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パキラを見送った後、ドアが閉まるなり、アユカとシャンツァイは強くキツく抱きしめあった。

2人とも、愛の言葉以外、口から出てこない。

互いを求め合い、熱い吐息と体を交じらわせ、溶けるように重なり合った。


「髪の毛、切ったんだな」


本気で体当たりした遊戯が終わり、シャンツァイがくすぐるように毛先を触ってくる。


「うん、こっちの方がバレにくいと思って。長い方がよかった?」


「髪型なんて何でもいい。アユに似合わねぇ髪型なんてないからな」


ぐはっ! 久しぶりの甘すぎる言葉に、心臓止まるかと思った。


「シャンに可愛いって言ってもらえるんが、1番嬉しいわ」


「本当のことだからな、何度でも言ってやる。アユだけが可愛いよ」


少し恥ずかしくて照れたように微笑むと、シャンツァイに柔らかいキスを落とされる。

2人は寄り添いながら、会話を楽しむことにした。


「魔塔主が使った瞬間移動というのは、誰にでも使えるのか?」


「魔力が多かったら使えるって。うちは使えるって言ってもらえたよ」


「そうか。俺も使えたらいいんだがな。そうすれば、俺からも会いにいけるだろ」


「嬉しいけど、シャンが動くとなるとバレやすくなるからあかんよ。それに、この事件が解決したら、ずっと一緒におれるやん。瞬間移動なんていらんよ」


「それもそうだな」


シャンツァイになぞるように触られ、くすぐったくて笑い声が漏れてしまう。

可笑しくて笑うのはもちろんなのだが、頬を緩ませているシャンツァイにつられてというのもある。


「そうや! パキラが教えてくれてんけどな。映像付きの通信石が完成してるんやって。買えるようなら買って、シャンにプレゼントするな」


「……映像か」


「イヤ?」


「違う。声だけでも会いたくて仕方がねぇのに、触れない映像なんて、もっと会いたくなるなと思っただけだ」


あっかーん! シャンと離れている間に、うちの恋愛経験値が減ってる!

中級者にまで成れたはずやのに、初心者に戻ってしまってる。

絶対、心臓の音シャンに聞こえてるわ。

その証拠に肩揺らして笑ってるもん。恥ずかしいわー。


「うちも会いたくなると思うから、夜の瞬間移動だけで我慢するわ」


「なぁ、アユ」


「ん?」


「この事件が終わっても、国内は慌ただしいままだと思う。復興しないといけない街もあるし、外交問題も山積みだ」


「そうやね。うちもマトーネダルの救助活動に復帰したいし、まだ行けてない孤児院にも行きたいしな」


「アユはやりたいことをすればいい。でもな、何よりもまず、結婚式を挙げるぞ」


「け、っこん、しき?」


「そうだ。今更、俺と結婚したくないって言っても逃さねぇからな。覚悟しろよ」


「逃げへんよ! シャン以外に好きな人おらんもん!」


言いながら起き上がったアユカの頬を撫でながら、シャンツァイも体を起こした。


「結婚式は落ち着いてからって言ってたから、ビックリしてん」


「俺もそう思ってたけど、なんかもういつ落ち着くんだって状況だろ。過労で倒れそうな日々になるはずなんだよ。そんなもん、名実ともにアユが俺のじゃねぇとやってらんないだろ」


「そっか、うちはシャンの聖女やからね。シャンを誰よりも癒すんが生き甲斐やもんな」


「俺も、アユを笑顔にすることが生き甲斐だよ」


どちらからともなくキスをして、シャンツァイがアユカの腰に腕を回した。

アユカが、もたれるように頭をシャンツァイの肩に預ける。


「後、ペペロミアと遊ぶアユを見て、俺たちの子供がほしいなと思ったんだ。アユとの子供は可愛いだろうし、家族が増えるのは楽しいだろうからな」


「うん。シャンとならめっちゃ幸せな家族になれるって、うち確信してるねん。やから、めっちゃ嬉しいわ」


子供かぁ。

シャンがそこまで考えてくれてるなんて、うち愛されてるわー。

いや、うちの方がシャンのこと愛してるけどな。


でもでも、漠然としてた結婚がはっきりとした形になってきたから、こう、なんていうか、むず痒いというか気恥ずかしいというか。


あああ! 嬉しい! 幸せすぎて怖い!


って、ホンマは怖くないけど言ってみたかっただけ。

うちが言える日が来るなんて、シャンには感謝やわ。


まぁ、うちは「幸せは噛みしめろ」派やから、今めちゃくちゃ噛みしめてる! 幸せやわー。


結婚かぁ。

こっちの世界の結婚式って、どんな結婚式なんやろか?

ウエディングドレスなんかな? 指輪の交換あるでな?

結婚指輪は2人で決めて……


「ああああああ!」


「……どうした?」


「指輪! シャンからもらった指輪!」


「分からねぇが、泣くな。指輪がどうしたんだ?」


突然、大粒の涙を流しはじめたアユカの頬を、シャンツァイは驚いたり慌てたりせず優しく拭ってくれている。


「誘拐された時に取られてん。うちの指輪やのに。あいつら、マジでボコボコに殴っちゃんねん」


「そんなことか」


「そんなことちゃうよ。シャンからもらった指輪やのにー」


「泣くな。指輪はグレコマが持ってくれてる」


「へ? なんで?」


「誘拐犯が、アユの髪の毛と一緒に置いてったんだよ」


「そうなんや。よかったわ。あいつらは急所を蹴るだけにしとくわ」


体から力を抜くように柔らかく言うアユカに、シャンツァイは肩を揺らして笑っている。

殴るから蹴るになっただけで、何も変わっていないことが面白いのだ。


ただ、アユカがどう言おうと、シャンツァイは誰1人として許すつもりはない。

奈落の底に落とす前に、アユカが蹴れるよう取り計らうだけだ。


首を傾げるアユカを軽く抱き寄せ、触れるだけのキスをした。


「久しぶりに、ゆっくり眠れそうだ」


「おやすみ」を言い合い、速攻で眠りに落ちたアユカを抱きしめて、シャンツァイも深い眠りに誘われていった。




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