波打ち、空は湖と繋がっている部分から外に向かって円状の波紋を広げている。


前回訪れた時に綺麗になった湖が、どういう理屈で瘴気製造所になったのかは分からないが、湖から瘴気が吸い上げられ空に広がっているのだ。


まずは、湖の瘴気を祓って、空への広がりを止めるしかない。

だが、簡単には祓わせてくれないようだ。


「やっとおでましやん。会いたかったわ」


ここにアユカが来るのが分かっていたかのように、湖の側に傷だらけの騎士が佇んでいた。

そして、感情がない瞳でアユカを見てから、空に昇っている瘴気に視線を戻している。


「無視された!」


「アニス、そういう問題じゃないよ」


「隙がないな」


大事な場面やと思うけど、2人も冷たいわ。

だってやで、悪党を倒すとこなんやで。

「よく来たな」って不敵に笑ってほしいやん。


んで、ズタボロにして、顔だけ出した状態でコンクリに埋めるねん。これぞ生き地獄。

って、ドラム缶は見たことないな。

まぁ、詰められるんなら何でもいいか。


不死身の騎士ではなく、アユカが不穏な笑みを浮かべている。

緊張感が皆無に見えるアユカだが、勝つためにと三日月にした瞳できちんと『アプザル』していた。


名前は、ユーフォル。

最後にアルメリアを見たときに言ってた名前やん。

やっぱり仲間やってんね。


んで、レベルが……777。大当たりやん! って、ちゃうわ!


現実味なくて突っ込んでもたけど、そんなこと言うてる場合ちゃうねん。


あっれー? ヤバいな。パキラとアスプレニウム様おっても負けるやん。

ここに、シャンやキアノティス様足しても負けるやんなぁ。


問題はコンクリに埋めたところで、自力で抜け出せるってことよ。

他の生き地獄、考えなあかんやんか。


まぁ、どうにか倒すとして、気になるんは鑑定に不死身ってでーへんことよ。

不死身っていうんが嘘?

でもなぁ、年齢見る限りありえへん歳なわけですよ。

見えてる傷が死んだ回数の証なら、聖女の日記は真実ってわけやし。


やったら、考えられるんは1つよな。


答えは、表示されてる呪いって文字やと思うねんな。

死なれへん呪いちゃうかな。


死んでほしくない愛情と、裏切られた憎悪と、愛してくれへん嫉妬が混ざり合って、知らん間に呪ってしまったんやろうな。


他に不死身の理由が思い付かんもんな。

ほんと、まぁ、イカれた初代聖女様やったんやね。


ただ静かに時が過ぎる空間を割ったのは、ユーフォルだった。


「聖女よ。なぜ、私の邪魔をする?」


「関係ない人らを殺すからやろ」


「なるほど。私が殺していると思い違いをしているのか」


「は? いやいやいやいや、他に誰がおるんよ。危険な実を使って魔物を誘き寄せたり、アルメリアたちと結託したりしてるやん」


「結託か……見張るために何度か顔を出したが、仲間ではない」


えええええ!? どういうことー!?

しらを切り通されてんの?

でもさ、状況的証拠がたくさんあるやん。


「それと、誰に追跡魔法をかけられているんだ?」


「え? うち?」


「巾着の中だろうな。かけられているぞ」


アユカと不死身の騎士が話している間、パキラとアスプレニウムは切りかかるタイミングを測っているが、その瞬間は一向に訪れない。

不死身の騎士は、ずっと瘴気を見つめているままなのにだ。


「そうだ、聖女よ。私の体はこの瘴気に耐えられると思うか?」


「無理やろ。いくら死なんくても、人類初めての魔物になるんちゃうかな」


「それは困るな。知能は必要だ」


アユカは話しながらも、採取した薬草や素材、自身が作った薬以外の巾着の中身を出しはじめた。

といっても、それ以外に入っている物なんて無いに等しい。

必要な物は、ミナーテから授かった空間収納にあるのだから。


取り出した通信石を見て、アユカは瞳を瞬かせた。


そういや、そうやん!

キノアティス様がくれた通信石には、追跡魔法かかってる言うてたやん。


でもさ、なんで2重にかかってんの?


シャンと通信石繋げられるようにした時は、うちがやってみたくてやらしてもらったからな。

やから、心配性のシャンやけど、追跡魔法をかけることはでけへん。


キアノティス様が念のためって、2個かけたとか?

そんなことある?


もし、キアノティス様ちゃうんやったら、これ触ったんはうち以外やとステビアになるけど……

そういやステビアは、初めて会った時も追跡魔法かけた連絡先を渡してきたよな。


ん? どういうこと?




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