表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/209

18

長かった帰路が終わるという前日の夜に、2個目の事件は起きた。


瘴気を消せたことが嬉しくて眠れなかったアユカは、あらゆる薬を錬成していた。


風邪薬や痛み止め、塗る痛み止めに傷薬、二日酔い止めや乗り物酔い止めなどを作った。

何より、万能だろうポーションは作れるだけ作っていく。

必要な素材が1本分しかなかったが、呪い返し薬も作った。

呪い消しじゃなく呪い返しにしたのは、ただ単に素材があったからだ。


素材を使い切る勢いで作っていると、なんとなく物音が聞こえた。


誰かがお手洗いに行ったんだろうかと思ったが、その割には近づいてくる足音がある。

それに、堂々と歩けばいい。

かすかに聞こえてくるなんて、おかしい。


錬成を止め、息を潜めて、耳を済ませた。

アユカのテントを囲むように止まった数個の足音に、唾を飲み込む。


落ち着け、アユカ。

ここで死んだら、また恋できへんままやで。


目を閉じ、小さく深呼吸して、どこにいるのか気配を読もうと神経を集中させる。


たぶん出入り口にはいてへんと思う。

やったら、駆け足で外に出て戦おう。


眠っているだろうみんなにも危険を知らせないとと思い、今日作ったばかりの竜笛を取り出した。


舐められたら困るわ。

何回、誘拐されてきたと思ってんねん。

その度に、どれだけしんどい修行させられたか知らんやろ。


大きく息を吸い込んで、1番高い音を響かせる。


夜の澄んだ空気は音を強く伝達するため、起こす合図にもなれば、相手を驚かせて隙を作ることもできる。


1呼吸分鳴らし終わったら外に駆け出し、電気(照明)の魔法『ラット』と叫んで辺り一面を照らした。


黒装束で目しか出ていない人たちが10人、眩しさで顔を顰めている。


「敵だー!!」


アユカが叫んだ時には、黒装束の人たちは数人地面に倒れていた。


「アユカ、無茶しすぎっすよ」


「そうだぞ」


倒したのはエルダーとグレコマだったようで、2人は話しながらも敵を斬っていく。

フラックスは、キャラウェイとマツリカを守りながら敵を倒している。


「あれ? そういえば、見張りの2人は?」と思考に引っかかった時、炎の玉が飛んできた。


「「アユカ!」」


火の玉は、アユカに当たる前に空中で弾け、白い光る粉になって消えていく。

アユカの手には、木でできた拳銃が握られている。


「なんすか? あれ」


「あー! いい、いい! アユカ様のことは気にすんな」


「はいっす」


火の玉を投げてきただろう驚いている黒装束の人に、銃口を向けた。


驚くよな。

聖女が戦えるなんて、ましてや人に拳銃向けるなんて思わへんもんな。


まぁ、本当は指先を向けたらホーリーガンは放てるんやけど、うちとしては指先よりも銃の方が狙いを定めやすいんよね。


やから、密かに木で作ってたんよ。

魔力の圧縮玉なだけらしいから、銃でもいけるって思ってな。


固まっている場合じゃないと動き出そうとした黒装束の人は、動き出す前にグレコマの風魔法で切られていた。


あっという間に立っている黒装束の人はいなくなり、エルダーたちは剣を収めている。

アユカも拳銃を巾着に入れ、緊張を解すように肩から力を抜いた。


「アユカ様!」


泣き出しそうな顔で駆けてきて、勢いよく抱きついてくるキャラウェイを受け止める。


「無事でよかった」


「キャラウェイ様も怪我してないようでよかったわ」


しがみついてくるキャラウェイの頭を撫でながら、辺りを見回す。

エルダーとグレコマが黒装束の人たちを縛り上げていて、フラックスは泣いているマツリカをあやしていた。


なんでやねん。

あかん。つい、ツッコんでもたやん。


「アユカ様、怪我してないか?」


「うちは大丈夫。それよりも見張りの騎士たちは無事なん?」


「今、エルダーが探している。殿下も無事ですか?」


「うん、僕も大丈夫」


「よかったです」


「副隊長! 見つけたっすー!」


馬車向こうから、エルダーの声が聞こえた。


どうやら見張りだった騎士2人は、縄で縛られた状態で眠っていたそうだ。

「護衛騎士失格だ」と、グレコマに叩き起こされていた。


ここに留まってこれ以上の襲撃も困るが、夜に移動する方が危ないらしい。

魔物は、夜の方が活発になるからとのことだった。


だから、魔物に会わなかったのかと、アユカは納得した。

騎士たちは高速移動しながら時折戦っていたのかもしれないが、アユカが出会った魔物はスライムとモンペキングのみ。

魔物で困っている世界に見えなかったのだ。


明るくなったらすぐに移動することが決まり、黒装束の人たちを木に結んだ後、朝が来るまで眠ることになった。


そして起きたら、アユカはテントから出してもらえなかった。


テント越しに聞いた説明では、生かしておいたはずの黒装束の人たちが全員死んでいたそうだ。

その死体を処置するまでテントからは出せない、と言われたのだ。


失敗した時の口封じなんだろうと想像できたが、誰が何の目的で襲ってきたのかが分からない。


とりあえず、会う人全員に鑑定をかけて警戒せーなな。

恋するまで死んでなるもんか。


と、気合いを入れて、ウルティーリ国の王城に向かう最後の日を過ごしたのだった。




明日からお城です。


ブックマーク登録、いいね、ありがとうございます!

読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ