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何かに勘づいたように立ち上がったアユカが、パキラに向かって叫んだ。


「パキラ!」


「うわっ! ビックリした。話しかけても反応なかったのに、急になに?」


「ペペロミア様やわ!」


「なにが?」


「後から説明する。まずは、ペペロミア様を安全な場所に移動させてほしいねん。絶対にキアノティス様以外には分からん場所に」


「よく分からないから、一旦つれてくるよ。クテナンテも一緒に。説明がほしいだろうからね」


言い終わるなり、パキラが姿を消した。

アスプレニウムの顔は落ち着いているが、声は少し揺れている。


「アニス嬢。ペペロミアが危ないのか?」


「確信はないけど、可能性が高いと思って。うち、ミーちゃんつれてくるわ」


アユカが寝泊まりしている部屋に行くと、ミーちゃんが小さく鳴いた。

「今日は遅なってごめんやで」と言いながら鳥籠から出すと、アユカの頭上を1周回った後、肩に留まってくる。


人差し指で頭を撫でてからダイニングに戻ると、泣いているペペロミアを強く抱きしめているクテナンテの背中を、アスプレニウムが撫でていた。


「アニス、間一髪だったよ」


「そっか。よかったわ」


アユカに気づいたクテナンテが、泣きながら頭を下げてきた。


「この度もペペロミアを救っていただき、誠にありがとうございます」


「いいよ、いいよ。パキラがいてくれたから間に合ったんやろうし」


ミーちゃんは、アユカの肩からふわりと飛び立つと、クテナンテの肩に留まりなおした。

ミーちゃんが視界に入っただろうペペロミアは、泣き止み、静かに眠りに落ちていった。


「アニス、どうして分かったか聞いていい?」


パキラの質問に、全員、アユカを見ている。

ミーちゃんは、アユカの肩に戻ってきた。


「ホノカが手紙を見られるって話してくれたからやよ。うちには、それがイフェイオン様ちゃうくって、別の誰かの監視に感じてん。んで、さっき、わざわざラペルージアがホノカに会いに被災地にまで来たわけやん。理由を考えたら、うちの居場所を調べようと思ったんちゃうかなって」


「もし知らなくても、手がかりくらいはってこと?」


ホノカの質問に、アユカは小さく頷いた。


「ホノカが刺されたんも、うちが治すために現れると踏んでやと思うねん。まぁ、現れんでも、ホノカを苦しめることができたら万々歳やったと思うけどな。やから、刺して試したんやろね」


「私が薬で治ったから、確実にアユカの居場所を知っていると思って、あの女が来たのね」


「そう思ったけど、もう1個可能性出てきたわ。ホノカを人質にして、うちを誘き寄せたいんやわ」


「アニスを見つけられるし、他の聖女もいたぶれるしで、一石二鳥だと思ったのかもね」


「やけど、ホノカが霧のように消えてもたわけよ。となると、他にうちの居場所を知ってそうなのは……」


「クテナンテってことだね」


「シャンやキアノティス様を尋問なんて無理やん。それは、クテナンテ様にも言えることやろうけど、ペペロミア様を狙えば話が変わってくる」


「抵抗できない赤ん坊を攫うのは簡単だもんね。僕が到着した時、ちょうどペペロミアは知らない奴に掴まれていたわけだし」


「そうなん!? ホンマに間一髪やん! 怪我してない?」


「骨が折れてたけど、アニスの薬で治ってるよ。クテナンテが持っててよかったよ」


涙を止めるように深呼吸したクテナンテの顔は、母親から皇后に様変わりしていた。

意志が強い瞳が、そこにある。


「私の執務中、ペペロミアは隣の部屋でメイドと過ごしております。事件が起きた時、隣の部屋からペペロミアの泣き叫ぶ声が聞こえてきまして、慌てて駆けつけたらメイドも護衛騎士も倒れておりました。そして、執務室にいた者たちも、いとも簡単に倒されました。私も金縛りのように動けなくて攻撃すらできなくなり……目の前でペペロミアの腕を折られた時に、パキラ様が来てくださったのです」


「キアノティス様とは部屋離れてるん?」


「執務室は隣ですが、陛下は会議で隣にはいらっしゃらなかったのです」


「そっかー。ホノカの周りだけやなくて、フォーンシヴィの王城にも敵がいるんか。しかも、キアノティス様の予定を知ってる距離に」


「あ! 今頃、発狂してるかもね。キアノティスがいない間にクテナンテとペペロミアが消えて、周りは血の海なんだから」


ちょっと、パキラさんやい。笑いごとちゃいますよ。

お腹抱えて笑ってる場合ちゃうんですよ。

キアノティス様以外にバレんようって言うたんやから、キアノティス様には言うてきてほしかったんですよ。


「キアノティス様にはシャンから連絡してもらうわ。んで、クテナンテ様とペペロミア様には、ホノカと一緒にウルティーリに行ってもらうわ。一緒におる方が旅行みたいで楽しいやろ。

んー、でも、アスプレニウム様に守ってもらう方が安全なんかな?」


「いいえ、私はウルティーリに参りますわ。お祖父様には、アニス様を守っていただきたいですので」


「アニス嬢の恩に報いるために、必ず守り抜くよ」


「お願いいたします。お祖父様」


パキラがおってくれたら擦り傷1つせーへん気がするけど、2人がそう決めたんなら、うちは何も言わへんよ。

何を言っても平行線になる気がするからな。




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