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クテナンテが落ち着きを取り戻し、ホノカの力も特殊回復薬で戻った。


飛び跳ねるように喜んだホノカは、刹那、倒れるように眠ってしまい、アスプレニウムによって客室に運ばれていった。


きっと十分な睡眠を取れていなかったのだろう。

痩せたこともそうだが、ホノカの顔色はいいとは思えなかった。

少しでも安全なところで、ゆっくり心を休めてほしいと願うばかりだ。


そして、眠ったホノカの代わりに起きてきたペペロミアと、アユカは遊んでいた。


「もう立つなんて、天才やん」


「まだつかまり立ちですが、他の子供に比べて少しだけ早いそうです」


「そうなんや。ペペロミア様は足腰強いんやろねぇ」


なんていう、ほのぼのエピソードをシャンツァイとしようと思っていたのに、ホノカたちと一緒にウルティーリにやってきたアユカは叫んでいた。


「なんで今言うんよ! 昨日、連絡くれたらよかったやんか!」


「怪我はポーションで治ったし、宮殿は無事だからな」


「そういうことちゃう!」


ウルティーリに到着すると、クレソンが珍しくシャンツァイの側で控えていた。

アユカの無事を知ってはいたが、姿を見られたことでようやく安心したそうだ。

涙目になって喜んでくれていた。


クレソンがシャンツァイの側にいた理由は、ホノカたちを客室に案内するためだそうで、早々に部屋から消えていった。


同時に、キャラウェイの元に行くパキラも姿を消していた。


2人になってイチャついた後で、シャンツァイから魔物たちが襲ってきたという話をされたのだ。


王城を埋め尽くしてもおかしくない数に、シャンツァイもリンデンも怪我をした。

シャンツァイは骨が見えるほどの深い傷を、リンデンに至っては左腕を失くしたと言われた。

後方を任せていた第1騎士隊にも、怪我人が多く出たそうだ。


王都ではすぐに避難命令が出されて、昨日は夜中まで騒然としていたらしい。


「ミナーテ様のおかげで騎士以外に怪我はなかった。何かお礼をしたいが、何がいいと思う」と言われて、アユカが叫んだのだ。

言おうと思っていたほのぼの話なんて、とうに頭から消え失せている。


「リンデンは!? 腕、戻ってんやんな?」


「大丈夫だ。ハイポーションで戻ってる」


「はぁ、よかったわ。国宝が失われるとこやった」


「……筋肉バカが」


「いいやんか! 筋肉は努力の結晶なんやで!」


「そうかよ」


少しだけ強く頭を撫でられ、髪の毛を乱された。

「ひどいわ」と唇を尖らせると、シャンツァイに唇を噛まれる。

「それ止めてや」と言うアユカを、シャンツァイが笑うのだ。


お互い、全部わざとしていることだ。

大変なことが次から次へと起こるが、戯れ合う時間が温かくて、笑顔を忘れずにいられる。

大きな事件が起こるほど、この時間の大切さが身に染みてくる。


「ポーションは足りたん?」


「足りなかったが、傷薬でも問題ない範疇の怪我だ」


「まだ何か起こるかもしれんから、何本か置いてくな」


「助かる」


「でもな、シャン。ポーションがあるからって無茶したらあかんねんで。無茶するためにポーションがあるんとちゃうんやからな」


「その言葉、そのまま返すぞ」


「うちは無茶なんてしてへんやん。ちゃんと自分ができる範囲でしかやってへん」


呆れたように息吐き出さんでもいいやん。

うちは、間違ったこと言ってへん。絶対に間違ってへん。


「てかな、連絡くれたらパキラにお願いできたねん。キャラウェイが危ないからって言うたら、絶対協力してくれたよ。シャンが強いんは分かってるけど、もしもがあるかもやろ」


「分かった。次に何かあった時は魔塔主の力を借りる。それでいいだろ」


「絶対やで。約束破ったら往復ビンタやから」


瞳を瞬かせたシャンツァイが、声を出して笑い出した。


「なんで笑うんよ。往復でビンタされるとか、めっちゃ嫌なことやん」


「アユらしいと思ってな」


「答えになってへんわー」


頬を膨らませると、今度はほっぺたを噛まれた。

「ほっぺまで噛むなんて、シャンは節操なしや!」と真っ赤になって訴えると、シャンツァイは「アユ限定なのにな。とんだ濡れ衣だ」と肩を揺らして笑っていた。




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