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ホノカは唾を飲み込むと、震える手で机の上に置いてある魔道具を指した。


盗聴防止だと気づいたパキラが緩く頷き、触れている。


そして、姿眩ましの魔法を解いたのだろう。

大粒の涙を流したホノカが、アユカにぶつかるように抱きついてきた。

アユカは倒れそうになったが、どうにか踏ん張り、ホノカを受け止めている。


「アユカー! 無事でよかったー!」


「連絡せんくてごめんやで」


「会えたからもういいよー。会いたかったよー」


「うちも会いたかったわ」


アユカがホノカの背中を柔らかく叩くと、ホノカはゆっくりと離れていく。

ただ、手はお互いの腕を触ったままだ。


「ホノカ、迎えに来たねん」


「ウルティーリの迎えって、アユカだったの?」


「ううん、違うよ。詳しくは移動した場所で話すわ」


「え? でも……」


「シャンは知ってるから大丈夫やよ。イフェイオン様には、ホノカの居場所だけは教えるかもな」


アユカとホノカを見ていたパキラの耳が動いた。


「アニス、ラペルージアが来るみたい。殺しておく?」


「来る前に消えるよ。ホノカおらんかったら悔しがるやろ」


左側の口角だけ上げてニヤけるアユカの方が、見る人によっては悪人に見える。

そんなアユカの顔を見たパキラも怪しく笑っていて、ホノカは瞳を瞬かせていた。


「帰るね」


パキラが触れてきたと思ったら、もうアスプレニウムの屋敷に戻っていた。

瞬間移動の回数というより、何度も移動する先に関しては浮遊を感じなくなっている。


「え? え? え?」


「パキラ、絶対腕上がってるわ」


「当たり前でしょ」


顔を大きく左右に動かしているホノカそっちのけで、アユカとパキラは仮面とローブを脱いで、軽く体を解した。

別に窮屈とかではないのに、日常生活のルーティンのように首と腕を動かしてしまうのだ。


「アユカ! なにこれ! 魔法なの!? 凄すぎるんだけど!」


「でしょ、でしょ。もっと言っていいよ」


顔が見えなくなるほど胸を張るパキラと、アユカを交互に見たホノカが、アユカの腕を掴んできた。


「この女の子の魔法なの!? ヤバいよ! 天才少女現るだよ!」


パキラの今の見た目は、キャラウェイに合わせているから10歳前後だ。

事実を知らないホノカのテンションが上がるのも無理はない。


興奮して鼻息荒くなるホノカが面白くて、アユカは声を上げて笑い出した。

キョトンとするホノカとパキラが、アユカを見ている。


「痩せたみたいやし色々あったやろうから心配してたけど、ホノカが元気でよかったわ」


「元気じゃないよー! ほんっとうに大変だったんだよ。アユカにポーションもらってなかったら死んでたんだから。アユカ、本当にありがとうね」


静かに泣き出したホノカをアユカが抱きしめると、ホノカはアユカにしがみついてきた。

嗚咽を漏らしながら泣くホノカが落ち着くまで、アユカはホノカの背中を撫でていた。


「はぁ。やっと、元気出てきた」


ようやく微笑んだホノカは、吐き出せるものを吐き出せて、スッキリしているように見える。


「よかったわ。色々話す前に、お昼ご飯にしよ。紹介したい人らもおるし」


「食欲なかったけど、アユカと一緒なら食べられそう」


ホノカと微笑み合って、瞬間移動してきた部屋からダイニングに行くと、いつの間にかいなくなっていたパキラはすでに食べはじめていた。

アスプレニウムは、心配そうな顔をしながら待ってくれていた。


ホノカにパキラとアスプレニウムを紹介すると、ホノカは2人の肩書きに顔だけではなく体まで伸ばすほど驚いていた。


昼食を取りながら、アユカは誘拐された時からの話をホノカにした。

説明をするには昼食時間だけでは足りなくて、そのままお茶に突入している。


「そんなことが起こっているの!? イフェイオン様は絶対知ってたはずなのに、教えてほしかった」


「知ってるんかな?」


「絶対に知ってるよ。だって、私にラペルージアのこと聞いてきたもん」


そうなんか。

それなら、知ってるかもやけど、シャンかキアノティス様に聞かれただけかもしれんしな。

ホノカのことやなくて、うちのことで動いてくれるとは思えんもんな。

うちのことは説明できたから、ホノカの話も聞きたいけど、その前に……


「なぁなぁ」


「なに?」


「イフェイオン様と、どうなったん?」


「とりあえず、付き合ったよ」


「えええ!? なんで教えてくれんかったん! 教えてくれる言うたやん!」


「ほら、この世界ってメールないから。こう、なんていうか、教えるタイミングがね」


「手紙があるやん」


「チェックされるんだよ。書けないよ」


「それって、イフェイオン様がするん?」


「ううん、メイドにされた。アユカのお花送る時に書いた手紙が初めてで、その時に知ったからよかったけどね」


「やから、2回目も短い文章やってんね」


「友好関係くらい好きにさせてほしいよね」


うーん、でもさぁ、イフェイオン様がそこまでするんかな?

ホノカの行動を見張ってるってことやろ。


うちとホノカが仲良いんはフォーンシヴィの滞在中のことで分かってると思うから、うち宛の手紙を調べる必要ないやん。

シャンとイフェイオン様は、仲悪くは見えんかったしさ。


やったら、イフェイオン様やなくて、違う人がホノカを見張ってたとしたら? やんな。


ってかさ、ラペルージアが、ウルティーリに移動することが決まったホノカに会いに来た理由はなんやろか?

ウルティーリに移動する前に殺したかった?


それなら、移動中に奇襲かける方を選ぶよな。疑われたくないやろうし。

他には……


ああ、分かったわ。うちの居場所を吐かせたいとかやわ。

うちに手紙を送る仲であり、保護先がウルティーリとくれば、うちとホノカは親密な関係になる。

実際、親友やしね。

うちを匿ってる可能性を考慮して、尋問でもしようと思ったんかもな。




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